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再燃
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美姫の躰全体がガクガクと震え出し、冷水に落とされたように急速に熱が奪われ、にも関わらず嫌な汗が全身の毛穴から滲み出し、空気がその存在感を失ったかのように息苦しさに襲われる。
「ッハァッッハァッッハァッッハァッッハァッ………」
「美姫!?」
秀一の訝しむ声も届かない。
目の前にあの、光景が……
何度も、何度も、剥がそうとした記憶が……また鮮烈に浮かび上がってくる……
鼻を擦り付けながら見せた恍惚の表情
股間に吐き出された息と上がった蒸気
足の指をしゃぶりつく執拗な舌の感触
手の中に感じた熱い欲の塊
私を見下ろし、下卑た笑いを浮かべながら蹂躙する指先が
熱く柔らかい淫唇に触れ……
や、や、やめ、やめ、て...いや、いや、いやいやいやいやいやいやいや......
「いやぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」
「美姫!美姫!美姫っっ!!!」
秀一が美姫の躰を掻き抱くが、混乱した美姫は全身を震わせながら藻掻き続ける。
「ッハァッッハァッッハァッッハァッッハァッッハァッ……」
ここここここここ、わい……逃げ…たい…逃げ、たい…逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたいっっっ!!!!!
あの粘着質な舌が
あの卑猥な指が
肉欲漲る獰猛なあの視線が……
私の肉体に
私の精神に
楔のように絡み付き、雁字搦めにされる。
頭が朦朧としてるのにチカチカと閃光が走り、忌まわしい記憶の断片が圧倒的に押し寄せてくる。ボワンボワンと反響するように耳鳴りが響き、周りの音が遮断されたように遠ざかっていく。吐き気が襲ってくる…悪寒が止まらない。全ての身体機能が停止しそうになり、注意を促すかのように心臓がバクバクと強い振動を打ち付ける……
呑み込まれる……あの、恐怖に…再び……
ハァッ助、けて……助けて……たすけて……タスケ、テ……しゅ…い、ち……さん……しゅういち、さん……
「美姫!美姫!美姫!しっかりして下さい!!ここにいます!!!ここ、に……」
秀一が美姫の上体を起こしてすっぽりと包み込むと、骨が軋む程の強い力で抱き締めた。
…………
秀一さんの…熱、が…腕の感触、が……
チョコレートの匂いに混じった秀一さんの匂い、が……
私を力強く包み込み、私の躰の内部にじんわりと浸透していく……雪に覆われていた地面が春の陽射しに溶かされていくように
少しずつ…少し、ずつ……
小刻みな震えが収まり始め……荒い呼吸が整い始め……耳鳴りが潜み始め……
強い拍動が落ち着きを取り戻し始め……
私の脳裏の忌まわしい映像が、霧のようにその姿を消失していく……
「私が間違っていました……」
小さく頼りなさげに零される秀一の声に、美姫は躰を僅かに震わせた。
「美姫が最近はパニックを起こすこともなくなり、通常の生活をできるようになり、旅先では興奮したり、笑顔を見せるようにもなっていたので、もう心的外傷は癒えたのだと思ってしまいましたが……」
その後の言葉は、深まった闇の中に飲み込まれてしまった……
秀一の躰が僅かに震えている。それは悲しみからなのか、切なさからなのか、憤りからなのか、怒りからなのか、
美姫には推し量ることは出来なかった。
一つだけ、言えることは…こんな秀一に触れたのは、美姫は初めて…だった。
「ごめんな、さい……」
その言葉を漏らした途端、美姫の鼻の奥がキューンと痛みを伴って熱くなり、瞼の奥がじわりと熱をもつ。秀一の腕が美姫の躰を優しく包み直す。
「美姫…貴女のせいでは、ありません……決して……貴女のせいでは……
だから、どうか自分を…責めないで下さい……」
優しいはずの秀一の言葉は、美姫の胸を奥深く抉えぐった。
「ううぐぅぅぅっっ……ヒグッヒグッ……」
秀一に縋り付き、泣くことしかできない。そんな自分に苛立ちを覚える。
早く…早く…この闇から抜け出したい。
秀一さんに、愛されたい。秀一さんを、愛したい。
お願いです。引き上げて……闇の深くに沈んでいく私を。力強く、優しく…光へと引っ張り上げて欲しい。
藻掻いても…藻掻いても…這い上がれない。絡み付いた楔を断ち切って。
それが出来るのは、秀一さん……貴方だけ、なんです。
「ッハァッッハァッッハァッッハァッッハァッ………」
「美姫!?」
秀一の訝しむ声も届かない。
目の前にあの、光景が……
何度も、何度も、剥がそうとした記憶が……また鮮烈に浮かび上がってくる……
鼻を擦り付けながら見せた恍惚の表情
股間に吐き出された息と上がった蒸気
足の指をしゃぶりつく執拗な舌の感触
手の中に感じた熱い欲の塊
私を見下ろし、下卑た笑いを浮かべながら蹂躙する指先が
熱く柔らかい淫唇に触れ……
や、や、やめ、やめ、て...いや、いや、いやいやいやいやいやいやいや......
「いやぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」
「美姫!美姫!美姫っっ!!!」
秀一が美姫の躰を掻き抱くが、混乱した美姫は全身を震わせながら藻掻き続ける。
「ッハァッッハァッッハァッッハァッッハァッッハァッ……」
ここここここここ、わい……逃げ…たい…逃げ、たい…逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたいっっっ!!!!!
あの粘着質な舌が
あの卑猥な指が
肉欲漲る獰猛なあの視線が……
私の肉体に
私の精神に
楔のように絡み付き、雁字搦めにされる。
頭が朦朧としてるのにチカチカと閃光が走り、忌まわしい記憶の断片が圧倒的に押し寄せてくる。ボワンボワンと反響するように耳鳴りが響き、周りの音が遮断されたように遠ざかっていく。吐き気が襲ってくる…悪寒が止まらない。全ての身体機能が停止しそうになり、注意を促すかのように心臓がバクバクと強い振動を打ち付ける……
呑み込まれる……あの、恐怖に…再び……
ハァッ助、けて……助けて……たすけて……タスケ、テ……しゅ…い、ち……さん……しゅういち、さん……
「美姫!美姫!美姫!しっかりして下さい!!ここにいます!!!ここ、に……」
秀一が美姫の上体を起こしてすっぽりと包み込むと、骨が軋む程の強い力で抱き締めた。
…………
秀一さんの…熱、が…腕の感触、が……
チョコレートの匂いに混じった秀一さんの匂い、が……
私を力強く包み込み、私の躰の内部にじんわりと浸透していく……雪に覆われていた地面が春の陽射しに溶かされていくように
少しずつ…少し、ずつ……
小刻みな震えが収まり始め……荒い呼吸が整い始め……耳鳴りが潜み始め……
強い拍動が落ち着きを取り戻し始め……
私の脳裏の忌まわしい映像が、霧のようにその姿を消失していく……
「私が間違っていました……」
小さく頼りなさげに零される秀一の声に、美姫は躰を僅かに震わせた。
「美姫が最近はパニックを起こすこともなくなり、通常の生活をできるようになり、旅先では興奮したり、笑顔を見せるようにもなっていたので、もう心的外傷は癒えたのだと思ってしまいましたが……」
その後の言葉は、深まった闇の中に飲み込まれてしまった……
秀一の躰が僅かに震えている。それは悲しみからなのか、切なさからなのか、憤りからなのか、怒りからなのか、
美姫には推し量ることは出来なかった。
一つだけ、言えることは…こんな秀一に触れたのは、美姫は初めて…だった。
「ごめんな、さい……」
その言葉を漏らした途端、美姫の鼻の奥がキューンと痛みを伴って熱くなり、瞼の奥がじわりと熱をもつ。秀一の腕が美姫の躰を優しく包み直す。
「美姫…貴女のせいでは、ありません……決して……貴女のせいでは……
だから、どうか自分を…責めないで下さい……」
優しいはずの秀一の言葉は、美姫の胸を奥深く抉えぐった。
「ううぐぅぅぅっっ……ヒグッヒグッ……」
秀一に縋り付き、泣くことしかできない。そんな自分に苛立ちを覚える。
早く…早く…この闇から抜け出したい。
秀一さんに、愛されたい。秀一さんを、愛したい。
お願いです。引き上げて……闇の深くに沈んでいく私を。力強く、優しく…光へと引っ張り上げて欲しい。
藻掻いても…藻掻いても…這い上がれない。絡み付いた楔を断ち切って。
それが出来るのは、秀一さん……貴方だけ、なんです。
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