456 / 498
450.類の嫉妬
しおりを挟む
「美羽、もう帰っていいぞ」
「はい」
隼斗にカウンター越しに声をかけられ、美羽は息を吐き出した。
つ、疲れた……
ディナータイムでは厨房が4人、ホールが3人いたので仕事的にはスムーズだったが、龍也がいることを意識しすぎてしまい、精神的に疲れてしまった。
上がり作業に取り掛かろうとすると、背中越しに隼斗の声が聞こえてきた。
「類、お前も上がれ。浩平と龍也に上がり作業してもらうから、美羽を送ってやってくれないか」
「はーい」
帰りは、類とふたりで帰れる……
香織に罪悪感を抱きつつも、嬉しく思ってしまう気持ちは止められない。
「美羽、おつかれ」
「美羽たん、おつかれたーん」
「お先です」
香織と萌に声をかけられ、カウンター越しに隼斗と龍也にも挨拶する。
「お先に失礼します」
「おぉ」
「お疲れさん。また明日な」
龍也にじっと見つめられ、落ち着かない気持ちでフロアを去った。
助手席のドアを閉めると、今まで張り詰めていた緊張が一気に解けていく。
「フフッ、疲れた?」
類に笑みを溢され、美羽は少し顔を赤らめた。
「う、ん……類は今日、どうだった? 龍也さんと、うまくやれそう?」
「あの人、好きじゃないけど、仕事はできるから楽」
車を発進させながら、類が答える。
類、龍也さんのこと好きじゃないんだ。
確かに、あまり気が合いそうな感じはしないけど……
「だって、僕の知らないミューを知ってるんだよ。気分いいわけないじゃん」
類が唇を尖らせる。龍也を好きじゃない理由が、嫉妬からだと知って、美羽の頬が緩んだ。
「ねぇ、あいつとはどんな関係だったの?」
「どんなって……ただの、昔の同僚だよ」
「ほんとに? 言い寄られたりしてない?」
「するわけないよ!」
美羽は強く否定した。
それどころか、嫌味言われたり、からかわれたりして、嫌われてるのかもって思ったぐらいなのに。あとで、それは龍也さんの性格なんだって分かったけど。
「私は龍也さんとはあまり関わらなかったし、龍也さんは、いつも隼斗兄さんと絵麻さんと一緒にいたから」
「絵麻って?」
そっか、類は絵麻さんのこと知らないんだ。
「隼斗兄さんが、以前付き合ってた彼女。すごく綺麗で、頼り甲斐があって、面倒見がよくて……お姉さんみたいに思ってたの」
「へぇ、あの人彼女いたんだ」
「うん。とてもお似合いで、憧れのカップルだったのに……別れちゃうなんて思わなかった」
ほんとに、どうしてふたりは……
そう考えていると、類にムニと軽く頬を摘まれた。
「僕といる時に、他の男のこと考えないで」
「なっ。類が、聞いてきたんじゃない。それに、他の男って……隼斗兄さんだよ?」
それに、考えてたのは隼斗兄さんじゃなくて、絵麻さんのことなのに。
「知ってる」
「それに、絵麻さんと付き合ってたって言ったじゃない」
「うん、聞いた。でも、それは昔の話で、今はもう別れてるんでしょ」
「……」
類はまだ、私が隼斗兄さんとホテルで一夜を過ごした時のことを引き摺ってるのかな。私たちに、何かあるはずないのに。
類の嫉妬を感じて嬉しく思う反面、今日の類の言動を思い出して美羽は憤りを感じた。
そんなの、矛盾してる。
「類、なんて……みんなの前で、『僕の彼女に手ぇ出さないでもらえます?』って言ったくせに」
香織の名前を出したくなくて、そんな言い方をした。
横から見る類の表情が、サッと固くなった。急にハンドルを切り、美羽の躰が大きく右に揺さぶられる。
「ッッ……類!?」
「はい」
隼斗にカウンター越しに声をかけられ、美羽は息を吐き出した。
つ、疲れた……
ディナータイムでは厨房が4人、ホールが3人いたので仕事的にはスムーズだったが、龍也がいることを意識しすぎてしまい、精神的に疲れてしまった。
上がり作業に取り掛かろうとすると、背中越しに隼斗の声が聞こえてきた。
「類、お前も上がれ。浩平と龍也に上がり作業してもらうから、美羽を送ってやってくれないか」
「はーい」
帰りは、類とふたりで帰れる……
香織に罪悪感を抱きつつも、嬉しく思ってしまう気持ちは止められない。
「美羽、おつかれ」
「美羽たん、おつかれたーん」
「お先です」
香織と萌に声をかけられ、カウンター越しに隼斗と龍也にも挨拶する。
「お先に失礼します」
「おぉ」
「お疲れさん。また明日な」
龍也にじっと見つめられ、落ち着かない気持ちでフロアを去った。
助手席のドアを閉めると、今まで張り詰めていた緊張が一気に解けていく。
「フフッ、疲れた?」
類に笑みを溢され、美羽は少し顔を赤らめた。
「う、ん……類は今日、どうだった? 龍也さんと、うまくやれそう?」
「あの人、好きじゃないけど、仕事はできるから楽」
車を発進させながら、類が答える。
類、龍也さんのこと好きじゃないんだ。
確かに、あまり気が合いそうな感じはしないけど……
「だって、僕の知らないミューを知ってるんだよ。気分いいわけないじゃん」
類が唇を尖らせる。龍也を好きじゃない理由が、嫉妬からだと知って、美羽の頬が緩んだ。
「ねぇ、あいつとはどんな関係だったの?」
「どんなって……ただの、昔の同僚だよ」
「ほんとに? 言い寄られたりしてない?」
「するわけないよ!」
美羽は強く否定した。
それどころか、嫌味言われたり、からかわれたりして、嫌われてるのかもって思ったぐらいなのに。あとで、それは龍也さんの性格なんだって分かったけど。
「私は龍也さんとはあまり関わらなかったし、龍也さんは、いつも隼斗兄さんと絵麻さんと一緒にいたから」
「絵麻って?」
そっか、類は絵麻さんのこと知らないんだ。
「隼斗兄さんが、以前付き合ってた彼女。すごく綺麗で、頼り甲斐があって、面倒見がよくて……お姉さんみたいに思ってたの」
「へぇ、あの人彼女いたんだ」
「うん。とてもお似合いで、憧れのカップルだったのに……別れちゃうなんて思わなかった」
ほんとに、どうしてふたりは……
そう考えていると、類にムニと軽く頬を摘まれた。
「僕といる時に、他の男のこと考えないで」
「なっ。類が、聞いてきたんじゃない。それに、他の男って……隼斗兄さんだよ?」
それに、考えてたのは隼斗兄さんじゃなくて、絵麻さんのことなのに。
「知ってる」
「それに、絵麻さんと付き合ってたって言ったじゃない」
「うん、聞いた。でも、それは昔の話で、今はもう別れてるんでしょ」
「……」
類はまだ、私が隼斗兄さんとホテルで一夜を過ごした時のことを引き摺ってるのかな。私たちに、何かあるはずないのに。
類の嫉妬を感じて嬉しく思う反面、今日の類の言動を思い出して美羽は憤りを感じた。
そんなの、矛盾してる。
「類、なんて……みんなの前で、『僕の彼女に手ぇ出さないでもらえます?』って言ったくせに」
香織の名前を出したくなくて、そんな言い方をした。
横から見る類の表情が、サッと固くなった。急にハンドルを切り、美羽の躰が大きく右に揺さぶられる。
「ッッ……類!?」
0
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる