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432.秘密の愛人

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「ねぇ、本気なの?」
「何言ってるの。もう約束したもん。
 ほら、行くよ」

 類に促されて、美羽は渋々出かける準備をした。これから、義昭と待ち合わせしている店へと向かうのだ。

 あの後、類が義昭に連絡して今日は3人で外食をしようと提案し、義昭が仕事が終わる時間に合わせて、類が指定した店で食事することとなった。

「類、まさか義昭さんに……」

 私たちのこと、話すつもり?

「そんなわけないでしょ。だってそんなの、ミューが望まないじゃない」
「そう、だけど……」
「今までの関係を、壊したくないんでしょ?」

 今までの関係なんて……とっくに壊れている。壊れているのに、まともであるかのように取り繕っているだけ。

 それでも、私は……

「分かってるよ、ミュー」

 類が、美羽の手を繋いだ。 

「類」
「ヨシはミューの夫で、僕は……ミューの弟」

 そう言ってから、美羽の手の甲に口づけた。



「それから、ミューの秘密の愛人……でしょ?」



 類の企みが潜んでいる気がしてならず、不安な気持ちに陥った。けれど、類の命令は絶対。

 ただ従っていれば、なにも考える必要なんてない。
 類は、私の支配者なんだから……
 
 インターホンが鳴り、ふたりは玄関へと向かった。

 扉を開けると、英国のトラッドスタイルを思わせるスーツを着たハイヤーの運転手が制帽を取り、深々と頭を下げた。

「お待たせ致しました」

 お酒を飲むことを想定し、類の車ではなく、ハイヤーを呼ぶことにしたのだ。

「どうぞ」

 運転手が、丁寧に手を添えて後部座席のドアを開けた。

「ありがとうございます」

 美羽が先に乗り込み、類が後に続く。ふたりが中に入ると、ウィーンという機械音がして、運転手席との仕切りが自動的に下りてきた。窓には遮光ステッカーが貼ってあり、外から車内を窺うことは出来なくなっている。

「さ、目的地に着くまで楽しもっか」
 
 類が、美羽の腰をグイと引き寄せた。

「で、でも……声が……」
「大丈夫。音は漏れないようになってる。それに、ここの運転手は客のプライバシーについて絶対に黙秘するよう教育されてるんだ」
「で、でも……」

 これから、義昭さんに会うのに……

 言いかけた言葉は、類の野獣の光を灯した瞳によって遮られた。



「ミュー。君が誰のものなのか、しっかりこの躰に覚えさせないとね」



「ミュー、おいで」

 類が両手を伸ばす。美羽はフルフルと首を横に振った。

 でき、ない……

「ミュー、来て。出来ないなら……分かる、よね?」

 甘い雰囲気を醸し出していた類の空気がピンと張り詰め、美羽は悟った。

 類は、本気だ……

 逃げられないと覚悟を決めた美羽は、ゆっくりと類の上に跨った。美羽のスカートが類の下半身を覆う。

「いいこ……」

 頭を撫でられ、後頭部に力が加わると唇と唇が重なる。口づけを交わしながら、類の手が美羽のショートジャケットのボタンを器用に外していく。美羽はそれを手伝うようにして肩と腕をくねらせてジャケットを脱いだ。

 カットソーの裾から彼の指が忍び込み、ブラジャーを引き下げられる。

「服、引き上げて」

 類の命令に従ってカットソーを引き上げると、隠すものを奪われた乳房が露わになっており、その卑猥さに恥ずかしくなって顔が熱くなる。

 車窓に時折流れ込んでくる街の外灯や信号の光が、自分たちを見つめているのではないかとビクビクしてしまう。

 そんな美羽の反応を愉しむように、類は悪戯な視線を投げかけてきた。

「ほら、もっと僕に近付かないと。舐めてあげられないよ?」
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