上 下
148 / 156

139.確かめ合う絆ー1

しおりを挟む
「ステファン、愛してます」

 言葉にせずとも分かっているだろうが、溢れ出した感情が止められなくて、言わずにはいられなかった。

 今度は、ステファンから唇が寄せられる。

「サラ、愛しています」

 レンズ越しに甘く蕩けるような笑みを見せられ、サラは泣きたい気持ちになった。

「眼鏡を、外してもいいですか?」

 小さく尋ねると、ステファンは黙って頷いた。

 以前ステファンが言っていた、私以外の人に眼鏡を外してもらったことがないというあの言葉……あれは今でも、有効でしょうか。

 震える指先でフレームに触れたサラの頬を、ステファンが優しく撫でる。

「これは、貴女だけの特権ですよ」

 眼鏡を外したステファンのライトグレーの瞳が欲情を灯して、サラを映し出す。

 瞳を潤ませ、頬を染める自分の表情に、あぁ……私はやっぱりこの人が好きなのだと、改めて自覚させられる。

 この美しく魅力的な瞳に、私は何度映り込んだのでしょう。
 これから、幾度も映して欲しい。

 ずっとずっと、見つめていて欲しい……

 ゆっくり、ゆっくりと寄せられる美麗なステファンの顔に、サラの心臓が煩いぐらいに騒ぎ出し、壊れてしまいそうに苦しくなる。大切に重ねられた唇から、互いの温度が流れ込む。

 ステファンの舌先がサラの唇をじっくりと味わうように、丁寧に輪郭に沿ってなぞる。

「ッフ……」

 小さく震えるサラの肩をステファンが優しく抱き、艶やかなリップ音と共に軽く唇を吸った。

 一気に焚き付けられるのではなく、躰の奥底深くから、じんわりと熱が上がっていくのをサラは感じた。もっと求めて欲しいと、求めてしまう。

 サラは、ステファンの背中に腕を回した。

 互いの吐息が、互いの舌が、絡み合う。唇も、舌も、躰も、胸も、心も離れないように……寄り添って、重なって、絡まり合う。

 高まっていく感情と、昂ぶる欲情が、二人を絶頂の幸福へと押し上げていく。

 ただ互いの存在を感じるだけで、気持ち良い。
 幸せで、切なくて、涙が自然と込み上げてくる。

 ステファンが、濡れた声でサラに囁く。

「サラ、貴女の全てを愛したい……」

 ステファンの逞しい腕で支えられ、サラの躰がソファベッドの上に横たえられる。

 艶めかしい息を吐き、膝立ちになったステファンがシャツのボタンに指を掛け、ひとつずつ外していく。この胸にこれから抱かれるのだと思うと、息もできないほどサラの胸が苦しくなる。それなのに、瞳を逸らすことが出来なかった。

 筋肉の隆起した美しい躰は芸術的なのに、それは生々しい艶めかしさも感じさせた。

「美しい私の人……」

 官能的なステファンの声音に、甘美な彼の言葉に……陶酔する。それは肌をざわめかせ、毛穴の隅々にまで行き渡り、潤いを与えてくれる。

 忘れかけていた女としての悦びを、再び呼び起こさせる。

 ステファンの唇が頬に寄せられ、それからうなじに口づけられる。ピクッと震えるサラの頭に、今度は口づけが降ってきた。

「背中を向いて下さい」

 背中を向けたサラの首筋に唇が寄せられ、ステファンの細く長い指がファスナーを摘み、下へ下ろしていく。その感触にゾクゾクと震えて仰け反ったサラの背中にも、口づけが落とされた。

「ッァア」

 ドレスが肩から外され、さらにパックリと開いた背中を愛でるように、唇が何度も触れる。その度にサラは背中を反らし、幾度も訪れる震えと快感に翻弄された。

 ゆっくりと焦らすようにドレスが脱がされ、ベッドの下に落とされる。それから何度もストッキングを上から撫でられながら、少しずつ下ろされていった。

 長く愛して欲しい。
 でも、早く全てが欲しい。

 そんな気持ちが、サラの中に入り乱れる。

 背中越しにベルトが外される音が聞こえ、緊張と高まりでドクドクと鼓膜にまで脈動が伝わって来る。スラックスを下ろす衣擦れの音に、サラは躰を捻って愛しい人を見上げた。

 逞しい躰と筋肉の流麗な線が視線に映り込み、その下の黒いボクサーパンツの中心の盛り上がりに、下腹部が熱くなり、ジンジンと疼きを覚える。

 両手を伸ばすとステファンが微笑み、サラの指の間に指を差し入れて握り、ベッドに繋ぎ止める。甘い捕縛に、躰の芯が痺れていく。

「キス、して下さい」

 甘えるように、サラは囁いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

Catch hold of your Love

天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。 決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。 当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。 なぜだ!? あの美しいオジョーサマは、どーするの!? ※2016年01月08日 完結済。

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

処理中です...