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美姫への想い ー大和過去編ー
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それから数ヶ月が過ぎ……
俺は朝、駅で電車を待っていた。その日美姫とは待ち合わせはせず、ひとりだった。まだ半分眠ったままの意識で電車が来るのを待っていると、突然後ろの方で「キャーッッ!!!」という女の金切り声が聞こえた。
っるせーな、朝っぱらから......
迷惑顔で声のした方を振り向くと、違う学校の女子高生が3人いた。キオスクに置いてあった雑誌を手に取り、興奮した様子で話している。
「ねぇ、これ見て!! 私、来栖秀一のファンだったのにぃ、ショックー!!」
「え、来栖秀一って誰?」
「知らないのぉ? ほら、一時期テレビとか雑誌ですっごい話題になってた『ピアノの貴公子』!!
そういや、最近見ないけど」
え、来栖秀一って……オーストリアに行ったんじゃなかったのか?
俺は乗る予定だった電車を一本やり過ごし、去って行った女子高生たちが手にしていた雑誌を棚から取り上げた。
雑誌の見出しには『ピアノの貴公子と注目若手女優との密会!!』とあり、ページを捲ると来栖秀一と女が腕を組んでホテルから出てくる写真がデカデカと載っていた。
美姫、は……知ってんのか……?
俺は未だに美姫の心を掻き回そうとする来栖秀一に対して、怒りがこみ上げてきた。そして、どうか美姫があの記事をなんとか読まないまま、噂が消えていくことを願った。
不安な気持ちのまま教室に着き、扉を開けた途端、誰かとぶつかった。
「ッ!!!」
「わっ、ごめん! て、美姫!?」
美姫は、真っ青な顔をしていた。来栖秀一の記事を読んだのだとはっきり悟った。
そんなに……あいつのことが、気になるのかよ……
胸がギュッと絞り込まれるような苦しさに襲われる。そんな気持ちを抑え込み、なんでもない顔をして美姫に問いかける。
「どうした? 授業、始まるぞ?」
すると、美姫が俺の手を握った。
「大和。どこか、連れて行って…」
「え......」
美姫の切羽詰まった表情を見てたら、もう席に戻れなんて言えなかった。美姫の手を握り返し、授業が始まる前の学校をふたりで抜け出した。
お前が気の済むまで、とことん付き合ってやる。泣きたいなら、泣けばいい。
俺に、辛い気持ちを全部預けろ。
そして、来栖秀一のことなんか、早く忘れちまえ......
俺は……狡い男だ。美姫が思っているみたいに爽やかでも誠実でもないし、優しくもない。俺は…貪欲で、美姫の気持ちを無視して俺の欲望を叶えようとしていた。美姫の弱っている隙につけこんで…まるで何も知らないフリをして、美姫を気遣うかのようにして本音を隠し……
来栖秀一のスキャンダルを知って、やけになってか対抗心からなのか、「ホテルに行きたい」と言い出した美姫に言った言葉。
「俺…ほんとに美姫のこと……大事にしたいって思ってる。
だから......何があったか知らねーけど、無理すんな……」
以前の俺なら......心から美姫に言っていたと思う。
だが、俺の心の中に育った欲望の芽が花を咲かせようとしていた。
美姫が、欲しい。
俺が、あいつを……忘れさせてやる。
「大和……お願い…抱、いて……後悔、しないから……」
震えながら俺に抱きつく美姫が愛しくてたまらない。
俺がお前を守ってやる。絶対に、この手を離さねぇ。
美姫は、俺がこの手で幸せにしてやる。
美姫の華奢な躰に回した腕に力を込め、誓った。
俺は朝、駅で電車を待っていた。その日美姫とは待ち合わせはせず、ひとりだった。まだ半分眠ったままの意識で電車が来るのを待っていると、突然後ろの方で「キャーッッ!!!」という女の金切り声が聞こえた。
っるせーな、朝っぱらから......
迷惑顔で声のした方を振り向くと、違う学校の女子高生が3人いた。キオスクに置いてあった雑誌を手に取り、興奮した様子で話している。
「ねぇ、これ見て!! 私、来栖秀一のファンだったのにぃ、ショックー!!」
「え、来栖秀一って誰?」
「知らないのぉ? ほら、一時期テレビとか雑誌ですっごい話題になってた『ピアノの貴公子』!!
そういや、最近見ないけど」
え、来栖秀一って……オーストリアに行ったんじゃなかったのか?
俺は乗る予定だった電車を一本やり過ごし、去って行った女子高生たちが手にしていた雑誌を棚から取り上げた。
雑誌の見出しには『ピアノの貴公子と注目若手女優との密会!!』とあり、ページを捲ると来栖秀一と女が腕を組んでホテルから出てくる写真がデカデカと載っていた。
美姫、は……知ってんのか……?
俺は未だに美姫の心を掻き回そうとする来栖秀一に対して、怒りがこみ上げてきた。そして、どうか美姫があの記事をなんとか読まないまま、噂が消えていくことを願った。
不安な気持ちのまま教室に着き、扉を開けた途端、誰かとぶつかった。
「ッ!!!」
「わっ、ごめん! て、美姫!?」
美姫は、真っ青な顔をしていた。来栖秀一の記事を読んだのだとはっきり悟った。
そんなに……あいつのことが、気になるのかよ……
胸がギュッと絞り込まれるような苦しさに襲われる。そんな気持ちを抑え込み、なんでもない顔をして美姫に問いかける。
「どうした? 授業、始まるぞ?」
すると、美姫が俺の手を握った。
「大和。どこか、連れて行って…」
「え......」
美姫の切羽詰まった表情を見てたら、もう席に戻れなんて言えなかった。美姫の手を握り返し、授業が始まる前の学校をふたりで抜け出した。
お前が気の済むまで、とことん付き合ってやる。泣きたいなら、泣けばいい。
俺に、辛い気持ちを全部預けろ。
そして、来栖秀一のことなんか、早く忘れちまえ......
俺は……狡い男だ。美姫が思っているみたいに爽やかでも誠実でもないし、優しくもない。俺は…貪欲で、美姫の気持ちを無視して俺の欲望を叶えようとしていた。美姫の弱っている隙につけこんで…まるで何も知らないフリをして、美姫を気遣うかのようにして本音を隠し……
来栖秀一のスキャンダルを知って、やけになってか対抗心からなのか、「ホテルに行きたい」と言い出した美姫に言った言葉。
「俺…ほんとに美姫のこと……大事にしたいって思ってる。
だから......何があったか知らねーけど、無理すんな……」
以前の俺なら......心から美姫に言っていたと思う。
だが、俺の心の中に育った欲望の芽が花を咲かせようとしていた。
美姫が、欲しい。
俺が、あいつを……忘れさせてやる。
「大和……お願い…抱、いて……後悔、しないから……」
震えながら俺に抱きつく美姫が愛しくてたまらない。
俺がお前を守ってやる。絶対に、この手を離さねぇ。
美姫は、俺がこの手で幸せにしてやる。
美姫の華奢な躰に回した腕に力を込め、誓った。
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