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431.類の提案
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まだ異物を入れられているような余韻をそこに感じ、現実が急激に迫ってきた。もう、取り返しがつかない。
「ッッ」
耐え切れないほどの罪悪感が、のしかかってくる。胃がキリキリと絞られ、息が次第に上がってくる。額から冷や汗がジワリジワリと湧いてきて、心臓が嫌な音をたてて急速にスピードを上げていく。
かおりんも、義昭さんも、お母さんも、お父さんも、隼斗兄さんも、デタントのみんなも、お客さんも、近所の人も……みんな、みんな欺いて……わたし、は……
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……ハッ、ハッ、ハッ」
美羽の異常事態に気付いた類の睫毛が震え、目を開けた。隣で過呼吸を起こしている美羽を抱き起こし、きつく抱き締める。
「ミュー、落ち着いて! 息を、息をゆっくり吐き出して。
何も、何も考えないで……罪に囚われちゃ、ダメだ!!」
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……」
「誰の命令で、僕たちはこうなったの?」
「ハッ、ハッ……ッッ」
「応えて!!」
類が必死に呼びかける。
「る、ぃ……ハァッ、ハァッ」
「そう、僕だ。僕なんだ!
ミューは、脅されてるだけ。そうでしょ?」
「ハァッ、ハァッ……脅、されて……ハァッ、ハァッ」
「そこに……そこに、ミューの意思なんて、ない!!」
「ハァッ、ハァッ……」
「全部、僕が悪いんだから……ック自分を、責めないで……ミューッッ!!」
美羽を抱き締める類の腕が、震えている。美羽の瞳から大粒の涙がポロリと零れ落ちた。
美羽の呼吸が安定しても、類はまだ美羽を抱き締めていた。
「寝ちゃってたね」
「うん……」
先ほどまでのことなどなかったかのように、類が話しかけた。
ふたりの間に、昨日まではなかった甘さが漂っている。今までのふたりとは違う空気が、そこに流れていた。
背徳を感じながらも、諦めに似た感情も湧き上がる。
終わりのない後悔という迷路に迷い込む前に、美羽は考えを放棄した。
何も考えなければ、心を持たなければ、傷つくことも、罪悪感に苛まれることもない。
今、何時だろ……
類の腕の中で躰を少し起こして目覚まし時計を確認すると、もう8時だった。
「いけないっ! 夕飯作らないと……」
義昭さん、9時には帰って来るはず。
美羽が起き上がろうとすると、類の腕で躰を引き寄せられた。
「しなくていい」
「で、も……」
背中から首筋に唇が当たり、ゾクッとする。また欲情を焚きつけられてしまう。
「僕に、提案があるんだ」
意味深な笑みを浮かべて、類が美羽の首筋を甘噛みした。
「ッッ」
耐え切れないほどの罪悪感が、のしかかってくる。胃がキリキリと絞られ、息が次第に上がってくる。額から冷や汗がジワリジワリと湧いてきて、心臓が嫌な音をたてて急速にスピードを上げていく。
かおりんも、義昭さんも、お母さんも、お父さんも、隼斗兄さんも、デタントのみんなも、お客さんも、近所の人も……みんな、みんな欺いて……わたし、は……
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……ハッ、ハッ、ハッ」
美羽の異常事態に気付いた類の睫毛が震え、目を開けた。隣で過呼吸を起こしている美羽を抱き起こし、きつく抱き締める。
「ミュー、落ち着いて! 息を、息をゆっくり吐き出して。
何も、何も考えないで……罪に囚われちゃ、ダメだ!!」
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……」
「誰の命令で、僕たちはこうなったの?」
「ハッ、ハッ……ッッ」
「応えて!!」
類が必死に呼びかける。
「る、ぃ……ハァッ、ハァッ」
「そう、僕だ。僕なんだ!
ミューは、脅されてるだけ。そうでしょ?」
「ハァッ、ハァッ……脅、されて……ハァッ、ハァッ」
「そこに……そこに、ミューの意思なんて、ない!!」
「ハァッ、ハァッ……」
「全部、僕が悪いんだから……ック自分を、責めないで……ミューッッ!!」
美羽を抱き締める類の腕が、震えている。美羽の瞳から大粒の涙がポロリと零れ落ちた。
美羽の呼吸が安定しても、類はまだ美羽を抱き締めていた。
「寝ちゃってたね」
「うん……」
先ほどまでのことなどなかったかのように、類が話しかけた。
ふたりの間に、昨日まではなかった甘さが漂っている。今までのふたりとは違う空気が、そこに流れていた。
背徳を感じながらも、諦めに似た感情も湧き上がる。
終わりのない後悔という迷路に迷い込む前に、美羽は考えを放棄した。
何も考えなければ、心を持たなければ、傷つくことも、罪悪感に苛まれることもない。
今、何時だろ……
類の腕の中で躰を少し起こして目覚まし時計を確認すると、もう8時だった。
「いけないっ! 夕飯作らないと……」
義昭さん、9時には帰って来るはず。
美羽が起き上がろうとすると、類の腕で躰を引き寄せられた。
「しなくていい」
「で、も……」
背中から首筋に唇が当たり、ゾクッとする。また欲情を焚きつけられてしまう。
「僕に、提案があるんだ」
意味深な笑みを浮かべて、類が美羽の首筋を甘噛みした。
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