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決意
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美姫は、今までずっと心の奥に閉じ込めていた、叔父と姪という禁忌の恋愛についての苦悩を秀一の前で吐露した。
心の澱を話し始めたらもう、止められなくて……
こんな事…分かって、たのに……秀一さんから告白された時点で、覚悟していたはずなのに……
でも何度も…何度も……繰り返し、考えてしまう。
終わりのない螺旋階段を歩き続けているような気持ちに陥る。
今まで……言えなかった。言っては…いけないと思っていた。
だって、あの時……秀一さんと恋人になるって決めたのは私、だったから……
秀一さんは私の恋心に気付きながらも、私が成人になるのを待って、私に選ばせたのだ。このまま叔父と姪の関係を続けるのか。それとも、その関係を忘れて禁忌の恋愛に足を踏み入れるのか……
私には……迷いなんてなかった。秀一さんが好きだったから。ずっと、秀一さんのことが好きで……諦めることなど出来なかったから。秀一さんだけいてくれればそれでいい、と本気で思っていた。
今でも、その気持ちに変わりはない。
けれど……世界は秀一さんと私だけで動いてはくれない。
世間という壁に突き当たり、友達の気遣いと心配と…怒りに触れ、そして……私の家族であり、秀一さんの家族でもあるお父様とお母様の愛情と信頼を知ってしまった……
今になって私は…叔父と姪という禁断の恋愛関係が世間にとって、友達にとって、家族にとって何なのか……ようやく、実感したのだった。
秀一さんの気持ちは分かっているつもりだけど……はっきり、言葉で聞かせて欲しい……
私に、迷いなど感じさせないぐらい、確かな愛情を感じた上でなら……触れてもらえない理由を聞く勇気が起きるかも、しれないから。
色々な感情が一遍に溢れ出した途端、美姫の目の端に涙が溜まっていく。それが溢れないように美姫は瞳を大きく見開き、天井を見つめた。
「っ!!!」
涙の膜で揺れる美姫の瞳に眉を寄せ、睫毛を揺らし、唇を引き結ぶ秀一の顔が近付く。指先が伸ばされ、涙の溜まった目尻に触れようとするのに……それは美姫の涙を拭うことなく、宙を虚しく舞っただけだった。
やっぱり、触れて…くれなかった……
ツツーッと涙が美姫の頬を伝って流れ落ちた。秀一の硬く重い声が落とされる。
「美姫…...私はもう、どんなことがあろうと貴女を離しませんよ。たとえ兄様たちに私達の関係を知られようと、私の気持ちは決して変わりません。荊の道になろうとも、私が生涯愛することのできるのは美姫、貴女だけなのです……
もちろん、私だって兄様たちや世間に知られたいとは思っていません。貴女との関係を守る為なら、どんな事だってしてみせる。
私は…どんな嘘をつくことも、罪を犯すことさえも厭いません」
「秀一さん……」
秀一の揺るぎない想いに比べて、美姫はまだ自分の覚悟が甘いことを強く感じさせられる。秀一の瞳には濁りがなく美姫への深い愛情が籠っており、嘘をついているとはどうしても思えなかった。
それ、なのに......
それなのに、なぜ……どうしてそこまで思っていてくれるのに、私に触れるのを避けるんですか?
喉まで出かかる言葉がどうしても言えず、美姫はカクテルグラスを再び手に取り、煽るように涙と共に飲み干した。
心の澱を話し始めたらもう、止められなくて……
こんな事…分かって、たのに……秀一さんから告白された時点で、覚悟していたはずなのに……
でも何度も…何度も……繰り返し、考えてしまう。
終わりのない螺旋階段を歩き続けているような気持ちに陥る。
今まで……言えなかった。言っては…いけないと思っていた。
だって、あの時……秀一さんと恋人になるって決めたのは私、だったから……
秀一さんは私の恋心に気付きながらも、私が成人になるのを待って、私に選ばせたのだ。このまま叔父と姪の関係を続けるのか。それとも、その関係を忘れて禁忌の恋愛に足を踏み入れるのか……
私には……迷いなんてなかった。秀一さんが好きだったから。ずっと、秀一さんのことが好きで……諦めることなど出来なかったから。秀一さんだけいてくれればそれでいい、と本気で思っていた。
今でも、その気持ちに変わりはない。
けれど……世界は秀一さんと私だけで動いてはくれない。
世間という壁に突き当たり、友達の気遣いと心配と…怒りに触れ、そして……私の家族であり、秀一さんの家族でもあるお父様とお母様の愛情と信頼を知ってしまった……
今になって私は…叔父と姪という禁断の恋愛関係が世間にとって、友達にとって、家族にとって何なのか……ようやく、実感したのだった。
秀一さんの気持ちは分かっているつもりだけど……はっきり、言葉で聞かせて欲しい……
私に、迷いなど感じさせないぐらい、確かな愛情を感じた上でなら……触れてもらえない理由を聞く勇気が起きるかも、しれないから。
色々な感情が一遍に溢れ出した途端、美姫の目の端に涙が溜まっていく。それが溢れないように美姫は瞳を大きく見開き、天井を見つめた。
「っ!!!」
涙の膜で揺れる美姫の瞳に眉を寄せ、睫毛を揺らし、唇を引き結ぶ秀一の顔が近付く。指先が伸ばされ、涙の溜まった目尻に触れようとするのに……それは美姫の涙を拭うことなく、宙を虚しく舞っただけだった。
やっぱり、触れて…くれなかった……
ツツーッと涙が美姫の頬を伝って流れ落ちた。秀一の硬く重い声が落とされる。
「美姫…...私はもう、どんなことがあろうと貴女を離しませんよ。たとえ兄様たちに私達の関係を知られようと、私の気持ちは決して変わりません。荊の道になろうとも、私が生涯愛することのできるのは美姫、貴女だけなのです……
もちろん、私だって兄様たちや世間に知られたいとは思っていません。貴女との関係を守る為なら、どんな事だってしてみせる。
私は…どんな嘘をつくことも、罪を犯すことさえも厭いません」
「秀一さん……」
秀一の揺るぎない想いに比べて、美姫はまだ自分の覚悟が甘いことを強く感じさせられる。秀一の瞳には濁りがなく美姫への深い愛情が籠っており、嘘をついているとはどうしても思えなかった。
それ、なのに......
それなのに、なぜ……どうしてそこまで思っていてくれるのに、私に触れるのを避けるんですか?
喉まで出かかる言葉がどうしても言えず、美姫はカクテルグラスを再び手に取り、煽るように涙と共に飲み干した。
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