【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

文字の大きさ
上 下
355 / 498

349.開きたくない扉

しおりを挟む
 予想はしていたことだが、やはり圭子は琴子の一人暮らしに反対したようだ。

 圭子の言い分は、ほのかを琴子に見てもらえることによって自分が働きにいこうと考えていたのに、その琴子が家を出ていくのでは困るということだったが……おそらく、その場凌ぎの出任せだろう。本当にそのつもりでいたのなら、とっくに仕事探しをしていた筈だ。

 そこで、また店の定休日に義昭と類が揃って圭子の家を訪問し、琴子のためにシニア向けマンションでのひとり暮らしに向けて話を進めることとなった。新婚の時でさえ美羽のために有給を使うことなどなかった義昭が、母親のために2週続けて有給を取ることとなったが、美羽にはなんの感情も湧かなかった。

 美羽も誘われたのだが、ちょうど予定があったため断ることができてホッとした。義昭とは元々一緒にいたくなどないし、類ともあれ以来、距離をおいていた。

 類に、動画のことも教団のことも、オカダリョウジのことも……何も聞き出せないまま、日々だけが過ぎている。

 もしも類と一緒に堕ちる覚悟が出来たなら……私は、聞き出すことができるのかな。

 義昭の部屋で見た動画が、壊れたDVDプレイヤーのように繰り返し美羽の脳裏に流される。

 日常の中に、非日常が忍びこんでくる。

 夢にまで、猫型のヴェネチアンマスクにゴシック衣装を纏い、鞭を手にした類が出てきた。

 それを目の前に、戸惑う一方で、妖美で魅力的な彼に……強く惹きつけられた。視線を外せなかった。

 躊躇いもなく鞭を振るう姿に驚愕し、恐怖を覚えるのに、その鞭を入れられるのが自分ではないことに激しい嫉妬を感じた。

 その瞬間、今度は自分が一糸纏わぬ姿で磔にされていた。

 ゾクゾクと背中が震え、血が滾る。恐怖と甘美が混ざり合う狂気の世界に惹き込まれ、呑み込まれていく。

 鞭を振り上げる類を、恍惚と見つめる。

 痛みなど、欲しくない。けれど……類に与えられる痛みなら、快感に書き換えられていく。

 その瞬間を、待ち望んでいる自分がいた。


 すると今度は、自分ではなく、父親が磔にされていた。類に鞭を振るわれ、全身を震わせ、嗚咽を漏らしている。

 途端に、悍ましさが背中を走った。



「お願い、やめてぇぇ!!」



 自らの叫び声で、美羽は目が覚めた。全身が汗塗れで、躰が小刻みに震えていた。

 類の話していた真実が、真逆だとしたら……

 愛する父親を虐待した類を赦せるだろうか。そんな彼を丸ごと受け入れ、愛することができるのだろうか。

 お父さんを類が虐待してただなんて、認めたくない。
 
 もしこれが類によって創り出された虚構の世界だとしても、真実の扉が目の前にあったとしても、美羽にそれを開く勇気がなかった。背を向けて、目を覆ってしまう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...