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深まる愛情
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この世に大きな力が存在するのなら、どうか……私に力を与えて下さい。
愛おしいこの人を癒すことの出来る力を。
弱い私に、いつも甘えてばかりの私に、頼ることしか出来なかった私に...
お願いします。
彼の心を癒し、支えさせて下さい……
美姫は秀一の背中に手を回した。
この温もりが、秀一さんの心の内面深くの氷の塊を少しでも溶かしてくれますように……
「落胆、なんてするはずないです。どんなことがあろうと、どんな秀一さんを見せられようと、秀一さんを愛する気持ちに変わりはありません。
……いえ、変わりました。
秀一さんを愛する気持ちがもっともっと深まりました。
お願い、です……私に本当の秀一さん、秀一さんの全てを見せて下さい。
頼りないかもしれないけど、何も出来ないかもしれないけど、少しでも……ほんの僅かでも……秀一さんの心を癒せる存在になりたいんです」
驚きで丸くなっていた秀一の瞳が柔かく細められ、愛情の滲み出るような目線で美姫を包みこむ。
「美姫……私は今日ほど貴女の強さと逞しさ、そして深い愛情に救われたことはありません。
あれ程貴女に触れることを怯え、拒否していた躰が貴女の想いに触れ、私の弱さを晒すことによって穏やかで幸せに満たされている。再び貴女に触れ、感じ、繋がりたいと心から願っている。頼りないなど……美姫、貴女だけなのです、私を癒せるのは。
貴女は、私の女神です……」
「秀一さん……」
美姫の回していた手に力が籠もると同時に秀一の端正な顔が近づき、唇が重なった。
優しくて柔らかい重なり。けれど、もうその唇は震えていなかった。
ただただ愛おしくて仕方ない……
大切な宝物に触れるようなそんな口づけ。
秀一にとって美姫がそういう存在であること。愛する人が自分を愛してくれているという奇跡に、美姫の心が震える。
両手を秀一の頭に伸ばし、その艶やかな黒髪を優しく撫でた。
「萎えて…しまいましたね」
美姫の中で熱く滾っていた雄杭はその猛々しさを失い、かろうじてその中に留まっているのみとなっていた。
秀一の躰が美姫から離れるような気配を感じ、美姫は慌てて縋り付くようにしがみついた。
「お願い!!離れないで……!!!繋がったままで、いて下さい……このまま……」
肉欲を求めて繋がるのではなく、ひとつになれた心と心を結ぶように繋がった躰を離したくなくて……美姫はしがみついた腕を最大限に伸ばし、自分の方へと必死に引き寄せた。
「貴女という人は……」
呆れられちゃった……
美姫がそう思っていると、「きゃんっ!!」背中に手を回され、しっかりと抱き留められたかと思うと躰が反転する。
美姫は、秀一を見下ろす形になっていた。
「私が貴女を離すはずなどないでしょう? その早とちりの癖は直さなければなりませんね」
上目遣いで諭す秀一に「すみません……」言いながらも、美姫は頬が緩んでしまう。
よかった……いつもの秀一さんに戻ってる。
秀一の胸に顔を寄せる。鼓動が美姫の耳に響く。
それは私を落ち着かせる音。安らぎの音。癒しの音……
ふと顔を上げると...グランドピアノにはもう、月光は射し込んでいなかった。
月の光のない闇夜でも、秀一さんがいれば大丈夫……
そんな思いを胸に抱いて、美姫は秀一の首に縋り付いた。
愛おしいこの人を癒すことの出来る力を。
弱い私に、いつも甘えてばかりの私に、頼ることしか出来なかった私に...
お願いします。
彼の心を癒し、支えさせて下さい……
美姫は秀一の背中に手を回した。
この温もりが、秀一さんの心の内面深くの氷の塊を少しでも溶かしてくれますように……
「落胆、なんてするはずないです。どんなことがあろうと、どんな秀一さんを見せられようと、秀一さんを愛する気持ちに変わりはありません。
……いえ、変わりました。
秀一さんを愛する気持ちがもっともっと深まりました。
お願い、です……私に本当の秀一さん、秀一さんの全てを見せて下さい。
頼りないかもしれないけど、何も出来ないかもしれないけど、少しでも……ほんの僅かでも……秀一さんの心を癒せる存在になりたいんです」
驚きで丸くなっていた秀一の瞳が柔かく細められ、愛情の滲み出るような目線で美姫を包みこむ。
「美姫……私は今日ほど貴女の強さと逞しさ、そして深い愛情に救われたことはありません。
あれ程貴女に触れることを怯え、拒否していた躰が貴女の想いに触れ、私の弱さを晒すことによって穏やかで幸せに満たされている。再び貴女に触れ、感じ、繋がりたいと心から願っている。頼りないなど……美姫、貴女だけなのです、私を癒せるのは。
貴女は、私の女神です……」
「秀一さん……」
美姫の回していた手に力が籠もると同時に秀一の端正な顔が近づき、唇が重なった。
優しくて柔らかい重なり。けれど、もうその唇は震えていなかった。
ただただ愛おしくて仕方ない……
大切な宝物に触れるようなそんな口づけ。
秀一にとって美姫がそういう存在であること。愛する人が自分を愛してくれているという奇跡に、美姫の心が震える。
両手を秀一の頭に伸ばし、その艶やかな黒髪を優しく撫でた。
「萎えて…しまいましたね」
美姫の中で熱く滾っていた雄杭はその猛々しさを失い、かろうじてその中に留まっているのみとなっていた。
秀一の躰が美姫から離れるような気配を感じ、美姫は慌てて縋り付くようにしがみついた。
「お願い!!離れないで……!!!繋がったままで、いて下さい……このまま……」
肉欲を求めて繋がるのではなく、ひとつになれた心と心を結ぶように繋がった躰を離したくなくて……美姫はしがみついた腕を最大限に伸ばし、自分の方へと必死に引き寄せた。
「貴女という人は……」
呆れられちゃった……
美姫がそう思っていると、「きゃんっ!!」背中に手を回され、しっかりと抱き留められたかと思うと躰が反転する。
美姫は、秀一を見下ろす形になっていた。
「私が貴女を離すはずなどないでしょう? その早とちりの癖は直さなければなりませんね」
上目遣いで諭す秀一に「すみません……」言いながらも、美姫は頬が緩んでしまう。
よかった……いつもの秀一さんに戻ってる。
秀一の胸に顔を寄せる。鼓動が美姫の耳に響く。
それは私を落ち着かせる音。安らぎの音。癒しの音……
ふと顔を上げると...グランドピアノにはもう、月光は射し込んでいなかった。
月の光のない闇夜でも、秀一さんがいれば大丈夫……
そんな思いを胸に抱いて、美姫は秀一の首に縋り付いた。
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