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358.密会
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けれど、香織の考えは違ったようだ。
「でもさ、『友達のままでいい』だなんて、結局嘘でしかないじゃない。自分の気持ちに嘘をついたまま、好きな人の近くでずっと過ごすだけ、見てるだけなんて、辛くない?
もし浩平に彼女ができても、萌は『私は友達でいい』って心からそう言える? 思えるの?」
萌は眉にグッと力を込めた。
「こうたんから、彼女の話なんて……聞きたく、ない。もう、笑って聞いてあげられない」
これまでのふたりと言えば、大っぴらに彼氏彼女の話をしていた。浩平の歴代の元カノについてもデタントで働くようになってから全て知っているし、会ったことだってある。
けれど、浩平への恋心を自覚した今となっては、萌はどうやって浩平の彼女の話を聞けばいいのか分からなくなっていた。
「ほら、無理なんじゃん!」
「か、かおりん……」
責め立てるような強い口調の香織に、美羽が萌を庇うように呼びかけた。
いや、萌を守ろうとしただけではない。自分のことも香織に責め立てられているような気持ちになり、耐えられなかったのだ。
悲しそうな顔を浮かべる美羽にハッとし、香織は気まずそうに萌に謝った。
「ご、ごめん……言いすぎた」
すると、突然芳子が立ち上がった。
「ごっめーん、私、お茶も入れてなかったわよね! コーヒー、緑茶、紅茶、ハーブティー、何がいい?」
「じゃあ、コーヒーで」
美羽は微笑んで答えた。芳子の気遣いがありがたかった。
コーヒーを配りながら、芳子が萌に話しかける。
「ほら、もうすぐバレンタインじゃない? その時に、さりげなく浩平くんにチョコレート渡してみたらどう?
いきなり告白は無理でもさ、好意があるってところを少しずつ見せていく作戦で」
「こうたんには毎年、チョコあげてるたん」
「でもそれって、隼斗さんにも同じものあげてたでしょ? 今年はそれに、特別感を演出するのよ!」
香織も、芳子の案に乗っかってきた。
「浩平の気に入りそうなプレゼントでも一緒に渡したら、どう?」
「ギャッ!! で、できないぃぃぃ」
「なんかの理由にかこつけるとか。あ、そうだ! 最近車で帰り送ってもらってるから、そのお礼ってことでいいじゃない」
香織の提案に対抗するように、萌が声を荒げた。
「それなら、かおりんも類たんにバレンタイン渡すの!?」
萌に逆に尋ねられ、香織はヒュッと喉を鳴らした。
「そ、そうだね……私も色々とお世話になってるし、そうしようかな……」
答えながら、香織が美羽の方をチラッと見てくる。そんな彼女の態度に、萌が更に切り込んできた。
「かおたんこそ、類たんのことどう思ってるの!?
好きなんじゃないの?」
「なっ……なんでっ、そぉなるのよ!! そりゃ、類くんは美羽に似て美形で優しくて、気遣いもできるし、女の子の扱いも慣れてる、けどっっ」
そう言いながら、またチラチラと美羽を見つめてくる。その視線が、堪らなく不愉快に感じてしまう。
「だってぇ、最近かおたんと類たんって超仲良したん!! 萌たん、気付いてるんだよっ。類たんのかおたんの呼び方が『香織さん』だったのが『かおりん』になったの!
それに……萌たん、偶然見ちゃったんたん。スキーに行った時、ふたりだけで会って、こそこそと何か話してた。
怪しいたーん!!」
ぇ。そう、なの……?
美羽は、思わず香織を凝視した。
ふたりきりで会っていたなんて……なぜ、そんな必要があったのだろう。どんな話をしていたのだろう。
「そ、それはっっ!! ほらっ、美羽にも話してたでしょ。あの頃、嫌がらせされてたから、それを類くんに相談してただけだってば!!」
必死に弁解する香織に、美羽の疑惑が深まっていく。
だって……あの時かおりんは、『夜、みんなで集まって喋ってた時に、嫌がらせを受けてる話したんだ』って言ってた。ふたりで会って相談してたなんて、ひとことも言ってなかった。
疾しいことがないなら、ふたりで会ってたことを隠す必要なんてないはずなのに。
「でもさ、『友達のままでいい』だなんて、結局嘘でしかないじゃない。自分の気持ちに嘘をついたまま、好きな人の近くでずっと過ごすだけ、見てるだけなんて、辛くない?
