492 / 498
486. 歓喜の渦の中で
しおりを挟む
義昭の心臓がバクンと飛び跳ねる。
いやっ、期待するな……ルイの名前は出していない。ルイじゃない可能性の方が、寧ろ高い。
でも、もし……もしも、ルイだったとしたら……
義昭は高鳴る鼓動を感じながら、周りをきょろきょろと見回した。暗いせいもあるが、皆一様に興奮しており、誰も義昭に気を止める者はいない。
義昭はポケットに手を入れ、手に収まるほどの小さなサイズのビデオカメラのグリップベルトに掌を差し込んだ。
セキュリティチェックの時に見つかるんじゃないかと思って心配したが、日本のビデオカメラは優秀だな。まさかポケットにビデオカメラが入ってるなんて、思われなかったみたいだ。
義昭は掌で隠すようにして、そっとビデオカメラを回し始めた。
ゆっくりとビデオカメラを持ち上げていく。人の頭を抜け、ステージへと照準を合わせる。それから、ズームをあげていく。
磔台の男を映していると、いきなり会場が
Woooooooo !!
という、大歓声に沸いた。
目の端に左から別の男が登場したのに気づき、カメラをそちらに向けた。
猫型のヴェネチアンマスクを被り、鼻から下のみが見えている。フリルのたっぷり入ったドレスシャツに細長いリボンタイを結び、ショートベストにテールコートを羽織り、ハーフ丈のパンツからはレザーのロングブーツが伸びている。
その姿をカメラに収めながら、義昭の心臓がバクンッと飛び跳ねた。
ルイ、だ……
類の手には、鞭が握られていた。一本鞭と呼ばれるグリップが短く、振る部分が長いタイプの鞭だ。
ゴシック衣装に猫型のヴェネチアンマスクを被り、長い鞭を手にする類は凛として、神々しく輝いていた。
義昭は、奥底から沸いてくる歓喜に胸を震わせた。
なんて、妖しくて美しいんだ……これこそ、僕が求めていた神。
あぁ、僕も……僕も、彼に甚振られたい! 詰られたい! 虐げられたい!!
周りの人々もまた、義昭と同じく興奮を昂らせているのが歓声から伝わってきた。それを感じ、義昭の全身の皮膚に鳥肌が立った。
今ここにいる全ての人間が、ルイを神と崇めている。
僕はその信者の1人として、ここへの参加を赦されたのだ。
会場の興奮が頂点に達しようとした時、類の手が柔らかく撓った。
鞭がまるで生きているかのようにふわりと宙に楕円を描いたかと思うと風を切り、床を鋭い音で叩きつける。
会場が、水を打ったように、一瞬で静まり返った。
義昭はゴクリと生唾を飲み込んだ。瞬きするのも躊躇われる。何一つ見逃さぬよう、義昭はビデオカメラを持つ手に力を込めた。
いやっ、期待するな……ルイの名前は出していない。ルイじゃない可能性の方が、寧ろ高い。
でも、もし……もしも、ルイだったとしたら……
義昭は高鳴る鼓動を感じながら、周りをきょろきょろと見回した。暗いせいもあるが、皆一様に興奮しており、誰も義昭に気を止める者はいない。
義昭はポケットに手を入れ、手に収まるほどの小さなサイズのビデオカメラのグリップベルトに掌を差し込んだ。
セキュリティチェックの時に見つかるんじゃないかと思って心配したが、日本のビデオカメラは優秀だな。まさかポケットにビデオカメラが入ってるなんて、思われなかったみたいだ。
義昭は掌で隠すようにして、そっとビデオカメラを回し始めた。
ゆっくりとビデオカメラを持ち上げていく。人の頭を抜け、ステージへと照準を合わせる。それから、ズームをあげていく。
磔台の男を映していると、いきなり会場が
Woooooooo !!
という、大歓声に沸いた。
目の端に左から別の男が登場したのに気づき、カメラをそちらに向けた。
猫型のヴェネチアンマスクを被り、鼻から下のみが見えている。フリルのたっぷり入ったドレスシャツに細長いリボンタイを結び、ショートベストにテールコートを羽織り、ハーフ丈のパンツからはレザーのロングブーツが伸びている。
その姿をカメラに収めながら、義昭の心臓がバクンッと飛び跳ねた。
ルイ、だ……
類の手には、鞭が握られていた。一本鞭と呼ばれるグリップが短く、振る部分が長いタイプの鞭だ。
ゴシック衣装に猫型のヴェネチアンマスクを被り、長い鞭を手にする類は凛として、神々しく輝いていた。
義昭は、奥底から沸いてくる歓喜に胸を震わせた。
なんて、妖しくて美しいんだ……これこそ、僕が求めていた神。
あぁ、僕も……僕も、彼に甚振られたい! 詰られたい! 虐げられたい!!
周りの人々もまた、義昭と同じく興奮を昂らせているのが歓声から伝わってきた。それを感じ、義昭の全身の皮膚に鳥肌が立った。
今ここにいる全ての人間が、ルイを神と崇めている。
僕はその信者の1人として、ここへの参加を赦されたのだ。
会場の興奮が頂点に達しようとした時、類の手が柔らかく撓った。
鞭がまるで生きているかのようにふわりと宙に楕円を描いたかと思うと風を切り、床を鋭い音で叩きつける。
会場が、水を打ったように、一瞬で静まり返った。
義昭はゴクリと生唾を飲み込んだ。瞬きするのも躊躇われる。何一つ見逃さぬよう、義昭はビデオカメラを持つ手に力を込めた。
0
お気に入りに追加
224
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる