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女の子同士の恋愛って難しいけど、女性としてやよいのこと愛したい
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温泉から上がり、浴衣に着替える。やよいは赤にピンクの桜が散らばった可愛らしいデザイン、私のは紫に水仙が描かれていた。
「やよいの浴衣、似合ってるね。可愛い」
「美来さんの方こそ……素敵です」
そう言って見つめ合う私たちは、間違いなくバカップルだろう。
「あんたたち、仲良いねぇ」
私たちの会話を聞いていたらしいお婆さんに話しかけられ、ビクッと肩が震えた。
「ぁ、はい」
「いいねぇ、友達同士で旅行なんて。私も若い時分にしたかったよ」
まぁ、そりゃ友達だと思われるのは仕方ないし、お婆さんに『私たち、恋人同士なんです』なんて言えないけどさ。
そう考えてると、やよいが笑顔で答えた。
「はい、とっても楽しいです」
「そうかい。楽しんでな」
お婆さんに軽くお辞儀をして、脱衣所を出た。
ご飯を食べる前に、再び本館へと戻る廊下を歩く。
「美来さん、ごめんなさい。私のために部屋に戻らせてしまって」
私は着替えだけだったけど、やよいは着替えに加えて化粧ポーチやドライヤーなんかまで持ってきてて荷物が多そうだったので、いったん部屋に戻ろうということになったのだ。
「食事の前のいい運動になるよ。お腹空かせていっぱい食べよ!」
あぁ、バイキング楽しみー。
何を食べようか考えてると、やよいが話しかけてきた。
「美来さん……」
「ん、なに?」
「私たち……歳をとっても、仲良く旅行できるといいですね」
やよいがほんわかするような笑顔を向ける。
歳をとっても、か。
私はふたりがおばあちゃんになった未来どころか、5年先、1年先のことも考えられない、考えないようにしよう、今のことだけ考えようって思ってたけど……
未来が分からないからって、未来を夢みることをしちゃいけないってことは、ないんだ。
「そうだね」
ほんとに……そうなってると、いいな。
そうやって、楽しい思い出をやよいと積み重ねていきたい。
そんな想いを込めてやよいの頭をそっと撫でると、やよいが幸せそうに微笑むから……胸がいっぱいになった。
レストランに入った途端、思わず大きな声を上げていた。
「うわぁ、すごーい!!」
和洋中すべて揃ったバイキングは、オープンキッチンまであった。
部屋番号を告げて海が一望できる窓側の席に案内されると、鮑の踊り焼き、サザエの壺焼き、鯵のなめろう、あさりを使った料理、フカヒレの茶碗蒸しがひとりに1つずつサーブされた。これだけでも凄い豪華。
「じゃ、早速取りに行こうか」
ビールを頼んだらやよいを誘って、バイキングへいざ出陣。
中華料理、ステーキ、天ぷら、お寿司、蟹、サラダ、果物、デザート、チョコレートフォンデュ、ご飯類、フカヒレスープ、なんでもそろってるわぁ。食べ放題と聞いて、これは元を取らねばと気合いが入る。
ふと見ると、やよいの皿には控えめにサラダとお寿司が二貫と果物が載ってるだけだった。
「え、やよい。それだけ?」
「ほんとは、色々食べてみたいものあるんですけど……」
言いながら、やよいが視線を下ろした。
「この後、ナイトプールに出かけるんだったら、あんまり食べちゃうとって思って……」
「うわっ、そうじゃん! 絶対私、お腹出てるよー」
やよいが慌てて、空いてる手を振った。
「あっ、美来さんは気にしなくて大丈夫ですから! 私がただ、勝手に思ってるだけなんで……」
お皿てんこ盛りだし、ビールも飲む気満々で注文しちゃったわ。私、ほんと女子力0だわ。
皿を見ながら愕然とする私に、やよいがますます慌てた。
「美来さんは、どんな美来さんでも素敵ですから!!」
「うん……ありがとね、やよい」
ナイトプールの後に夕飯にすれば良かったかなって思ったけど、それだとレストランが閉店してるかもしれないし、もうこうなったら帰るわけにもいかないし、しょーがない。
となれば、美味しくいただくのが一番だよね。
「よし、食べて飲むわ!」
席に着くと、ちょうど冷え冷えのビールが運ばれてきた。アイスグリーンティーを頼んだやよいとグラスを合わせる。
「かんぱーい!」
「乾杯!」
グビグビと一気に冷えたビールを喉に流し込むと、通った先から喉にキーンと沁み渡っていく。んー、この爽快感がたまんないっ!
