<本編完結!AS開始>【R18】愛するがゆえの罪 ー溜息が出るほど美しくて淫らな叔父と姪の禁断愛ストーリーー

奏音 美都

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拒否 ー秀一回想ー

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 美姫は帰国したらカウンセリングを受け、RTS(レイプトラウマ症候群)を克服できるように努力すると話していた。

 それを受け、ウィーン滞在中にカウンセラーに電話し、帰国してから5日後にカウンセリングを予約しておいた。時差呆けでまだ美姫の体調が万全ではない心配はあったが、一刻も早く彼女にカウンセリングを受けて立ち直って欲しかったからだ。

 帰国した翌日に櫻井薫子と会った後から、なんとなく美姫は元気がないように見えた。だが、櫻井薫子と風間悠が駆け落ちすることになったという話を聞き、そのことで気落ちしているのだろうと納得した。

 ところが、カウンセリングを予約していた当日。

『あまり体調が良くないので......』

 美姫は歯切れの悪い言い訳をし、行くことを拒んだ。

 そんな彼女を無理やり連れていくわけにもいかず、時間も差し迫っていたため、仕方なく電話でキャンセルすることにした。

 いくらコネを使っているとはいえ、日本で一番の腕利きといわれるほどのカウンセラーだ。すぐに次の予約がとれるわけがない。

「美姫......次の予約は、どうしますか?」

 そう聞いた私に、美姫は躊躇う表情を見せた。そこには、不安と恐れが見えた。

 美姫は、怖いのだ......
 まだ、あの体験を受け入れる準備など到底出来ていない。

「話をする、のは......ちょっと...無理、かもしれません......」

 美姫は後ろめたさから私を見ることなく、俯いたまま小声で白状した。

 やはり...無理でしたか。

 なんとなく予想はしていたものの、実際にそうなるとがっくりと気落ちしている自分に気づく。

 美姫が自らカウンセリングを受けようと思わなければ、意味がない......

 ですが、このままにしておくわけにもいきませんね。

 オーストリアから帰国してからというもの、美姫の睡眠時間は完全に狂ってしまった。それは、時差ぼけのせいだと単純に言えるものではなかった。

 私は美姫の躰を気遣い、家で休んでいるように伝えた。だが、美姫はひとりでいることに怯え、疲れていても仕事の現場についてきた。

 地方でのコンサートもあり、移動が多いこの仕事は、単純に付き添っているはずだけの美姫にとっても辛いものだ。稀にスケジュールの都合で昼間に仕事が入っていない時は、一緒に寝ることもできた。

 だが夜になると、一緒に寝ていても美姫は眠気を覚えることはなかった。瞼を閉じているものの、意識が覚醒していることを気配で感じる。

 美姫は、まともに睡眠時間をとれていないせいで躰はふらつき、食欲もなかった。これでは、仕事に付き添うどころか、外出さえも危なかしい。
 
 そこで、彼女に提案した。

「カウンセリングを受けることに躊躇いがあるのでしたら、心療内科へ行ってみませんか」
「心療内科...ですか?」

 カウンセリングでは、カウンセラーと1対1で向き合って話をする。

 カウンセラーは医師ではないので、病名の診断をすることはせず、薬を処方することもない。様々な心理療法を用い、カウンセラーの助けを借りながらも自分の力で心の歪みを解決していかなければならない。一度治癒すれば再発の恐れがとても低く、薬の副作用などの危険がないのが、カウンセリングの特徴だ。
 
 一方、心療内科は、身体症状に合わせて薬を処方するのが一般的だ。秀一が隣に座って、美姫の代わりに症状を説明することも出来る。美姫の心理的な負担は軽くはなるだろう。
 
 自己努力は必要ないが、治癒率が低く、再発率が高いというのが、心療内科について調べた秀一の見解だった。

 秀一としては、美姫にはカウンセリングを受けてもらいたいと思っていた。だが、こうなったら背に腹はかえられない。

「......わかり、ました」

 美姫が、こわごわながら答えた。

 おそらく、最初から心療内科に行こうと誘ったら断っていただろう。あれほど無理をして予約を入れていたカウンセリングを断った上、心療内科まで断るのは後ろめたいという気持ちが美姫にはあったのだろう。

 自分の心の症状について話す必要がないと知り、美姫は不安な表情を見せながらも、心療内科へ行く決心をしてくれた。
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