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足枷
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モルテッソーニが秀一さんのお母様と知り合いだったことも。
秀一さんが高校生の時にモルテッソーニと出会っていたことも。
彼からの留学の誘いを断っていたことも。
ーーそして、その理由が私の為だったということも......
モルテッソーニの言葉が脳髄に鳴り響く。
『シューイチほどのピアニストが、なぜ世界へと羽ばたくことなく、日本に留まっているのか...それは、ミキ。君が原因なんだ。君はもう成人を迎え、シューイチの庇護を必要としない。そろそろ彼を...彼の足枷を外してやってくれないか』
私はいつも、秀一さんに足枷をつけられていると感じていた。どこにいても、何をしていても、秀一さんという足枷から逃れることは出来ない、と思っていた。
けれど......実際に足枷を嵌めていたのは秀一さんの方だったなんて。
秀一さんはウィーンに留学してモルテッソーニに師事するという、ピアニストなら誰もが飛びつくようなチャンスを、両親が不在がちで幼かった私を見守る為に諦めたんだ......
私は、彼の飛躍する機会を奪ってしまっていた。
何年も何年も...知らないうちに、私は秀一さんを重い足枷で縛り付けていたんだ。
モルテッソーニに憧れてわざわざウィーンにまで追いかけて公演を聴きに行っていると私が思っていたのは、彼から師事するためだった。
全ては、私のために......犠牲を払っていたんだ。
もし、モルテッソーニの申し出をすぐに受け入れていたなら、秀一さんのピアニストとしての人生は大きく変わっていたのだろうか。
私はそれを知らずに......奪ってしまったのだろうか。
「ぅ...ぅぐっ...ッヒクッ...ッグ...」
考えているうちに、堰を切ったように涙が溢れてきた。
「ちょ、ちょっと...美姫さん、大丈夫!?」
加代子の焦った声が頭の上で響くが、美姫の涙は止まることはなかった.......
秀一さんは私の恋人になる前から、私のことを一番に考えてくれていたんだ。自分のことは何も言わず、いつも私が傍にいて欲しいときにいてくれた。
私は、馬鹿だ。なんにも知らず、そんな秀一さんの愛情を当然のように受け取っていた。
そこに、どんな代償があるのか知ることもなく......
美姫は加代子に付き添われ、タクシーで彼女の家まで連れて行ってもらった。
秀一さんが高校生の時にモルテッソーニと出会っていたことも。
彼からの留学の誘いを断っていたことも。
ーーそして、その理由が私の為だったということも......
モルテッソーニの言葉が脳髄に鳴り響く。
『シューイチほどのピアニストが、なぜ世界へと羽ばたくことなく、日本に留まっているのか...それは、ミキ。君が原因なんだ。君はもう成人を迎え、シューイチの庇護を必要としない。そろそろ彼を...彼の足枷を外してやってくれないか』
私はいつも、秀一さんに足枷をつけられていると感じていた。どこにいても、何をしていても、秀一さんという足枷から逃れることは出来ない、と思っていた。
けれど......実際に足枷を嵌めていたのは秀一さんの方だったなんて。
秀一さんはウィーンに留学してモルテッソーニに師事するという、ピアニストなら誰もが飛びつくようなチャンスを、両親が不在がちで幼かった私を見守る為に諦めたんだ......
私は、彼の飛躍する機会を奪ってしまっていた。
何年も何年も...知らないうちに、私は秀一さんを重い足枷で縛り付けていたんだ。
モルテッソーニに憧れてわざわざウィーンにまで追いかけて公演を聴きに行っていると私が思っていたのは、彼から師事するためだった。
全ては、私のために......犠牲を払っていたんだ。
もし、モルテッソーニの申し出をすぐに受け入れていたなら、秀一さんのピアニストとしての人生は大きく変わっていたのだろうか。
私はそれを知らずに......奪ってしまったのだろうか。
「ぅ...ぅぐっ...ッヒクッ...ッグ...」
考えているうちに、堰を切ったように涙が溢れてきた。
「ちょ、ちょっと...美姫さん、大丈夫!?」
加代子の焦った声が頭の上で響くが、美姫の涙は止まることはなかった.......
秀一さんは私の恋人になる前から、私のことを一番に考えてくれていたんだ。自分のことは何も言わず、いつも私が傍にいて欲しいときにいてくれた。
私は、馬鹿だ。なんにも知らず、そんな秀一さんの愛情を当然のように受け取っていた。
そこに、どんな代償があるのか知ることもなく......
美姫は加代子に付き添われ、タクシーで彼女の家まで連れて行ってもらった。
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