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罪悪感
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誠一郎が少し居心地が悪くなったように話題を変えた。
「美姫、大学生活はどうだ? だいぶ慣れたか?」
「えぇ、お父様。お陰様で……」
そう言った美姫に、秀一が声を落とした。
「兄様、実はそのことでご相談が……」
誠一郎は秀一の声音に、やや声を固くして答えた。
「なんだ、何かあったのか?」
「…実は最近、美姫の大学寮に盗難が入りまして…しかもその犯人は同じ寮の学生だったそうです」
「えっ。そうなのか、美姫?」
そんなこと、私も初耳だけど……秀一さんに合わせるしかない。
「えぇ…」
秀一は美姫が頷くのを待った後、話を続ける。
「美姫は運良く被害に合わなかったからよかったものの、それ以来怖くて寝付けないらしく。ちょうど私の住んでいるマンションに空室があるので、そこに引っ越してはどうかと打診していたのですよ」
「そうか…それは怖い思いをしたな……まぁ、実家には私達はあまりいないし、引っ越すなら大学から近い秀一のマンションの方が便利だろう…」
「えぇ。それに、私のマンションでしたら警備もしっかりしていますし、美姫に何かあれば私にすぐ連絡がいくようにしておきますので」
「その部屋はどんな感じなんだ?」
「一人暮らし用の狭いバチュラータイプの部屋ですよ。私の10階下になります」
「美姫は、どうなんだ?」
誠一郎に突然話を振られて、美姫は戸惑いながらも答えた。
「わた、しは……引っ越したいです……」
「分かった。では、そうしよう」
誠一郎の言葉に秀一がゆっくりと頷いた。
「手続きは私が保護者代理として済ませておきますので」
「すまんな。世話をかけるが、よろしく頼む」
なんて、鮮やかなんだろう……
美姫は内心、秀一の手腕に舌を巻いた。
食事を済ませ、一階のロビーへと下りた。
「美姫、今日は実家に泊まるのだろう?」
誠一郎の弾んだ声がする。美姫は無意識に秀一を伺うようにそちらを向きかけて、慌てて父の方へと向き直った。
「え、えぇ。寮には、外泊許可をとってありますので」
「実家にも美姫の服が揃っていますから、明日はそのまま大学に行けますものね。私が大学まで送りましょう」
凛子が美姫に微笑んだ。秀一が腕時計に視線を落とし、3人に顔を向けた。
「では、私はこれで……美姫、久し振りに二人に甘えて下さいね」
「秀一は忙しそうだな……」
秀一の後ろ姿を見送りながら呟く誠一郎に、凛子が微笑んだ。
「モルテッソーニに師事した程の実力あるピアニストですもの。しかもあの甘いマスク……女性やマスコミがほおっておきませんわ」
「凛子……」
誠一郎が少し不機嫌な顔を覗かせ、凛子は悪戯っぽく言う。
「あら、あなた。フフッ、弟に嫉妬されるなんて……美姫に笑われてしまいますよ、ねぇ?」
「……え?……あ、えぇ……」
美姫は凛子に突然話を振られ、慌てて相槌を打った。
二人は……私が秀一さんと淫らな関係にあるなんて夢にも思っていないんだろうな。
ホッとしていい筈なのに、美姫は心憂い気持ちになった。
「美姫、大学生活はどうだ? だいぶ慣れたか?」
「えぇ、お父様。お陰様で……」
そう言った美姫に、秀一が声を落とした。
「兄様、実はそのことでご相談が……」
誠一郎は秀一の声音に、やや声を固くして答えた。
「なんだ、何かあったのか?」
「…実は最近、美姫の大学寮に盗難が入りまして…しかもその犯人は同じ寮の学生だったそうです」
「えっ。そうなのか、美姫?」
そんなこと、私も初耳だけど……秀一さんに合わせるしかない。
「えぇ…」
秀一は美姫が頷くのを待った後、話を続ける。
「美姫は運良く被害に合わなかったからよかったものの、それ以来怖くて寝付けないらしく。ちょうど私の住んでいるマンションに空室があるので、そこに引っ越してはどうかと打診していたのですよ」
「そうか…それは怖い思いをしたな……まぁ、実家には私達はあまりいないし、引っ越すなら大学から近い秀一のマンションの方が便利だろう…」
「えぇ。それに、私のマンションでしたら警備もしっかりしていますし、美姫に何かあれば私にすぐ連絡がいくようにしておきますので」
「その部屋はどんな感じなんだ?」
「一人暮らし用の狭いバチュラータイプの部屋ですよ。私の10階下になります」
「美姫は、どうなんだ?」
誠一郎に突然話を振られて、美姫は戸惑いながらも答えた。
「わた、しは……引っ越したいです……」
「分かった。では、そうしよう」
誠一郎の言葉に秀一がゆっくりと頷いた。
「手続きは私が保護者代理として済ませておきますので」
「すまんな。世話をかけるが、よろしく頼む」
なんて、鮮やかなんだろう……
美姫は内心、秀一の手腕に舌を巻いた。
食事を済ませ、一階のロビーへと下りた。
「美姫、今日は実家に泊まるのだろう?」
誠一郎の弾んだ声がする。美姫は無意識に秀一を伺うようにそちらを向きかけて、慌てて父の方へと向き直った。
「え、えぇ。寮には、外泊許可をとってありますので」
「実家にも美姫の服が揃っていますから、明日はそのまま大学に行けますものね。私が大学まで送りましょう」
凛子が美姫に微笑んだ。秀一が腕時計に視線を落とし、3人に顔を向けた。
「では、私はこれで……美姫、久し振りに二人に甘えて下さいね」
「秀一は忙しそうだな……」
秀一の後ろ姿を見送りながら呟く誠一郎に、凛子が微笑んだ。
「モルテッソーニに師事した程の実力あるピアニストですもの。しかもあの甘いマスク……女性やマスコミがほおっておきませんわ」
「凛子……」
誠一郎が少し不機嫌な顔を覗かせ、凛子は悪戯っぽく言う。
「あら、あなた。フフッ、弟に嫉妬されるなんて……美姫に笑われてしまいますよ、ねぇ?」
「……え?……あ、えぇ……」
美姫は凛子に突然話を振られ、慌てて相槌を打った。
二人は……私が秀一さんと淫らな関係にあるなんて夢にも思っていないんだろうな。
ホッとしていい筈なのに、美姫は心憂い気持ちになった。
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