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聖夜のプレゼント
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美姫は秀一のエスコートでカウチに座った。
秀一はテーブルのすぐ傍に立ち、ワインクーラーからシャンパンボトルを抜き取り、白いタオルで濡れたボトルの部分を拭き取った。
シャンパンのキャップシールを切り取り、ボトルを少し斜めに傾け、コルクの上部を親指で抑えながらワイヤーを外す。コルクをしっかりと固定したまま慎重にボトルを回していき、手応えを感じた瞬間コルクとの隙間からガスが抜ける静かな音が聞こえた。
慣れた様子で片手でシャンパンボトルを手にし、斜めに傾けてシャンパングラスにゆっくりと注いでいく。完璧な位置で止めると、もうひとつのグラスにも注ぐ。
まるで一流のサーバーのような流麗な一連の所作に、美姫の唇からは溜め息しか出ない。
先程までは大観衆の前に立ち、皆にパフォーマンスを見せていた秀一を、自分が今独占しているのだと思うと、美姫はゾクゾクした戦慄に似た興奮を感じていた。
シャンパンボトルにコルクで蓋を閉め、ワインクーラーへと入れると、秀一は美姫の隣に座った。
シャンパングラスを手にして美姫へ渡すと、自らももうひとつのグラスを指に絡ませた。再び
「メリークリスマス...」
と見つめ合いながら、お互いのシャンパングラスを重ねた。
シャンパングラスを傾け、琥珀色の液体を口に含むと泡が弾けて鼻腔にまで芳ばしい匂いと味が広がっていく。
秀一はカウチの縁に躰を預けるとシャパングラスを硝子テーブルの上に置き、引き締まった腕で美姫の肩を優しく抱き寄せた。
昨夜バスタブでしたように背中から抱き締められ、美姫の心臓はもう壊れそうなくらいに脈動を打ち、息苦しさまで覚えた。
秀一は長い脚を伸ばし、その間に華奢な美姫の躰を挟んだ。そっと美姫が秀一を見上げると、フレーム越しのライトグレーの瞳が細められ、美姫を愛おしく見つめ返した。
そんなひとつひとつの仕草に、美姫は胸がキュンと絞られるような甘い痛みを覚える。
喉の渇きを覚えて、美姫はシャンパングラスを傾けた。
「今日のクリスマスイブのコンサート、本当に素敵でした......
皆さんそれぞれ個性に合った選曲をされていて、どの演奏も魅力的で聴き入ってしまいました」
話しながら今日のコンサートの様子を思い出しいていた。
個性の違うそれぞれの演奏も素晴らしかったし、アンコールで見せた全員での楽しそうな演奏も目に焼き付いている。
本当に、ここに来られて皆の演奏を聴くことが出来てよかった......
「モルテッソーニが、チャリティーコンサートなので気取った感じではなく、皆の好きなクリスマスに沿った曲選びをしようということになったのですよ」
「秀一さんがクラシック以外の曲をコンサートで演奏するのを初めて聴きました」
「えぇ、初めてですね......貴女と過ごすクリスマスを考えていたら、あの曲が思い浮かんだのですよ」
秀一の指先が美姫の髪を絡め取り、口づけを落とした。
自分のことを想い、あの曲を選曲し、そして聴衆の前で演奏した後......それを美姫の為だけに弾いてくれた。
それを思うと美姫の胸は一層高鳴り、あの時に感じていた独占欲や嫉妬心は泡のように消えていた。
秀一はテーブルのすぐ傍に立ち、ワインクーラーからシャンパンボトルを抜き取り、白いタオルで濡れたボトルの部分を拭き取った。
シャンパンのキャップシールを切り取り、ボトルを少し斜めに傾け、コルクの上部を親指で抑えながらワイヤーを外す。コルクをしっかりと固定したまま慎重にボトルを回していき、手応えを感じた瞬間コルクとの隙間からガスが抜ける静かな音が聞こえた。
慣れた様子で片手でシャンパンボトルを手にし、斜めに傾けてシャンパングラスにゆっくりと注いでいく。完璧な位置で止めると、もうひとつのグラスにも注ぐ。
まるで一流のサーバーのような流麗な一連の所作に、美姫の唇からは溜め息しか出ない。
先程までは大観衆の前に立ち、皆にパフォーマンスを見せていた秀一を、自分が今独占しているのだと思うと、美姫はゾクゾクした戦慄に似た興奮を感じていた。
シャンパンボトルにコルクで蓋を閉め、ワインクーラーへと入れると、秀一は美姫の隣に座った。
シャンパングラスを手にして美姫へ渡すと、自らももうひとつのグラスを指に絡ませた。再び
「メリークリスマス...」
と見つめ合いながら、お互いのシャンパングラスを重ねた。
シャンパングラスを傾け、琥珀色の液体を口に含むと泡が弾けて鼻腔にまで芳ばしい匂いと味が広がっていく。
秀一はカウチの縁に躰を預けるとシャパングラスを硝子テーブルの上に置き、引き締まった腕で美姫の肩を優しく抱き寄せた。
昨夜バスタブでしたように背中から抱き締められ、美姫の心臓はもう壊れそうなくらいに脈動を打ち、息苦しさまで覚えた。
秀一は長い脚を伸ばし、その間に華奢な美姫の躰を挟んだ。そっと美姫が秀一を見上げると、フレーム越しのライトグレーの瞳が細められ、美姫を愛おしく見つめ返した。
そんなひとつひとつの仕草に、美姫は胸がキュンと絞られるような甘い痛みを覚える。
喉の渇きを覚えて、美姫はシャンパングラスを傾けた。
「今日のクリスマスイブのコンサート、本当に素敵でした......
皆さんそれぞれ個性に合った選曲をされていて、どの演奏も魅力的で聴き入ってしまいました」
話しながら今日のコンサートの様子を思い出しいていた。
個性の違うそれぞれの演奏も素晴らしかったし、アンコールで見せた全員での楽しそうな演奏も目に焼き付いている。
本当に、ここに来られて皆の演奏を聴くことが出来てよかった......
「モルテッソーニが、チャリティーコンサートなので気取った感じではなく、皆の好きなクリスマスに沿った曲選びをしようということになったのですよ」
「秀一さんがクラシック以外の曲をコンサートで演奏するのを初めて聴きました」
「えぇ、初めてですね......貴女と過ごすクリスマスを考えていたら、あの曲が思い浮かんだのですよ」
秀一の指先が美姫の髪を絡め取り、口づけを落とした。
自分のことを想い、あの曲を選曲し、そして聴衆の前で演奏した後......それを美姫の為だけに弾いてくれた。
それを思うと美姫の胸は一層高鳴り、あの時に感じていた独占欲や嫉妬心は泡のように消えていた。
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