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412.囁かれる愛の言葉

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 こんな下劣なことをする類に対して憎悪が湧き上がると共に、香織にも恨みが込み上がってきた。

 私が同じ屋根の下にいると、知ってるはずなのに……どう、して!?

 自分の存在を、全て否定された気持ちになった。

「ハァッ、ハァッ……ッグ! ンフ……」

 呼吸さえ許さない激しい口づけに、息が上がる。胸の尖りが硬くなり、下半身の奥がキュッと締まって熱くなる。

 だがそれは、かつて夜毎美羽に与えられた、艶かしく愛おしい口づけと同じ感触であっても、まるで異なるもの。



ーーこれは、類が香織に与えている口づけの感触なのだ。



 それが、美羽へと流れてきている。類から、伝わってくる。

 嫌。そんなの、感じたくない……
 感じさせないでっっ!!

 美羽の悲痛な願いは、届かない。口づけを与えられながら、首元からデコルテラインへと指の感触が這っていく、と……

「ック!」

 鎖骨を軽く噛まれ、白い顎がのけぞった。

 敏感な背筋のラインを触れるか触れないかの微妙なタッチでなぞられて、背中がゾクゾクする。美羽の性感帯だと知っているその指が、リズムを奏でるように、軽やかに上下に背筋を揺さぶってくる。

「ゥ……クゥゥゥッッ」

 枕をギュッと掴んで耐えようとするけれど、躰の熱が上がり、小刻みに震えてくる。震えが快感となって全身に広がっていく。

 涙目になりながら、美羽は唇をきつく噛み締めた。

 類、類っっ……お願い!
 お願い、だから……やめ、て……ッッ!!

 香織が類と視線を合わせ、会話をし、笑い合う姿に苦しんだ。類の帰りを不安な思いで待ち侘び、デートに出かけた日は四六時中ふたりのことが頭から離れなかった。

 それでも、これまでなんとか耐え忍んできた。

 類と香織は恋人となったのだ。行為に及ぶのなら、もう仕方ない。それは、美羽が類に選ばせたことでもあるのだから。

 けれど、自分の知らないところで、密かにしてほしい。勝手に、ふたりだけの世界で完結してほしい。

 そんな、微かな望みさえ、叶えてもらえない。



ーー類の残酷なゲームに、無理やり参加させられる。



『あぁ、可愛いよ』

 突然、類の声が美羽の頭に響いた。

 聞きたくない!!

 枕を頭から被っても、耳を塞いでも、どんなに遠く離れても意味がない。それは、直接美羽の心に響いてくるのだから。抗っても、抗えない。

 どうして、私は類と双子なの……
 こんな。こんな感覚、いらない。捨てたい!!

 幼い頃は、当たり前だと思っていた。成長するにつれ、いつも類を感じられて安心した。愛し合うようになってからは、より深い絆を感じられた。

 互いが特別な相手のだと、そう思えた。結ばれるべき、運命の恋人なのだと。

 今はもう……呪われた、鎖でしかなかった。

『好き、好きだよ……大好き。ハァッ』

 類の官能的な吐息が、鼓膜の奥に響いてこだまする。

 かつては、自分にかけられていた愛の言葉が、今は別の女性に囁かれている。親友である、香織に。

「ッッ……やめ……ッグ」

 脳髄がかっ切れるように熱くなり、胸の痛みがジンジンと増していく。

 胸の膨らみが包み込まれて温かくなる。尖りの周りを指でなぞられ、蜜奥がジュクジュクと溢れ出す。

「ンク!」

 先端を爪で弾かれて、繋がってるかのように膣奥が引き攣られてきつく締まった。紅くぷっくりと膨らんできた蕾をキュッときつく摘まれ、こよりのように捻られる。全身に電気が走り、愛蜜が内腿からシーツへとコプッと零れていく。

 いやっ!! 感じたくないっっ!!
 お願い、やめて……!!

 心で拒絶しても、躰が快楽で満たされていく。淫らな罠に堕とされていく。

 何度拒絶しようとしても、欲情に絡みとられてしまう。疼きに襲われ、呑み込まれ、ドクドクと脈を打つ花芽が鼓膜を揺さぶる。

『ハァッ、ハァッ、ハァッ……ほら、感じて』
「ウゥッ、ック……ゃ、嫌……ッグ……こ、んな……」

 香織が類の愛撫に喘えいでいる姿が頭に浮かんできて、熱い涙がじわり、じわりと溢れ出す。枕に染みが広がっていく。

 どんなに掻き消そうとしても、淫らに絡み合うふたりの姿が脳裏から離れてくれない。べったりとくっついたまま、剥がれない。

 全身が熱に侵されたように燃えている。蜜奥が同じ肉欲を孕んだ熱を求め、喘ぎ、蠢いている。熱杭を穿たれ、激しく打ち込まれ、最奥で滾る欲を放って欲しいと、乞うている。



 それを受け止めるのは、自分ではないのに。



 嫌……止めて。止めて、類……
 お願い、嫌っっ!!
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