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それぞれの懺悔

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 陽子は、「そっか...」と小さく呟いた。美姫は、手術室の白い扉を祈るように見つめた。

 大和が両手を膝の上で組み、再び頭を項垂れる。

「さっき...事情聴取、受けて......警察の話では......対向車線、走ってたダンプカーが......雪で横滑りして......中央線、超えて......悠の車に、突っ込んだ...らしい......
 救、急車......来た...時、点で......既、に......外、傷性ショック......起こしてて......意識......失っ、てた...って......」
 
 弱々しい大和の声がポツリ、ポツリと落とされた後、長い沈黙が続いた。彼の肩が震えている。

「...ッグ......ッウ......ッック」

 悲痛な嗚咽を漏らし、大和が呻いた。額を拳につけ、肩がさらに激しく震え出す。

「やま、と......」

 そんな大和を見ていたら、美姫の手は自然と大和へと伸びいていた。

  すると、大和の手が伸び、美姫の手を掴んで強く引き寄せた。バランスを崩して膝立ちになった美姫を、大和が強く抱き締めた。

「や、大和!?」
「ッグ...俺、の...俺の......せい、なんだ...ウゥッ......お、れが...あい、つに...ック...車、貸した...から......
 俺のせいで、あいつはっ!!!」

 怯えているかのようにビクビクと震え、縋り付いてくる大和。こんなに消えてしまいそうで頼りない大和を感じたのは、初めてだった。

 美姫は、そんな彼の背中にそっと腕を回した。自分でもどうしてなのか分からないが、大和を慰めたい、少しでも安心させたいという無意識の思いが美姫をそんな行動に駆り立てた。

 罪の意識に苛まれ、震えている大和を抱き締めながら、美姫もまた嗚咽を漏らした。

「...ッグ......や、ま......ウゥッ...ヒッ......ウグッ」

 違う、違うの......大和の、せいじゃない......
 悠が事故に遭ったのは、私の、せいだ。

 私が、あんなこと薫子に言ったから。

 なんてことを。なんてことを、してしまったの......
 取り返しのつかない過ちを、どうやって償えばいいの......

 陽子はそんな二人の側に立ち、両手で口を覆った。

 今朝、成人式で堂々と挨拶する風間くんを見たばっかりなのに......こんな事故に遭うなんて、信じられない。
 しかも、薫子との駆け落ちの途中で、だなんて......

 風間くんとは、まだ知り合ったばかりだけど、あのクリスマスパーティーの日に、無口なだけじゃない一面も知った。薫子のことをすごく大事にしてることが、嫌っていうほど伝わってきた。

 彼のことが、心配でたまらない。

 ずっと仲の良かった羽鳥くんと美姫さんは、どれだけ辛いだろう......
 風間くんのことを好きな薫子の痛みは、どれだけだろう......

 陽子はこの場にいることに、いたたまれなくなった。躊躇いつつも、そっと二人に声をかける。

「私...薫子のところに......戻るね。
 もし意識が戻ってたら、風間くんのこと...心配、してると思うし」

 小さく頷いた美姫を確認すると、陽子は踵を返して出口へと向かった。
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