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93.狂気に染まる愛

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「私には、調律もピアノも必要ありません。
 サラ、貴女が私のピアノです」

 ステファンは大きくサラの脚を開脚させると、その中心に顔を埋めた。溢れる愛蜜を吸い上げ、敏感になっている花芯を口に含み、舌で愛撫する。

「ッハァァァ!!」

 快感に抗えないこの躰が、恨めしい。どれだけ心が拒否しても、躰は快楽を求めてしまう……

 ステファンの指が再び挿入され、ジュポッジュポッと激しく掻き混ぜながら抽挿する。そこは白く泡立ち、ねっとりと糸を引いていた。サラの濃度を増した濃い愛蜜が鍵盤の上に滴り、隙間を伝い、下部へと浸透していく。

「ッグゃ……ハッ……ゃ、め……」

 弱々しいサラの声は、淫らな水音に掻き消される。

 ステファンが立ち上がった。彼の下半身の中心には熱り立つ猛りが、聳え立っている。

「さぁ、貴女の調べを聴かせて下さい」

 サラの膝裏を掬って抱えると、その蜜穴目掛けて一気に雄杭を串刺しにした。

「っはぁあああ!!」

 ステファンは先程ピアノを弾いていた時のように、激しく感情のままにサラを弾いた。鍵盤の上のサラはステファンの律動で躰全体を揺さぶられ、その度に妖しい音が耳障りに響く。

「ハッ、ハッ、ハァァァッ!!」

 あまりにも荒々しいその交わりに、サラは呼吸を繋ぐだけで精一杯だった。見上げるステファンの瞳は、狂気の色に染まっていた。

 激しいピストンが繰り返されるうち、サラの押し付けられた背中の皮が擦れて捲れ、ジンジンとした痛みが疼く。

 けれど、サラの本当の痛みは躰の外側ではなく、内側にあった。ステファンをこれほどまでの狂気に追い込んでしまったという痛みに、慟哭していた。激しく揺さぶられながら、涙が止まらない。

 ステファンはサラのそんな表情を見つめながらも、尚も激しく躰を揺さぶった。

「ハァッ、もっと。もっと、ハァッハァッ……激、しく……ッハァ」

 鍵盤から溢れる不協和音が、二人の律動に共鳴して響き続ける。



 今、ふたりは
 ーー悪魔の闇に、完全に捕らわれた。



 ステファンが、絶頂に向かって激しく力強くサラの股間を打ち鳴らす。サラは再奥を突かれ、泣きながら声を上げ、絶頂に達した。

 程なく、ステファンが猛りを蜜穴から引き抜く。暴発した白濁は、サラの柔肌だけでなく、ピアノの鍵盤にも掛かるように思い切り撒き散らされた。

 サラはぐったりと力は抜けていたものの、我が目を疑う光景を目の前にし、頭の芯は絶望で冷え冷えとしていた。

 こ、んな……こんなこと、ステファンが……する、なんて。
 どう、して……

「ッゥ……ウヴッ……ッグゥゥ」

 狂気に染まっていようとも、もうどこにも行き着く先など見えなくとも……この愛を、止めることなど出来ない。
 二人で、底のない暗闇の深淵へ墜ちていくだけ……
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