もし浩平に彼女ができても、萌は『私は友達でいい』って心からそう言える? 思えるの?」
萌は眉にグッと力を込めた。
「こうたんから、彼女の話なんて……聞きたく、ない。もう、笑って聞いてあげられない」
これまでのふたりと言えば、大っぴらに彼氏彼女の話をしていた。浩平の歴代の元カノについてもデタントで働くようになってから全て知っているし、会ったことだってある。
けれど、浩平への恋心を自覚した今となっては、萌はどうやって浩平の彼女の話を聞けばいいのか分からなくなっていた。
「ほら、無理なんじゃん!」
「か、かおりん……」
責め立てるような強い口調の香織に、美羽が萌を庇うように呼びかけた。
いや、萌を守ろうとしただけではない。自分のことも香織に責め立てられているような気持ちになり、耐えられなかったのだ。
悲しそうな顔を浮かべる美羽にハッとし、香織は気まずそうに萌に謝った。
「ご、ごめん……言いすぎた」
すると、突然芳子が立ち上がった。
「ごっめーん、私、お茶も入れてなかったわよね! コーヒー、緑茶、紅茶、ハーブティー、何がいい?」
「じゃあ、コーヒーで」
美羽は微笑んで答えた。芳子の気遣いがありがたかった。
コーヒーを配りながら、芳子が萌に話しかける。
「ほら、もうすぐバレンタインじゃない? その時に、さりげなく浩平くんにチョコレート渡してみたらどう?
いきなり告白は無理でもさ、好意があるってところを少しずつ見せていく作戦で」
「こうたんには毎年、チョコあげてるたん」
「でもそれって、隼斗さんにも同じものあげてたでしょ? 今年はそれに、特別感を演出するのよ!」
香織も、芳子の案に乗っかってきた。
「浩平の気に入りそうなプレゼントでも一緒に渡したら、どう?」
「ギャッ!! で、できないぃぃぃ」
「なんかの理由にかこつけるとか。あ、そうだ! 最近車で帰り送ってもらってるから、そのお礼ってことでいいじゃない」
香織の提案に対抗するように、萌が声を荒げた。
「それなら、かおりんも類たんにバレンタイン渡すの!?」
萌に逆に尋ねられ、香織はヒュッと喉を鳴らした。
「そ、そうだね……私も色々とお世話になってるし、そうしようかな……」
答えながら、香織が美羽の方をチラッと見てくる。そんな彼女の態度に、萌が更に切り込んできた。
「かおたんこそ、類たんのことどう思ってるの!?
好きなんじゃないの?」
「なっ……なんでっ、そぉなるのよ!! そりゃ、類くんは美羽に似て美形で優しくて、気遣いもできるし、女の子の扱いも慣れてる、けどっっ」
そう言いながら、またチラチラと美羽を見つめてくる。その視線が、堪らなく不愉快に感じてしまう。
「だってぇ、最近かおたんと類たんって超仲良したん!! 萌たん、気付いてるんだよっ。類たんのかおたんの呼び方が『香織さん』だったのが『かおりん』になったの!
それに……萌たん、偶然見ちゃったんたん。スキーに行った時、ふたりだけで会って、こそこそと何か話してた。
怪しいたーん!!」
ぇ。そう、なの……?
美羽は、思わず香織を凝視した。
ふたりきりで会っていたなんて……なぜ、そんな必要があったのだろう。どんな話をしていたのだろう。
「そ、それはっっ!! ほらっ、美羽にも話してたでしょ。あの頃、嫌がらせされてたから、それを類くんに相談してただけだってば!!」
必死に弁解する香織に、美羽の疑惑が深まっていく。
だって……あの時かおりんは、『夜、みんなで集まって喋ってた時に、嫌がらせを受けてる話したんだ』って言ってた。ふたりで会って相談してたなんて、ひとことも言ってなかった。
疾しいことがないなら、ふたりで会ってたことを隠す必要なんてないはずなのに。
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