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50.父からの電話
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幸せな温もりに包まれたまま意識がすっと浮上し、素晴らしい心地でサラは目が覚めた。瞳を開けると、そこにはステファンの顔があり、愛しさの滲み出た瞳の奥のライトグレーの光に引き寄せられる。
「お目覚めですか、プリンセス?」
「お、はようございます……」
寝顔をずっと見られていたのかと思うと羞恥心に襲われ、少し顔を俯かせたサラの頭を優しく撫で、ステファンはそっと口づけた。
「すみません。昨日は心地よくて、自分でも知らない間に寝てしまいました。
あんなに深く眠ったのは、初めてです」
サラはステファンの言葉を聞いて、心の奥底からほんわりと温かくなるのを感じた。
「ステファンの寝顔、初めて見ました。とても……嬉しかったです」
「……どんな顔をして寝ていましたか」
「ふふっ、安心しきった穏やかな表情でした。
……怒らないで下さいね? 可愛らしかったです……」
サラが上目遣いにそう言うと、ステファンの頬が僅かに上気した。
だがそれはほんの一瞬で、その後ステファンの目がすっと細められた。
「サラの寝顔もいつ見ても可愛いですよ。昨日も、ぐっすり眠っていましたね」
「え? ……あっ!!」
そこでようやくサラは、いつの間にかカウチからベッドへと移動させられ、しかもドレスまで丁寧に脱がされていたことに気付いた。
い、いつの間に!
もっと無防備なステファンを見せて欲しいですのに……私では、頼りないのでしょうか。
落ち込んでいるサラの額に、ステファンの口づけが落とされた。
「私はサラの寝顔を見ている時、幸せな気持ちに満たされるのですから、そんな顔をしないで下さい」
「ステファン……」
あぁ、やっぱりダメです。どうしたって、私はステファンの策略通りに嵌ってしまいます。
そして、それが堪らなく心地よく感じてしまうのです……
見上げたサラの瞳がステファンのそれとぶつかり、お互い自然に唇を寄せ合う。
と、突然ステファンのスマホが鳴り、サラの躰がピクン、と跳ねた。
ステファンが手に取り、耳に当てる。
「おはようございます、兄様。
え、サラ……ですか? いいえ、私のところには来ていませんが……」
サラの顔が青ざめた。
もしかして、お父様。私の部屋にいらっしゃったの?
「心配ないですよ。きっと、散歩にでも出かけているのでしょう。
……いえ、部屋で待っていて下さい。下手に地理の分からないウィーンの街を歩き回ると兄様達の方が迷子になってしまいますので、私が探しに行ってきます。
……えぇ、まだ仕事までには時間があるので大丈夫ですよ。それでは、また」
電話を切ると、ステファンはふぅ……と息を吐いた。
「サラにクリスマスプレゼントを早く渡したくて部屋をノックしたそうなんですが、いくらノックしても出ないし、スマホも電源が入っていないので、私に連絡してきたそうです」
「そう、ですか……」
「兄様達が心配していますので、早く準備した方が良さそうですね」
サラは急いでシャワーを浴び、ステファンの用意してくれた服に着替えた。
ステファンと共に両親の部屋へ赴いて顔を見せ、朝の散歩をしていたことを告げると、ふたりは安堵したように大きく息を吐いた。
ステファンはこれから仕事に出かけなければならなかったが、後ほど合流し、夕食を一緒にとることになった。
「お目覚めですか、プリンセス?」
「お、はようございます……」
寝顔をずっと見られていたのかと思うと羞恥心に襲われ、少し顔を俯かせたサラの頭を優しく撫で、ステファンはそっと口づけた。
「すみません。昨日は心地よくて、自分でも知らない間に寝てしまいました。
あんなに深く眠ったのは、初めてです」
サラはステファンの言葉を聞いて、心の奥底からほんわりと温かくなるのを感じた。
「ステファンの寝顔、初めて見ました。とても……嬉しかったです」
「……どんな顔をして寝ていましたか」
「ふふっ、安心しきった穏やかな表情でした。
……怒らないで下さいね? 可愛らしかったです……」
サラが上目遣いにそう言うと、ステファンの頬が僅かに上気した。
だがそれはほんの一瞬で、その後ステファンの目がすっと細められた。
「サラの寝顔もいつ見ても可愛いですよ。昨日も、ぐっすり眠っていましたね」
「え? ……あっ!!」
そこでようやくサラは、いつの間にかカウチからベッドへと移動させられ、しかもドレスまで丁寧に脱がされていたことに気付いた。
い、いつの間に!
もっと無防備なステファンを見せて欲しいですのに……私では、頼りないのでしょうか。
落ち込んでいるサラの額に、ステファンの口づけが落とされた。
「私はサラの寝顔を見ている時、幸せな気持ちに満たされるのですから、そんな顔をしないで下さい」
「ステファン……」
あぁ、やっぱりダメです。どうしたって、私はステファンの策略通りに嵌ってしまいます。
そして、それが堪らなく心地よく感じてしまうのです……
見上げたサラの瞳がステファンのそれとぶつかり、お互い自然に唇を寄せ合う。
と、突然ステファンのスマホが鳴り、サラの躰がピクン、と跳ねた。
ステファンが手に取り、耳に当てる。
「おはようございます、兄様。
え、サラ……ですか? いいえ、私のところには来ていませんが……」
サラの顔が青ざめた。
もしかして、お父様。私の部屋にいらっしゃったの?
「心配ないですよ。きっと、散歩にでも出かけているのでしょう。
……いえ、部屋で待っていて下さい。下手に地理の分からないウィーンの街を歩き回ると兄様達の方が迷子になってしまいますので、私が探しに行ってきます。
……えぇ、まだ仕事までには時間があるので大丈夫ですよ。それでは、また」
電話を切ると、ステファンはふぅ……と息を吐いた。
「サラにクリスマスプレゼントを早く渡したくて部屋をノックしたそうなんですが、いくらノックしても出ないし、スマホも電源が入っていないので、私に連絡してきたそうです」
「そう、ですか……」
「兄様達が心配していますので、早く準備した方が良さそうですね」
サラは急いでシャワーを浴び、ステファンの用意してくれた服に着替えた。
ステファンと共に両親の部屋へ赴いて顔を見せ、朝の散歩をしていたことを告げると、ふたりは安堵したように大きく息を吐いた。
ステファンはこれから仕事に出かけなければならなかったが、後ほど合流し、夕食を一緒にとることになった。
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