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64.羞恥という名の快楽ー1

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 ホテルの部屋の扉を開け、電気のスイッチを入れようとしたサラの手を上から包み込むようにしてステファンが遮った。

「今夜は、このままで。十分に明るいですので」

 未だにあちこちから打ち上げられる花火が星空の代わりに夜空を瞬かせ、ガラス窓を通して爆竹や車のクラクションの音がくぐもって聞こえてくる。

「はい……」

 素直に頷いたサラの足元に、ステファンが片膝立ちでひざまずく。

 それは、昼間に見せた誓いの場面を彷彿させ、胸のときめきが再び蘇る。

「ずっと踊っていて、足が疲れたでしょう?」

 サラの足から、ステファンがダンスシューズをそっと脱がせる。指先が踵に入り込み、爪先へと滑らせる動きにゾクゾクと粟立ちが起こる。

「ッハァ……」

 漏れた声にカーッと顔が熱くなり、サラは唇を噛み締めた。足の甲を優しく撫でられ、猫のように悩ましげに背中が撓り、胸が震えて下半身が熱くなる。

 期待が、高まっていく……

 花火の閃光がステファンの俯く美麗な顔にチカチカと陰影を作り、その美しさと妖しさにサラの躰の奥底から欲情の蜜が溢れ出してくる。

「プリンセス、お手を……」

 今すぐにでも押し倒して蹂躙したい気持ちを抑え込み、ステファンはあくまでも優雅に手を差し伸べた。サラが軽く手を添えるとステファンは優美な所作で立ち上がり、テラスへと案内する。

 磨き上げられたガラス窓からは、先程よりも更に鮮やかに花火が映し出されていた。
 
「ハァ……素敵」

 溜息と共に、吸い込まれるようにうっとりと新年の喜びに沸き返るライトアップされた街並みや花火を眺めるサラ。少女のようでいて、色香漂う成熟した女性のような、危うさを感じさせるその表情が、ステファンの欲情を焚きつける。

 夢中になって花火を見つめるサラをステファンは後ろから柔らかく抱き締め、唇をうなじから耳へと寄せた。

「ぁ、ステファ……ッハァ……」
「サラ……」

 ピクン、と耳を震わせたサラに誘われるように、ステファンは耳朶の襞をじっくりと舌でなぞり上げた。ビクビクと震える上半身を左腕でしっかりと支え、右手の指先を純白のドレスの背中のファスナーに掛ける。

 ぇ、ここで!?

「ゃ。だめ、です……」

 サラは抵抗したものの、弱々しいその声はステファンにとって肯定の言葉に等しい。

「覚悟して下さい、と言ったはずですが?」
「で、ですが誰かに見られたら……」

 サラはカーテンのない開放的なガラス窓に向かって、自分とステファンとの秘事が露見されることを恐れた。

「テラスは広いですし、ここまでの高さの建物は周囲にはあまりありません。
 しかも今日は新年で街は賑わい、ホテルの部屋の一角で行われていることなどに関心を示す者など誰もいませんから」
「で、でですが……」

 まだ躊躇いを見せる美姫に、ステファンはドレスのファスナーを下ろした。

「あっ!!」
「貴女の素肌を晒すようなことは致しませんので、心配なさらず……」

 ステファンの舌先がねっとりと耳朶の輪郭を丁寧になぞり、複雑な襞の突起を刺激しながら耳孔へと侵入する。

「あ、ぁぁぁ……」

 サラが背中を反らせ、白い喉元が露わになるとステファンがそこへ口づけを落とす。サラは切なく震えながら、ますます首を反らした。

 再び耳孔へとステファンの舌先がのめり込み、水音をたてながらサラの官能を擽る。

「ンンッフゥッ……」

 サラの躰が快感に震える度に、甘い蜜を張り巡らせる。水音が耳の奥へと響く度に、疼きがズクズクと込み上がってくる。

 ……こ、んな……ところで……恥ずか、しいです……

 そう思えば思うほど、秘部からは蜜が止めどなく溢れ出す。鼻腔から甘い吐息を零し、斜め上を見上げるサラの欲情に濡れた瞳をステファンの美しい獣の瞳が捕らえる。

 あぁ、その瞳。

 囚われたら、逃げることなど決して出来ない。
 抗うことなど、許されないのですね……
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