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それぞれの懺悔
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突然白い扉が開き、看護師がストレッチャーと共に出てきた。その上には、様々な管に繋がれた悠が全身を包帯に巻かれた状態で横たわっている。
美姫と大和は思わず立ち上がったものの、あまりにも悲惨な悠の姿を見て息を呑み、立ち尽くした。
一方静音は、悠人の制止を振り切ってストレッチャーに縋り付く。
「悠!悠ちゃ!ママよ!目を開けて!!!お願いっっ!!!
ゆーーーーーーーーーーーーーーうっっ!!!!!」
悠人と看護師数人で、追い縋る静音を引き剥がす。
「お母様......
息子さんをこれからICU(集中治療室)へと移動させますから、ここを通してください」
非情とも思える看護師の言葉に静音は短い呻き声をあげ、膝から崩れ落ちた。
その奥から手術を担当したと思われる中年の医師が、ゆっくりとした歩幅で現れる。マスクを口から外し、落ち着いた様子で悠人と静音を見る素振りは穏やかでありながらも、こんな時だからこそ、先程の看護師よりも非情な気がした。
「ご家族の方ですね? 息子さんの容体と手術について詳しくお話ししたいのですが......」
悠人は医師に頷くと、美姫と大和を横目で見た。
すると、医師は悠人の意思を読み取り、首を振った。
「申し訳ないのですが......友人の方は、ご遠慮ください」
「ここにいても、君たちには何もすることが出来ない。二人は家に帰りなさい。後で、悠のことについて連絡するから......」
悠人は美姫と大和に向かってそう言うと、静音を支えながら医師について行った。
残されたふたりは、力が抜けたようにへなへなとベンチに凭れ掛かった。美姫の躰がまた小刻みに震えだす。
悠......全身が包帯に巻かれていて、表情さえも見えなかった。
それに......ICUって......それほど、危険な状態...ってこと、なの!?
目の前が、真っ暗になった。
目の当たりにした現実に打ち付けられ、今まで感じたことのなかった『死』という存在がひたひたと近づき、だんだんと大きく、濃くなり......美姫の目の前に、覆い被さるようにはっきりと立ちはだかる。
怖い...怖い......
今まで普通に会えていた友達が...死んでしまう、なんて......考えも、しなかった。
人は、いつか死ぬということは分かっていたつもりだったけれど.....それは、ドラマの中だったり、誰か自分とは関わりのない人の死を聞くだけで、私には関係のない世界だと勝手に思っていた。
こうして、いざ直面した時......私は、本当に死というものがどんなものなのか、全く分かっていなかったことを、強く思い知らされた。
「ウッ...ッグ...ウウッ......」
お願い、です......どうか、どうか... 悠を死なせないで下さい。
純粋に薫子を愛し、これから新しい人生を歩もうとしていたふたりを引き裂くようなことは、どうか......しないで......
「ヴッ...ヒグッ...ッッ」
ただただ終わることのない後悔が、大波となって次々に美姫の胸に押し寄せる。
なぜ、私は...どうして、 私は......!!!
私の、せいだ。私の、せい......
悠がこんなことになったのは、私の......
肩を大きく震わせ、腰を折り曲げて泣いた。
「美、姫......」
大和が美姫の肩を抱き寄せようと、腕を伸ばす。
その時、遠くから微かに声が響いてきた。
「美姫!!!」
美姫と大和は思わず立ち上がったものの、あまりにも悲惨な悠の姿を見て息を呑み、立ち尽くした。
一方静音は、悠人の制止を振り切ってストレッチャーに縋り付く。
「悠!悠ちゃ!ママよ!目を開けて!!!お願いっっ!!!
ゆーーーーーーーーーーーーーーうっっ!!!!!」
悠人と看護師数人で、追い縋る静音を引き剥がす。
「お母様......
息子さんをこれからICU(集中治療室)へと移動させますから、ここを通してください」
非情とも思える看護師の言葉に静音は短い呻き声をあげ、膝から崩れ落ちた。
その奥から手術を担当したと思われる中年の医師が、ゆっくりとした歩幅で現れる。マスクを口から外し、落ち着いた様子で悠人と静音を見る素振りは穏やかでありながらも、こんな時だからこそ、先程の看護師よりも非情な気がした。
「ご家族の方ですね? 息子さんの容体と手術について詳しくお話ししたいのですが......」
悠人は医師に頷くと、美姫と大和を横目で見た。
すると、医師は悠人の意思を読み取り、首を振った。
「申し訳ないのですが......友人の方は、ご遠慮ください」
「ここにいても、君たちには何もすることが出来ない。二人は家に帰りなさい。後で、悠のことについて連絡するから......」
悠人は美姫と大和に向かってそう言うと、静音を支えながら医師について行った。
残されたふたりは、力が抜けたようにへなへなとベンチに凭れ掛かった。美姫の躰がまた小刻みに震えだす。
悠......全身が包帯に巻かれていて、表情さえも見えなかった。
それに......ICUって......それほど、危険な状態...ってこと、なの!?
目の前が、真っ暗になった。
目の当たりにした現実に打ち付けられ、今まで感じたことのなかった『死』という存在がひたひたと近づき、だんだんと大きく、濃くなり......美姫の目の前に、覆い被さるようにはっきりと立ちはだかる。
怖い...怖い......
今まで普通に会えていた友達が...死んでしまう、なんて......考えも、しなかった。
人は、いつか死ぬということは分かっていたつもりだったけれど.....それは、ドラマの中だったり、誰か自分とは関わりのない人の死を聞くだけで、私には関係のない世界だと勝手に思っていた。
こうして、いざ直面した時......私は、本当に死というものがどんなものなのか、全く分かっていなかったことを、強く思い知らされた。
「ウッ...ッグ...ウウッ......」
お願い、です......どうか、どうか... 悠を死なせないで下さい。
純粋に薫子を愛し、これから新しい人生を歩もうとしていたふたりを引き裂くようなことは、どうか......しないで......
「ヴッ...ヒグッ...ッッ」
ただただ終わることのない後悔が、大波となって次々に美姫の胸に押し寄せる。
なぜ、私は...どうして、 私は......!!!
私の、せいだ。私の、せい......
悠がこんなことになったのは、私の......
肩を大きく震わせ、腰を折り曲げて泣いた。
「美、姫......」
大和が美姫の肩を抱き寄せようと、腕を伸ばす。
その時、遠くから微かに声が響いてきた。
「美姫!!!」
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