417 / 498
411.受け入れたくない感触
しおりを挟む
また、定休日が来てしまった。最も長い、1日が。
義昭を見送ってから部屋に戻り、どこかへ行く気力もなく、美羽はベッドに横になっていた。
時計の秒針が、耳を騒つかせる。少しずつ空腹感が広がっていくのを感じつつ、起き上がれない。
あの日、類は帰りが遅い自分のことを心配して、誰と会っているのかと問い詰め、嫉妬に悩まされたはずなのに。
類は香織と別れることなく、今まで通り付き合いを続けている。
切ない吐息が落ちていく。
結局、私たちは双子……似た物同士、なんだよね。
私が類に仕返しして、類が更に仕返しして……負のループから、抜け出せない。
お互い、苦しむだけなのに。誰にとっても、いいことなんてないのに。傷つけ合わずにいられない。
どうして私たちは、こんな風にしか互いを愛せないの? 愛することを、やめられないの?
類は今日、かおりんとデートするのかな……
視界に入れなければ、声が聞こえなければ、家にいても外にいても同じだ。
そう思っていたはずなのに、玄関の扉が開いた音にビクッとする。
かおりんが、来たんだ。
ふたりの声は聞こえてこないのに、楽しそうな姿が、声が、表情が、脳裏に勝手に浮かび上がってくる。自身の想像に苦しめられる。
やめて!!
美羽は枕で頭を塞ぎ、俯せになった。
ふたりがこのまま家で過ごすなら、出て行きたい。けれど、起き上がる気力が湧いてこなかった。
このまま眠れたら、楽になれるのに……
ずっと、寝不足が続いている。
仕事への集中力も欠き、隼斗にまで注意されるありさまだ。
どこにいても、類と香織の方へと視線が向いてしまう。ふたりが会話を始めた途端、全神経が耳となり、全身が針のように硬くなる。泣き出したくて、叫びたくて、心が悲鳴をあげる。
苦しくて苦しくて……仕方ない。
「ウッ、ウッ……ッグ」
もぅ……嫌、だ。
美羽はマットレスに口を当て、声を押し殺して噎せいだ。
その時突然、誰かに頬を触れられたかのような違和感が走り、美羽は背筋を震わせた。
今、の……まさか!?
疑問が、やがて確信へと変わっていく。
顎の輪郭をツーっとなぞられる。温かくて柔らかく、しっとりと吸い付くような感触が唇に押し付けられる。
深い絶望と、これから自分の身に降りかかる恐怖に、全身が竦んだ。
それが、どこからきているのか……受け入れたく、ない。
振り払うように必死に枕に顔を押し付け、与えられた感触を消し去るため、何度も唇を強く擦りつける。
「ッグ」
けれど、その支配からは逃れられない。
唇を塞がれ、舌が入り込んでくる。熱く、ねっとりとした感触が、歯の1本1本を確かめるように伝っていき、歯の裏が、歯茎が、口内の粘膜が探られ、舐められ、甚振られる。
「ック! ハァ、ハァ……ッッ!!」
いくら頭で否定しても、躰が覚えている……この、感触を。与えられる、愛撫を。
類とキスをしている錯覚に、囚われていく。彼の熱が、吐息が、記憶を通じて伝わってくる。
蜜壺が微熱を帯び、情欲が掻き立てられ、厭らしい愛蜜が深奥からドクドクと産み出される。
やめ、やめて……類ぃぃっっ!!
義昭を見送ってから部屋に戻り、どこかへ行く気力もなく、美羽はベッドに横になっていた。
時計の秒針が、耳を騒つかせる。少しずつ空腹感が広がっていくのを感じつつ、起き上がれない。
あの日、類は帰りが遅い自分のことを心配して、誰と会っているのかと問い詰め、嫉妬に悩まされたはずなのに。
類は香織と別れることなく、今まで通り付き合いを続けている。
切ない吐息が落ちていく。
結局、私たちは双子……似た物同士、なんだよね。
私が類に仕返しして、類が更に仕返しして……負のループから、抜け出せない。
お互い、苦しむだけなのに。誰にとっても、いいことなんてないのに。傷つけ合わずにいられない。
どうして私たちは、こんな風にしか互いを愛せないの? 愛することを、やめられないの?
類は今日、かおりんとデートするのかな……
視界に入れなければ、声が聞こえなければ、家にいても外にいても同じだ。
そう思っていたはずなのに、玄関の扉が開いた音にビクッとする。
かおりんが、来たんだ。
ふたりの声は聞こえてこないのに、楽しそうな姿が、声が、表情が、脳裏に勝手に浮かび上がってくる。自身の想像に苦しめられる。
やめて!!
美羽は枕で頭を塞ぎ、俯せになった。
ふたりがこのまま家で過ごすなら、出て行きたい。けれど、起き上がる気力が湧いてこなかった。
このまま眠れたら、楽になれるのに……
ずっと、寝不足が続いている。
仕事への集中力も欠き、隼斗にまで注意されるありさまだ。
どこにいても、類と香織の方へと視線が向いてしまう。ふたりが会話を始めた途端、全神経が耳となり、全身が針のように硬くなる。泣き出したくて、叫びたくて、心が悲鳴をあげる。
苦しくて苦しくて……仕方ない。
「ウッ、ウッ……ッグ」
もぅ……嫌、だ。
美羽はマットレスに口を当て、声を押し殺して噎せいだ。
その時突然、誰かに頬を触れられたかのような違和感が走り、美羽は背筋を震わせた。
今、の……まさか!?
疑問が、やがて確信へと変わっていく。
顎の輪郭をツーっとなぞられる。温かくて柔らかく、しっとりと吸い付くような感触が唇に押し付けられる。
深い絶望と、これから自分の身に降りかかる恐怖に、全身が竦んだ。
それが、どこからきているのか……受け入れたく、ない。
振り払うように必死に枕に顔を押し付け、与えられた感触を消し去るため、何度も唇を強く擦りつける。
「ッグ」
けれど、その支配からは逃れられない。
唇を塞がれ、舌が入り込んでくる。熱く、ねっとりとした感触が、歯の1本1本を確かめるように伝っていき、歯の裏が、歯茎が、口内の粘膜が探られ、舐められ、甚振られる。
「ック! ハァ、ハァ……ッッ!!」
いくら頭で否定しても、躰が覚えている……この、感触を。与えられる、愛撫を。
類とキスをしている錯覚に、囚われていく。彼の熱が、吐息が、記憶を通じて伝わってくる。
蜜壺が微熱を帯び、情欲が掻き立てられ、厭らしい愛蜜が深奥からドクドクと産み出される。
やめ、やめて……類ぃぃっっ!!
0
お気に入りに追加
239
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。


淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】


【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる