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381.失恋
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シャワーを浴び終えて部屋に戻ると、泣き疲れて頭痛がしていた。躰も酷く重く、気怠い。
耳の遠くで聴き慣れた音が鳴っているが、それがLINEの着信音だと気づくのに時間がかかった。ようやくスマホに手を伸ばすと、真っ黒な画面に『萌たん』とある。
いつもなら、メッセージで都合を確認した後、ビデオ通話してくるのに……
胸騒ぎを覚えつつ、電話に出た。
「萌たん、どうしたの?
……なにか、あった?」
『ッグ……ッウッ、ヴッ……』
萌の嗚咽が漏れるばかりで、言葉になっていない。泣き止むのが収まらない萌とは対照的に、先ほどまで靄がかかっていたかのように重たかった美羽の頭が少しずつ覚醒してきた。
何があったのか聞きたい気持ちが先走りそうになるのを抑え、美羽は静かに萌の気持ちが落ち着くのを待った。
『ッ……美羽、たん……ッグ』
「うん、聞いてるよ」
励ますように、促すように返事をする。
『わだ……わた、し……ウッ、ウッ……振られ、ちゃった……ウウッ……』
振られた、って……
萌たん、浩平くんに告白したってこと!?
あまりの急展開に面食らう。萌にはまだ、浩平に告白する気などなかったように見えたのに。
いったいなぜ、そんなことになってしまったのだろう。
「振られたって……萌たん、浩平くんに気持ち、伝えたの?」
そこに、何か誤解はなかっただろうか。誤解であってほしい……祈るような気持ちで、萌に問いかける。
『ウッウッ……言う、つもり……ッグなかた、のに……ッッ
ど、しよ……どうし、よ……ウッウッ、美羽たっっ!!』
きっと萌は、少しずつ、少しずつ浩平との距離を縮めていき、友達から恋人になれるよう、ゆっくりと恋を温めていきたかったはずだ。
そんな萌の気持ちが伝わるからこそ、聞いている美羽も苦しくなった。
『ごめっ……ッッ。ごめ、ねウゥゥ……で、も……こうたんの、顔……見られ、な……ッッからっ、明日……デタント、行けな……い。
め、わく……ッグかけ、て……ごめ、な……さッッ』
「うん、分かった。お休みすることは、隼斗兄さんに私から伝えておくから」
気にしないで、そんな気持ちを込めて美羽が答えると、萌は再び嗚咽を漏らした。
『あり、がと……美羽、たウゥッ』
「うん、大丈夫だから」
スマホを切り、肩で息を吐く。結局、萌からどんな経緯で浩平に振られたのか、詳しく聞くことは出来なかった。
前回のように、一言も言わず休まれるよりはいいが、仕事仲間である浩平とはこれからも毎日のように顔を合わせていかなければならない。明日だけ休んでも、明後日も明々後日も、それは変わることはないのだ。萌は、そんな状況に耐えられるだろうか。
萌たん、辞めないよね……?
そう考えて、香織もまた、今日類に振られたことを思い出した。
まさか、かおりんまで仕事に来ないってことはないよね。
藤岡の妻が店まで来て大騒動になった翌日でも、香織は仕事に来ていたから欠勤することはないだろうとは思ったが、香織もまた、仕事仲間として類と顔を合わせ続けることになるのだ。
今日の香織の態度を見ていたら、心配になってきた。正直、美羽自身も香織にどんな顔をしていいのか分からない。
類は……これからかおりんに、どう接していくつもりだろう。あんなに仲良さそうにしてたのに。
自分が最も大切にし、癒しの場であったデタントが、どんどん変わっていくことに、美羽は寂しさを覚えた。
耳の遠くで聴き慣れた音が鳴っているが、それがLINEの着信音だと気づくのに時間がかかった。ようやくスマホに手を伸ばすと、真っ黒な画面に『萌たん』とある。
いつもなら、メッセージで都合を確認した後、ビデオ通話してくるのに……
胸騒ぎを覚えつつ、電話に出た。
「萌たん、どうしたの?
……なにか、あった?」
『ッグ……ッウッ、ヴッ……』
萌の嗚咽が漏れるばかりで、言葉になっていない。泣き止むのが収まらない萌とは対照的に、先ほどまで靄がかかっていたかのように重たかった美羽の頭が少しずつ覚醒してきた。
何があったのか聞きたい気持ちが先走りそうになるのを抑え、美羽は静かに萌の気持ちが落ち着くのを待った。
『ッ……美羽、たん……ッグ』
「うん、聞いてるよ」
励ますように、促すように返事をする。
『わだ……わた、し……ウッ、ウッ……振られ、ちゃった……ウウッ……』
振られた、って……
萌たん、浩平くんに告白したってこと!?
あまりの急展開に面食らう。萌にはまだ、浩平に告白する気などなかったように見えたのに。
いったいなぜ、そんなことになってしまったのだろう。
「振られたって……萌たん、浩平くんに気持ち、伝えたの?」
そこに、何か誤解はなかっただろうか。誤解であってほしい……祈るような気持ちで、萌に問いかける。
『ウッウッ……言う、つもり……ッグなかた、のに……ッッ
ど、しよ……どうし、よ……ウッウッ、美羽たっっ!!』
きっと萌は、少しずつ、少しずつ浩平との距離を縮めていき、友達から恋人になれるよう、ゆっくりと恋を温めていきたかったはずだ。
そんな萌の気持ちが伝わるからこそ、聞いている美羽も苦しくなった。
『ごめっ……ッッ。ごめ、ねウゥゥ……で、も……こうたんの、顔……見られ、な……ッッからっ、明日……デタント、行けな……い。
め、わく……ッグかけ、て……ごめ、な……さッッ』
「うん、分かった。お休みすることは、隼斗兄さんに私から伝えておくから」
気にしないで、そんな気持ちを込めて美羽が答えると、萌は再び嗚咽を漏らした。
『あり、がと……美羽、たウゥッ』
「うん、大丈夫だから」
スマホを切り、肩で息を吐く。結局、萌からどんな経緯で浩平に振られたのか、詳しく聞くことは出来なかった。
前回のように、一言も言わず休まれるよりはいいが、仕事仲間である浩平とはこれからも毎日のように顔を合わせていかなければならない。明日だけ休んでも、明後日も明々後日も、それは変わることはないのだ。萌は、そんな状況に耐えられるだろうか。
萌たん、辞めないよね……?
そう考えて、香織もまた、今日類に振られたことを思い出した。
まさか、かおりんまで仕事に来ないってことはないよね。
藤岡の妻が店まで来て大騒動になった翌日でも、香織は仕事に来ていたから欠勤することはないだろうとは思ったが、香織もまた、仕事仲間として類と顔を合わせ続けることになるのだ。
今日の香織の態度を見ていたら、心配になってきた。正直、美羽自身も香織にどんな顔をしていいのか分からない。
類は……これからかおりんに、どう接していくつもりだろう。あんなに仲良さそうにしてたのに。
自分が最も大切にし、癒しの場であったデタントが、どんどん変わっていくことに、美羽は寂しさを覚えた。
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