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罪の意識

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 陽子の話では、遼は薫子の元へ毎日大学が終わると通っているという。

『大学で香西くんを見かけることがたまにあるんだけど、一応明るく振舞ってはいるけど、元気がなくて。薫子のこともそうだけど、風間くんのことも心配してるみたい。

 この前、カフェテリアで会った時に香西くんに偶然会って。そこで、風間くんが事故に遭ったのは俺のせいだって話してた......
 あんな辛そうな顔する香西くん見たの初めてで。なんて声かけていいか、分からなかった』

 なぜ悠の事故を遼が自分のせいだと責めるのか、美姫には理由は分からなかった。が、薫子にしても、大和にしても、遼にしても、そして自分にしても......皆それぞれ、悠の事故を自分のせいだと責め、苦しんでいる。

 電話の向こう側の重い空気を感じたのか、陽子は美姫を労わる言葉をかけた後、電話を切った。

 通話の切れたスマホを握り締めたまま、奥底からまた深い後悔が這い上がってくる。

「ッグ...ご、め......ゆ、う......ッウゥ...ごめ...かお、るックこ......」

 膝から崩れ落ち、泣いていると、寝室の襖がスッと開いた。

「美姫......」

 秀一が美姫の元へと寄り、膝立ちになると頭から抱き締めた。美姫が秀一の背中に腕を回すと、胸元から立ち上る彼の熱と匂いに包まれる。

「ッグ...ウゥッ......」

 震えながら泣き続ける美姫に、秀一はその頭を優しく撫で続けた。

「貴女のせいではありませんよ。
 運命というのは......時に、過酷なものです」

 説明などなくとも、秀一には彼女に何があったのか悟っていた。そんな秀一の傍にいることだけが、美姫の唯一の心の拠り所だった。

「秀一、さん...... ッグ...今すぐ、ひとつになりたい......」

 答えを聞くことなく、美姫は秀一の浴衣の襟を左右に開いて肩から外した。熱く逞しい胸に顔を寄せながら、一方の手を裾へと潜り込ませて下半身の中心を握る。

「ッハァ...お、願いです......」

 秀一の膝の上に裾を割って座ると、はだけた浴衣の隙間から柔らかく白い内腿が覗く。

 早く、私の中から悪夢を追い出して。
 現実となるかもしれない、悪夢を......忘れさせて。

 美姫にも、こんな風に秀一を求める精神状態が異常であることは分かっていた。

 けれど、求めずにはいられない。求めなければ、壊れてしまう......

 美姫は、秀一との激しい交わりでしか、この恐怖と不安から逃れる術を見つけられなかった。
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