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足枷
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「美姫......」
迎えに来た秀一は美姫の顔を見た途端、何かあったのだとすぐに悟った。
顔も洗って、目の腫れも治ったはずなのに......やっぱり秀一さんには隠し事は出来ない。
何も言わない加代子の様子から察して、これは自分と美姫との問題なのかもしれないと思った秀一は、早々に美姫を連れて帰ることにした。
「美姫さん、来栖さん。明日、舞踏会で会いましょうね」
加代子は穏やかに微笑みかけ、美姫は感謝の気持ちを伝えるように丁寧にお辞儀をした。
タクシーに乗り込んでからも何も言わない秀一と美姫の間にはなんとも言えない緊張感が漂っていた。
すぐに問いただされるものだと思っていた美姫はそれを居心地悪く感じていたが、かと言って自分から話を切り出す勇気もなかった。
ホテルの部屋へと戻り、カウチに腰掛けるとようやく秀一が口を開いた。
「美姫...今日、何かあったのですか?」
心の準備をしていたつもりだったのに、いざその言葉を聞くと、先ほどまで言おうと思っていた言葉がガラガラと目の前で崩れていく。
「美姫?」
二度目の秀一の呼びかけにより、美姫はようやく重い口を開いた。
「......今日、モルテッソーニが加代子さんのスタジオに訪ねてきました」
それは、秀一にとっても予想外だったようだ。
「モルテッソーニが、ですか?」
「モルテッソーニは......」
"秀一さんに、ウィーンに戻ってきて欲しいみたいです。"
そう、言おうとした言葉が出てこない。
それを言って、もし本当に秀一さんがウィーンに戻ることになったら......
そう思うと、美姫は怖くて口に出すことができなかった。
迎えに来た秀一は美姫の顔を見た途端、何かあったのだとすぐに悟った。
顔も洗って、目の腫れも治ったはずなのに......やっぱり秀一さんには隠し事は出来ない。
何も言わない加代子の様子から察して、これは自分と美姫との問題なのかもしれないと思った秀一は、早々に美姫を連れて帰ることにした。
「美姫さん、来栖さん。明日、舞踏会で会いましょうね」
加代子は穏やかに微笑みかけ、美姫は感謝の気持ちを伝えるように丁寧にお辞儀をした。
タクシーに乗り込んでからも何も言わない秀一と美姫の間にはなんとも言えない緊張感が漂っていた。
すぐに問いただされるものだと思っていた美姫はそれを居心地悪く感じていたが、かと言って自分から話を切り出す勇気もなかった。
ホテルの部屋へと戻り、カウチに腰掛けるとようやく秀一が口を開いた。
「美姫...今日、何かあったのですか?」
心の準備をしていたつもりだったのに、いざその言葉を聞くと、先ほどまで言おうと思っていた言葉がガラガラと目の前で崩れていく。
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二度目の秀一の呼びかけにより、美姫はようやく重い口を開いた。
「......今日、モルテッソーニが加代子さんのスタジオに訪ねてきました」
それは、秀一にとっても予想外だったようだ。
「モルテッソーニが、ですか?」
「モルテッソーニは......」
"秀一さんに、ウィーンに戻ってきて欲しいみたいです。"
そう、言おうとした言葉が出てこない。
それを言って、もし本当に秀一さんがウィーンに戻ることになったら......
そう思うと、美姫は怖くて口に出すことができなかった。
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