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嘘 ー美姫回想ー
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秀一さんについてオーストリアへ行くと決めた翌日。
昨日は秀一さんがオーストリアに行くと聞いて不安になってしまって、すぐに「一緒に連れて行ってく下さい」って言っちゃったけど、いくらお父様とお母様がいつも仕事でいないからっていって、黙って海外に行くわけには行かないよね……
しかも、どうしても避けられない大きな仕事がない限りは美姫の両親はクリスマスからお正月の時期に帰国し、家族揃って過ごすのが毎年の常だった。なかなか家族の時間を持てない私に対してのせめてもの両親の配慮で、いつもならこの時期を心待ちにしていた。
けれど、秀一さんがオーストリアに行くことを聞かされ、そんな両親のことすら忘れて行くと言ってしまった。
お父様とお母様と一緒に過ごしたい気持ちはあるけれど、秀一さんの傍を離れ、たくない……
一緒に、オーストリアについて行きたい……
どうやって両親に話を切り出そうかと頭を悩ませていると、別の部屋で誰かと携帯で話をしていた秀一さんが戻ってきた。
「美姫、これから兄様達にSkypeしますよ」
「えっ、今、ですか!?」
「えぇ...」
秀一さんは柔らかく微笑むと、私を書斎へと案内した。デスクの前に私を座らせ、秀一さんがその横に立つ。
そして、パソコンに電源を入れ、Skypeを立ち上げた。
顔を見ながら話の出来るSkypeは、離れて暮らしている家族にとって必須アイテムだ。電話よりも相手を近くに感じるし、寂しさを和らげてくれる。
心の準備も出来ないままに秀一さんが通話ボタンを押してしまった。
「あ、ちょっ...」
細かい電子音の後電話の呼び出し音が鳴り、3コール目でカチャッという音とともに黒い画面が大きく開かれ、そこに両親が並んで座っている画像が映し出された。
お父様が嬉しそうに手を振った。
「美姫、元気か?」
「ふふっ、お父様ったらねぇ、久し振りに美姫とSkypeできて嬉しくて仕方がないんですよ」
お母様にそう言われて、胸がズキンと痛む。
今まで週に1回はふたりにSkypeや電話をしていたのに、あの事件があってから体調が悪いという理由で連絡をしていなかったのだった。
どうしていいか、分からなくて……
友達にレイプ、されかけた…だなんて……どうやって伝えればいいの?
きっとお父様とお母様は私が幸せに暮らしていることを疑っていなくて……
信じていて……願っていて……
でも、私だってそう……
ふたりには娘が幸せであることをなんの疑いもなく信じている、幸せな両親でいて欲しいって願ってしまう。
「体調は良くなったのか?」
心配そうに私の顔色を伺うように少し前に体を傾けて見つめるお父様を前に、ぎこちない笑顔を返した。
「えぇ、もうすっかり…大丈夫です」
直接顔を合わせなくてよかった……
私、ちゃんと笑えてるかな。
デスクの下で小刻みに震えだした手を、自然な仕草で背を屈めた秀一さんの大きな手が包み込む。その温もりに励まされ、強張った表情が少しずつ穏やかになる。
秀一さん……
私の少しの不安もすぐに消し去ってくれる、愛しい人。
昨日は秀一さんがオーストリアに行くと聞いて不安になってしまって、すぐに「一緒に連れて行ってく下さい」って言っちゃったけど、いくらお父様とお母様がいつも仕事でいないからっていって、黙って海外に行くわけには行かないよね……
しかも、どうしても避けられない大きな仕事がない限りは美姫の両親はクリスマスからお正月の時期に帰国し、家族揃って過ごすのが毎年の常だった。なかなか家族の時間を持てない私に対してのせめてもの両親の配慮で、いつもならこの時期を心待ちにしていた。
けれど、秀一さんがオーストリアに行くことを聞かされ、そんな両親のことすら忘れて行くと言ってしまった。
お父様とお母様と一緒に過ごしたい気持ちはあるけれど、秀一さんの傍を離れ、たくない……
一緒に、オーストリアについて行きたい……
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「美姫、これから兄様達にSkypeしますよ」
「えっ、今、ですか!?」
「えぇ...」
秀一さんは柔らかく微笑むと、私を書斎へと案内した。デスクの前に私を座らせ、秀一さんがその横に立つ。
そして、パソコンに電源を入れ、Skypeを立ち上げた。
顔を見ながら話の出来るSkypeは、離れて暮らしている家族にとって必須アイテムだ。電話よりも相手を近くに感じるし、寂しさを和らげてくれる。
心の準備も出来ないままに秀一さんが通話ボタンを押してしまった。
「あ、ちょっ...」
細かい電子音の後電話の呼び出し音が鳴り、3コール目でカチャッという音とともに黒い画面が大きく開かれ、そこに両親が並んで座っている画像が映し出された。
お父様が嬉しそうに手を振った。
「美姫、元気か?」
「ふふっ、お父様ったらねぇ、久し振りに美姫とSkypeできて嬉しくて仕方がないんですよ」
お母様にそう言われて、胸がズキンと痛む。
今まで週に1回はふたりにSkypeや電話をしていたのに、あの事件があってから体調が悪いという理由で連絡をしていなかったのだった。
どうしていいか、分からなくて……
友達にレイプ、されかけた…だなんて……どうやって伝えればいいの?
きっとお父様とお母様は私が幸せに暮らしていることを疑っていなくて……
信じていて……願っていて……
でも、私だってそう……
ふたりには娘が幸せであることをなんの疑いもなく信じている、幸せな両親でいて欲しいって願ってしまう。
「体調は良くなったのか?」
心配そうに私の顔色を伺うように少し前に体を傾けて見つめるお父様を前に、ぎこちない笑顔を返した。
「えぇ、もうすっかり…大丈夫です」
直接顔を合わせなくてよかった……
私、ちゃんと笑えてるかな。
デスクの下で小刻みに震えだした手を、自然な仕草で背を屈めた秀一さんの大きな手が包み込む。その温もりに励まされ、強張った表情が少しずつ穏やかになる。
秀一さん……
私の少しの不安もすぐに消し去ってくれる、愛しい人。
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