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同性で付き合うってどういうこと??
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動揺する私を横目に、光はマティーニを飲み干した。
「高2の時から、沙織と付き合ってたの。私も美来ほどではないけどファンの女の子がついてたし、私たちが付き合ってることを知られたら沙織に対して嫌がらせとかあるかもしれないから、秘密にしようって言って。
ほんとは美来だけには打ち明けたかったけどさ、同性を好きな女の気持ちなんて美来には分かってもらえないし、今の友達関係が壊れるのが怖くて話せなかった。
実は、つい最近まで関係が続いてたんだけどね」
そ、そうだったんだ……全然、知らなかった。
光が華奢なハンドバックからタバコを取り出す。いつも吸ってるマロボロじゃなくて、メンソールの方。
慣れた仕草でタバコに火をつけると、細く長い煙を吐き出した。メンソールの極細タバコを吸ってる光の指が、いつもより艶っぽく見えた。
「沙織のこと……凄く、好きだったんだけどさ。好きになればなるほど、苦しくて。
沙織はいいとこのお嬢さんで、東京に来ることは許してもらえなかった。会えないとなんか不安ばっかり募っちゃって。
沙織ね、今度お見合いするんだって。親の決めた相手と結婚するとか、時代錯誤だよね。でも私、『結婚しないで』なんて、言えなかった。沙織が同性である私と遠距離で辛い恋愛するよりも、身近で支えてくれる人との方が幸せになれるんじゃないかって思って」
「でも、沙織はその人を好きなわけじゃないんでしょ?」
そんなの、沙織が幸せに思うはずない。
光がフッと寂しげに息を吐いた。吸ってもらえないタバコの先から灰が零れて、黒いテーブルの上に落ちた。
「沙織から、別れようって言ってきたの。もう、疲れたって。
家族や友達から隠れてこそこそすることに。離れていてなかなか会えない寂しさに。行き場のない、この関係に。
家族や友達に堂々と紹介できて、後ろめたい思いをしない付き合いをしたいんだって言われた。それに、子供も産みたいからって……」
光にかける慰めの言葉が見つからなかった。光以上に、沙織の言葉に私はショックを受けていたのかもしれない。
同性と付き合うってことがどういうことなのか、私は全然分かっていなかった。
初めて、あの時のやよいの言葉が分かった。
『先輩は……同性を好きになるっていうことが、どれ程の覚悟がいることなのか全然分かっていません。
それに私は、先輩をこちらの世界に引き摺り込もうなんて思っていませんから』
あの時のやよいの真意を、私は理解してなかった。
同性同士の恋愛にどんな弊害があるのかなんて、考えもしなかった。好きになれば、その感情に従って付き合えばいいんじゃんなんて、軽く考えてた。
女性同士付き合うってことは、家族や友達、世間からそれを隠して生きていかなくてはいけない。もしカミングアウトするなら、その責任をすべて自分で背負って生きていかなくてはならないんだ。
法律的に認められていないから結婚することもできず、子供を産むことも出来ない。もし、相手に何か会った時には家族でない自分は、死に際に会うことも許されないかもしれないんだ。
それが……同性と付き合う覚悟、 なんだ。
「高2の時から、沙織と付き合ってたの。私も美来ほどではないけどファンの女の子がついてたし、私たちが付き合ってることを知られたら沙織に対して嫌がらせとかあるかもしれないから、秘密にしようって言って。
ほんとは美来だけには打ち明けたかったけどさ、同性を好きな女の気持ちなんて美来には分かってもらえないし、今の友達関係が壊れるのが怖くて話せなかった。
実は、つい最近まで関係が続いてたんだけどね」
そ、そうだったんだ……全然、知らなかった。
光が華奢なハンドバックからタバコを取り出す。いつも吸ってるマロボロじゃなくて、メンソールの方。
慣れた仕草でタバコに火をつけると、細く長い煙を吐き出した。メンソールの極細タバコを吸ってる光の指が、いつもより艶っぽく見えた。
「沙織のこと……凄く、好きだったんだけどさ。好きになればなるほど、苦しくて。
沙織はいいとこのお嬢さんで、東京に来ることは許してもらえなかった。会えないとなんか不安ばっかり募っちゃって。
沙織ね、今度お見合いするんだって。親の決めた相手と結婚するとか、時代錯誤だよね。でも私、『結婚しないで』なんて、言えなかった。沙織が同性である私と遠距離で辛い恋愛するよりも、身近で支えてくれる人との方が幸せになれるんじゃないかって思って」
「でも、沙織はその人を好きなわけじゃないんでしょ?」
そんなの、沙織が幸せに思うはずない。
光がフッと寂しげに息を吐いた。吸ってもらえないタバコの先から灰が零れて、黒いテーブルの上に落ちた。
「沙織から、別れようって言ってきたの。もう、疲れたって。
家族や友達から隠れてこそこそすることに。離れていてなかなか会えない寂しさに。行き場のない、この関係に。
家族や友達に堂々と紹介できて、後ろめたい思いをしない付き合いをしたいんだって言われた。それに、子供も産みたいからって……」
光にかける慰めの言葉が見つからなかった。光以上に、沙織の言葉に私はショックを受けていたのかもしれない。
同性と付き合うってことがどういうことなのか、私は全然分かっていなかった。
初めて、あの時のやよいの言葉が分かった。
『先輩は……同性を好きになるっていうことが、どれ程の覚悟がいることなのか全然分かっていません。
それに私は、先輩をこちらの世界に引き摺り込もうなんて思っていませんから』
あの時のやよいの真意を、私は理解してなかった。
同性同士の恋愛にどんな弊害があるのかなんて、考えもしなかった。好きになれば、その感情に従って付き合えばいいんじゃんなんて、軽く考えてた。
女性同士付き合うってことは、家族や友達、世間からそれを隠して生きていかなくてはいけない。もしカミングアウトするなら、その責任をすべて自分で背負って生きていかなくてはならないんだ。
法律的に認められていないから結婚することもできず、子供を産むことも出来ない。もし、相手に何か会った時には家族でない自分は、死に際に会うことも許されないかもしれないんだ。
それが……同性と付き合う覚悟、 なんだ。
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