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初めてを捧げた人 ー美姫過去編ー
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秀一さんとの再会から一週間後。
クラスの女子が、週刊誌を持ってきた。
「ねぇ、これって美姫の叔父さんじゃない?」
「え?」
見るとそこには、『ピアノの貴公子と注目若手女優との密会!』と見出しに書かれた記事が紙面に踊っていた。
「あ、この人.....」
秀一さんの楽屋に、来てた人だ。
それが、本当にこの記事の内容を事実だと裏付けているようで、更に打ちのめされる。秀一さんの滞在するホテルから仲良く腕を組んで出てくる写真を一瞬チラッと横目で見た後、直ぐ目を伏せた。
見たく、ない……
「ねぇねぇ、美姫の叔父さんって素敵ねぇ。なんか、大人の色気が漂ってて……こんな人が身内にいるなんて、羨ましいっ!」
答える気力も、なかった。
「ごめん、ちょっと......」
席を立ち、教室を出て行こうとフラフラと歩き出した。ちょうど教室の扉の前で、誰かとぶつかる。
「ッ!!!」
「わっ、ごめん!......て、美姫!?」
大和だった。
「どうした? 授業、始まるぞ?」
青ざめた顔をしているだろう私の顔を心配そうに覗き込んだ大和の手を握った。
「大和......どこか、連れて行って」
「え......」
大和は、何も聞かずに私を学校から連れ出してくれた。まだ登校時間で校門へと入ってくる人の流れに逆らって出た私たちは、制服じゃ目立つので適当に服を見繕って購入した。
お手洗いに行って私服に着替えると、制服と鞄はコインロッカーに入れることにした。
こんなことしたの初めてで、ドキドキする……
「美姫、どっか行きたいとこあるか?」
コインロッカーに荷物を入れ終わると大和は大きく伸びをし、普通にデートする時のような軽いノリで聞いてきた。
言われた私は......咄嗟に、先程見た週刊誌の記事を思い出す。
「ホテル……」
「えっ!?」
大和は、飛び上がるぐらいの勢いで驚いている。
「ホテルに......行きたい」
そう言った私の両頬を、大和の大きな手が包み込む。
「美姫。おまえ、本気で......言ってんのか?」
「本気、で......言ってる」
すると、ハァーッと盛大な大和の溜息が聞こえる。
「あのさぁ、意味分かってんのか?
俺も、男だし......行ったらどうなるか分かんねーっつーか、そこまで我慢できる自信ねーし」
「分かってるよ......」
大和が私を優しく抱き寄せる。
耳元で低い声が響く。安心できる、優しい声……
「俺......ほんとに、美姫のこと大事にしたいって思ってる。だから......何があったか知らねーけど、無理すんな」
その言葉に、涙が溢れ出す。
学校を休んだ三日間、大和は心配して自宅まで様子を見に来てくれた。
それなのに、私は......大和に会おうともせず、そのまま帰ってもらった。そして、学校に来てからも大和は理由を聞こうとはせず、ただいつも通りに接してくれていた。
どうして......そんなに、優しいの?
私は......この優しさに、包まれたい。私を、深い暗闇の底から救って欲しい。
「大和......お願い。抱、いて......
後悔、しないから……」
そう、後悔なんて、しない。私はもう、秀一さんのことは......忘れるんだ。
クラスの女子が、週刊誌を持ってきた。
「ねぇ、これって美姫の叔父さんじゃない?」
「え?」
見るとそこには、『ピアノの貴公子と注目若手女優との密会!』と見出しに書かれた記事が紙面に踊っていた。
「あ、この人.....」
秀一さんの楽屋に、来てた人だ。
それが、本当にこの記事の内容を事実だと裏付けているようで、更に打ちのめされる。秀一さんの滞在するホテルから仲良く腕を組んで出てくる写真を一瞬チラッと横目で見た後、直ぐ目を伏せた。
見たく、ない……
「ねぇねぇ、美姫の叔父さんって素敵ねぇ。なんか、大人の色気が漂ってて……こんな人が身内にいるなんて、羨ましいっ!」
答える気力も、なかった。
「ごめん、ちょっと......」
席を立ち、教室を出て行こうとフラフラと歩き出した。ちょうど教室の扉の前で、誰かとぶつかる。
「ッ!!!」
「わっ、ごめん!......て、美姫!?」
大和だった。
「どうした? 授業、始まるぞ?」
青ざめた顔をしているだろう私の顔を心配そうに覗き込んだ大和の手を握った。
「大和......どこか、連れて行って」
「え......」
大和は、何も聞かずに私を学校から連れ出してくれた。まだ登校時間で校門へと入ってくる人の流れに逆らって出た私たちは、制服じゃ目立つので適当に服を見繕って購入した。
お手洗いに行って私服に着替えると、制服と鞄はコインロッカーに入れることにした。
こんなことしたの初めてで、ドキドキする……
「美姫、どっか行きたいとこあるか?」
コインロッカーに荷物を入れ終わると大和は大きく伸びをし、普通にデートする時のような軽いノリで聞いてきた。
言われた私は......咄嗟に、先程見た週刊誌の記事を思い出す。
「ホテル……」
「えっ!?」
大和は、飛び上がるぐらいの勢いで驚いている。
「ホテルに......行きたい」
そう言った私の両頬を、大和の大きな手が包み込む。
「美姫。おまえ、本気で......言ってんのか?」
「本気、で......言ってる」
すると、ハァーッと盛大な大和の溜息が聞こえる。
「あのさぁ、意味分かってんのか?
俺も、男だし......行ったらどうなるか分かんねーっつーか、そこまで我慢できる自信ねーし」
「分かってるよ......」
大和が私を優しく抱き寄せる。
耳元で低い声が響く。安心できる、優しい声……
「俺......ほんとに、美姫のこと大事にしたいって思ってる。だから......何があったか知らねーけど、無理すんな」
その言葉に、涙が溢れ出す。
学校を休んだ三日間、大和は心配して自宅まで様子を見に来てくれた。
それなのに、私は......大和に会おうともせず、そのまま帰ってもらった。そして、学校に来てからも大和は理由を聞こうとはせず、ただいつも通りに接してくれていた。
どうして......そんなに、優しいの?
私は......この優しさに、包まれたい。私を、深い暗闇の底から救って欲しい。
「大和......お願い。抱、いて......
後悔、しないから……」
そう、後悔なんて、しない。私はもう、秀一さんのことは......忘れるんだ。
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