「ッハァ……幸せぇ」
「美来さん、泡が唇についてますよ」
「うそっ!? やだー」
「美来さんがビール飲んでるの見てると、すごく美味しそうで、私まで飲みたくなっちゃいます」
「じゃ、ちょっと飲んでみる?」
「ぇ……じゃ、ちょっとだけ」
やよいは上品にビールジョッキを手に取ると、ゆっくりと傾けてビールを口にした。
「……美来さんが飲んでる時は美味しそうなのに。なんか、騙された気分です」
そう言ってジョッキを置いて、拗ねるように告げたやよいが可愛くて。
私はそんなやよいを見て笑いながら、美味しいご飯とビールを心ゆくまで堪能した。
「やよいの浴衣、似合ってるね。可愛い」
「美来さんの方こそ……素敵です」
そう言って見つめ合う私たちは、間違いなくバカップルだろう。
「あんたたち、仲良いねぇ」
私たちの会話を聞いていたらしいお婆さんに話しかけられ、ビクッと肩が震えた。
「ぁ、はい」
「いいねぇ、友達同士で旅行なんて。私も若い時分にしたかったよ」
まぁ、そりゃ友達だと思われるのは仕方ないし、お婆さんに『私たち、恋人同士なんです』なんて言えないけどさ。
そう考えてると、やよいが笑顔で答えた。
「はい、とっても楽しいです」
「そうかい。楽しんでな」
お婆さんに軽くお辞儀をして、脱衣所を出た。
ご飯を食べる前に、再び本館へと戻る廊下を歩く。
「美来さん、ごめんなさい。私のために部屋に戻らせてしまって」
私は着替えだけだったけど、やよいは着替えに加えて化粧ポーチやドライヤーなんかまで持ってきてて荷物が多そうだったので、いったん部屋に戻ろうということになったのだ。
「食事の前のいい運動になるよ。お腹空かせていっぱい食べよ!」
あぁ、バイキング楽しみー。
何を食べようか考えてると、やよいが話しかけてきた。
「美来さん……」
「ん、なに?」
「私たち……歳をとっても、仲良く旅行できるといいですね」
やよいがほんわかするような笑顔を向ける。
歳をとっても、か。
私はふたりがおばあちゃんになった未来どころか、5年先、1年先のことも考えられない、考えないようにしよう、今のことだけ考えようって思ってたけど……
未来が分からないからって、未来を夢みることをしちゃいけないってことは、ないんだ。
「そうだね」
ほんとに……そうなってると、いいな。
そうやって、楽しい思い出をやよいと積み重ねていきたい。
そんな想いを込めてやよいの頭をそっと撫でると、やよいが幸せそうに微笑むから……胸がいっぱいになった。
レストランに入った途端、思わず大きな声を上げていた。
「うわぁ、すごーい!!」
和洋中すべて揃ったバイキングは、オープンキッチンまであった。
部屋番号を告げて海が一望できる窓側の席に案内されると、鮑の踊り焼き、サザエの壺焼き、鯵のなめろう、あさりを使った料理、フカヒレの茶碗蒸しがひとりに1つずつサーブされた。これだけでも凄い豪華。
「じゃ、早速取りに行こうか」
ビールを頼んだらやよいを誘って、バイキングへいざ出陣。
中華料理、ステーキ、天ぷら、お寿司、蟹、サラダ、果物、デザート、チョコレートフォンデュ、ご飯類、フカヒレスープ、なんでもそろってるわぁ。食べ放題と聞いて、これは元を取らねばと気合いが入る。
ふと見ると、やよいの皿には控えめにサラダとお寿司が二貫と果物が載ってるだけだった。
「え、やよい。それだけ?」
「ほんとは、色々食べてみたいものあるんですけど……」
言いながら、やよいが視線を下ろした。
「この後、ナイトプールに出かけるんだったら、あんまり食べちゃうとって思って……」
「うわっ、そうじゃん! 絶対私、お腹出てるよー」
やよいが慌てて、空いてる手を振った。
「あっ、美来さんは気にしなくて大丈夫ですから! 私がただ、勝手に思ってるだけなんで……」
お皿てんこ盛りだし、ビールも飲む気満々で注文しちゃったわ。私、ほんと女子力0だわ。
皿を見ながら愕然とする私に、やよいがますます慌てた。
「美来さんは、どんな美来さんでも素敵ですから!!」
「うん……ありがとね、やよい」
ナイトプールの後に夕飯にすれば良かったかなって思ったけど、それだとレストランが閉店してるかもしれないし、もうこうなったら帰るわけにもいかないし、しょーがない。
となれば、美味しくいただくのが一番だよね。
「よし、食べて飲むわ!」
席に着くと、ちょうど冷え冷えのビールが運ばれてきた。アイスグリーンティーを頼んだやよいとグラスを合わせる。
「かんぱーい!」
「乾杯!」
グビグビと一気に冷えたビールを喉に流し込むと、通った先から喉にキーンと沁み渡っていく。んー、この爽快感がたまんないっ!
「ッハァ……幸せぇ」
「美来さん、泡が唇についてますよ」
「うそっ!? やだー」
「美来さんがビール飲んでるの見てると、すごく美味しそうで、私まで飲みたくなっちゃいます」
「じゃ、ちょっと飲んでみる?」
「ぇ……じゃ、ちょっとだけ」
やよいは上品にビールジョッキを手に取ると、ゆっくりと傾けてビールを口にした。
「……美来さんが飲んでる時は美味しそうなのに。なんか、騙された気分です」
そう言ってジョッキを置いて、拗ねるように告げたやよいが可愛くて。
私はそんなやよいを見て笑いながら、美味しいご飯とビールを心ゆくまで堪能した。
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