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羞恥という名の快楽

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 ホテルの部屋の扉を開け、電気のスイッチを入れようとした美姫の手を上から包み込むようにして秀一が遮った。

「今夜は、このままで......十分に明るいですので」

 テラスへと続く窓からはあちこちから打ち上げられる花火が未だに上がっており、今夜は星空の代わりに煌めいていた。ガラス窓を通して爆竹や車のクラクションの音がくぐもって聞こえてくる。

「はい......」

 素直に頷いた美姫の足元に、秀一が片膝立ちで跪ひざまずく。それは、昼間に見せた誓いの場面を彷彿させ、美姫の胸のときめきが再び蘇る。

「ずっと踊っていて、足が疲れたでしょう」

 美姫の足からダンスシューズをそっと脱がせる。秀一の指先が踵に入り込み、そこから爪先へと滑らせる動きにゾクゾクと粟立ちが起こる。

「ッハァ...」

 漏れた声にカーッと顔が熱くなり、美姫は唇を噛み締めた。

 足の甲を優しく撫でられると、猫のように悩ましげに背中が撓る。胸が震えて下半身が熱くなる。

 期待が、高まっていく......

 秀一はもう一方のダンスシューズを脱がせると、同じように足の甲を撫でた。美姫の足が僅かに震えている。

 秀一が見上げると、そこには顔を真っ赤にし、手で口を覆う美姫の扇情的な表情があった。

 貴女という人は......

 両手で美姫の足を持ち上げ、そこに口づけを落とした。

「っ......!!!」

 花火の閃光が秀一の俯く美麗な顔にチカチカと陰影を作り、その美しさと妖しさに美姫の躰の奥底から欲情の蜜が溢れ出してくる。

「プリンセス、お手を......」

 今すぐにでも押し倒して蹂躙したい気持ちを抑え込み、秀一はあくまでも優雅に手を差し伸べた。

 美姫が軽く手を添えると秀一は優美な所作で立ち上がり、テラスへと案内する。

 今夜は貴女と、特別な一夜を過ごしたい......

 磨き上げられたガラス窓からは、先程よりも更に鮮やかに花火が映し出されていた。
 
「ハァ......素敵」

 溜息と共に、吸い込まれるようにうっとりと新年の喜びに沸き返るライトアップされた街並みや花火を眺める美姫。少女のようでいて、色香漂う成熟した女性のような、危うさを感じさせるその表情が、秀一の欲情を焚きつける。

 秀一はずっと、胸の昂りを美姫に感じていた。


ーー美姫が、純白のドレスを身に纏っているのを見た瞬間から。

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