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479.壮絶なご褒美

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 類が、義昭の目の前にお茶を置いた。

「はい、ヨシ」
「ありがとう。悪いな、わざわざ」

 義昭が見上げると、類が先ほどと同じ貼り付けたような笑みを見せる。その仮面の下で、どれほどの自分への憎悪が渦巻いているのかと思うと、義昭の下半身の中心がドクッと疼いた。

「どういたしまして。僕、これからシャワー浴びてくるね」
「あぁ」

 類が立ち去った後、義昭は彼が入れてくれたお茶を見つめた。類が何かを用意してくれる時は、絶対に何かあると分かっている。

 それを、期待している自分がいる。

 よし、飲むぞ……

 喉をゴクリと鳴らし、一気にお茶を喉に流し込む。

「ゴホッ、ゴホッ……」

 あ、熱っっ!!

 味は普通だったが、粉が混ぜられているようだった。

 まさか……死ぬことは、ないよな。

 冷や汗が額から滲み出る。

 ル、ルイに殺されるなら、本望だ。

 そう自分に答え、何か起こるのを待ってみても変化はなかった。

 誰もいないダイニングルームにずっと座っているわけにもいかず、義昭は自室へと上がって行った。

 自室に戻った義昭は、しばらく経ってからお腹の張りとシクシクした痛みを覚えた。 

 なんか、腹の調子がおかしいな。

 そう思った途端、物凄く高い位置の高傾斜の頂上からジェットコースターで一気に急降下したかのような感覚に陥った。

「ウゥッ!! ッハァ、ハァッ、ハァッ……」

 は、腹が……ッッ……もの、凄く……痛いッッグ。

 痛みが急激に増していき、冷や汗がドッと吹き出し、背筋に寒気が走り、ドクドクと心臓が高まっていく。強烈な排泄欲が襲い掛かる。

 と、トイレ……ッッ!!

 慌ててトイレに駆け込み、ガクガク震えながらトイレに座ると、鉄砲水のような勢いで数回に分けて排泄した。穴がヒリヒリし、トイレットペーパーの柔らかな感触でさえ、凶器だった。

 だが、それでも一向に腹の痛みが収まらない。
 
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……ハァッ、ハァッ」

 今の排泄で全ての体力を使い切った義昭はトイレの床に寝転がり、襲い来る激しい波をなんとかやり過ごした。

 お腹がぐるんぐるんと大きな渦を巻いて暴れ回りながら、突発的にドーン、ドーン、と爆発しているような痛みに襲われる。手と足の指先が急激に冷えていき、震えが止まらない。腰をくの字に曲げて痛みを逃そうとしても、痛みは増すばかりだ。

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ……」




 あぁ、これが罰……
 ルイのチョコケーキを食べた、罰……ハァッ、ハァッ……



 だが、あまりの激痛に類の『ご褒美』を味わう余裕などない。

 血の気が引いていき、貧血を起こしているかのように頭がガンガンと痛くなる。キューウとお腹が縮こまるような音の後、グルグルグルグル……と鳴り、危険を感じて下の穴を必死で締め上げる。

「ッグ!! ッンンッ……ハァッ、ハァッ……」

 視界までもがぐるぐる回ってくる。グワングワンと耳鳴りがして、一気に気持ち悪さが増してくる。

 薬、薬だ……ッッはや、く……薬を、飲まないと。

 視界が歪む中、震える腕を伸ばしてトイレの扉を開け、1階のリビングへと匍匐前進で這いながら進む。常備してある救急箱に、下痢止めの薬があるはずだ。

「ッック……ゥグッ、ハァッ、ハァッ」

 もう、腕を進める力がない。また、強烈な排泄欲が湧き上がってきた。トイレに戻ろうか迷いながらも、下痢止めを飲まなければこの痛みはずっと収まることはない。

 だ。ダメだ……辿り着けそうに、ない。
 トイレに戻っても……立ち上がって座る体力が、ない。もう、ムリだ……

 歪んだ視界の中に、美羽の部屋が映った。
 


 美羽、美羽……薬。薬、を……頼む……



 義昭は僅かに残った力を振り絞り、匍匐前進でズリズリと美羽の部屋へと迫っていった。なんとか部屋の前まで辿り着くと、弱々しく扉をノックする。

「ぅ……うぅ……美、羽ぅぅぅ」
 
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