【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

文字の大きさ
上 下
481 / 498

475.義昭の本質

しおりを挟む
 チョコレートケーキを食べている途中の最高のタイミングで、車が駐車場に入ってくる音が聞こえてきた。

 義昭の胸が、最高潮に高鳴る。心臓がキューーッときつく締め付けられ、痛くて……快感に震える。

 車のエンジン音がやみ、しばらくして玄関の鍵が開けられる音がした。

 もうすぐ、もうすぐだ……

 義昭は、口の端にわざとチョコクリームをつけた。

 リビングの扉が開けられる。

「おかえり」

 とびきりの笑顔で迎えた。

 ダイニングテーブルに座り、チョコケーキに食らいつく義昭を見て、美羽は予想通りの反応を見せた。背後にいた類が、短く呻き声を漏らす。

「よ……義昭、さんっ……そ、それっっ」

 用意していた答えを、口にした。

「これ、美羽が作ってくれたんだな。ありがとう」

 ニヘラと笑うと、美羽はゾクリと躰を震わせた。

 このチョコレートケーキ、せっかくルイのために作って渡そうと用意してたのに、な。
 僕が、憎いだろう? あぁ、感じるよ……君の憤りを。憎しみを。怒りを。悲しみを……

「今までバレンタインなんて何もなかったのに、こんなことしてくれるなんて……嬉しいよ」

 だってこれは、僕のためのものじゃない。ルイにあげたかったんだもんな?
 
 美羽の顔がますます青褪めた。

「そ、う……よかっ、た。わた、し……シャワー、浴びてくる」

 リビングを飛び出す美羽に、類が「ミュー!!」と必死に呼びかけた。類の切ない声に、義昭の胸がギュッときつく絞られる。

 あぁっっ、僕はなんてことをしてしまったんだ! ふたりは今夜、ようやく長年の想いを遂げられるかもしれなかったのに。僕は、ふたりの艶かしい場面を、見られるかも、聞けるかもしれなかったのに!!



「っざけんな……」



 押し殺した怒りの呟きが類の口から小さく漏れ、義昭の全身に稲妻に打たれたような戦慄が走る。

 あハァ……これ、だ。ハァッ、ハァッ……堪らない!! そうだ、僕が求めてるのはこれだ。ルイが、ルイが僕を、こんな僕のことを、強く感じている。強い憎しみをぶつけてくれている!
 さぁ、ハァッ早く……早く、お仕置きしてくれ。イケナイ僕を、君を貶めてしまった僕を、痛めつけてくれっっ!!

 次の瞬間、類は義昭に貼り付けたような笑みを見せた。



「ヨシ、チョコケーキ食べてたら喉乾かない? 
 お茶でも入れようか?」



 義昭は、喉仏を大きく上下させた。

「あ、ぁあ……いいな」

 ハァッ……ルイ、待っていたよ。さぁ、どんなを、僕にくれるんだ?

 キッチンでお茶の準備をする類を横目にし、恐ろしくて堪らないのに、同時に目がクラクラするほどの興奮に包まれる。

 類の態度を見て、義昭は確信した。

 類は美羽がバレンタインのためにチョコレートケーキを用意していたことを知っていた。そして、期待していたのだ。

 義昭が邪魔したことで、美羽と類が結ばれる道が遠ざかってしまったかもしれない。美羽の類に告白する覚悟を、大きく挫いてしまったかもしれない。

 先ほどの、ショックを受けた美羽の顔が義昭の脳裏に蘇る。

 こんなことをしていたら、いつか僕は美羽に離婚され、捨てられてしまうんんじゃないか。ルイとふたり、手を取り合い、どこか遠くへ行ってしまうんじゃないだろうか……

 そう思うと、怖くて仕方ないのに……嫌われる言動をして自分を甚振ることに、堪らなく快感を覚えてしまう。自分でも厄介だと分かっているのに、止められない……

 美羽が世間体のために、僕との離婚に踏み切れないことは分かってる。だが、そのハードルを超えてしまったら……僕は、どうなるんだろう。

 義昭はブルッと身を震わせた。



 母さんに、思われてしまうのだろうか。
 僕はやっぱり……ゲイだったのだと。不完全な、人間だったのだと。

 母さんは、何も僕を分かっていない。僕の本質を、理解してなどいないのに。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

処理中です...