318 / 498
312.尽きていなかった肉欲
しおりを挟む
「失礼、します」
緩く結んであった紐をするりと解き、腕からゆっくりとローブを外す。腕の贅肉はたぷたぷしており、まるで着物の袖のようだ。下着姿になった高槻の肌にはブラジャーが食い込んでいた。ところどころにシミが浮き出ていて、贅沢な脂肪のたっぷりついた肉付きのいい躰は美しさと対極にあった。
気持ちを押し殺し、リョウは幅のある彼女の躰を跨いだ。その瞬間、高槻の躰がふるりと震える。
息子ほど歳の差があるうら若い男に肉欲を感じるこの年増の女を、気持ち悪く感じる。
だが、そんな感情はおくびにも出さず、リョウは高槻の肌をするりと撫でた。
「ンクッ」
高槻の『女』の声に、ゾワッと鳥肌が立つ。
「先生の肌……柔らかくて、気持ちいいですね」
「ぁ。リョウの、手も……冷たくて、いいわ。ハァッ……」
冷たいリョウの手に触れられて、高槻の躰が芯から熱くなってくる。もう自分を崇拝の対象とする信者も、若々しく美しい華江のことも、頭になかった。
みんな、勝手にすればいいわ。
今、この瞬間、この男が手に入ること。
ーーそれだけが、高槻の望みだった。
「リラックス出来るように、灯りを少し落としますね」
「えぇ」
手元のライトの光度をギリギリまで落とし、なるべく高槻の躰が見えないようにした。
肩に、首に、リョウの体重が掛かるたびに、高槻は甘い声を上げた。
「ンフッ……リョウジ、上手いのねぇン」
決して信者の前では出さない、鼻にかかった猫なで声。
「……ありがとうございます」
高槻に触れながら、彼女の記憶がリョウの中に流れ込んでくる。
反吐が出る……
高槻に残る強い記憶は、どれも金と欲に塗れていた。
男たちと熱い肉欲を交え、信者たちから金を巻き上げ、拝められ、崇められている自分。
そこには、『信者のために生きる』、『信者は家族だ』、などという、高槻が普段から掲げている高尚な信念など、微塵もない。
手から、熱が生み出される。
『……リョウちゃん、だめよ』
懐かしい祖母の声が、頭の遠くに響いた。
一瞬、リョウの手から力が抜ける。祖母ならどうしていただろうかという思いが、過ぎる。
だが、再び気を集中した。
ばあちゃん……これは、必要なことなんだ。
高槻の霊力が、リョウの掌から吸い取られていく。高槻の、気づかぬままに。
耳鳴りがし、頭痛がする。吐き気を堪え、脂汗を掻きながら、リョウは高槻の肌に触れ続けた。
「ック……ハァッ、ハァッ……ッッ」
目眩がし、意識が遠退いていく。
これだけ直に長く触れていれば出来るかと思ったが……だめ、か。
やはり、完全に霊力を奪うには、掌からだけでは限界があった。
リョウの思惑など知る由もない高槻は、彼の指がもし自分の密かな部分に触れたら……と想像し、興奮を昂ぶらせていた。
閉経を迎えた高槻は、女性としての性が終わったことを突きつけられ、女としての悦びへの欲望は尽きたと思っていた。
だが、終わってなどいなかったのだ。
女性は幾つになったって、男にときめきを感じ、抱かれたい、愛されたいと願う生き物なのだ。
リョウの指が高槻の背中の肉に埋もれていく。贅沢な生活に溺れ、すっかり崩れてしまった躰のラインを急に恥ずかしく思った。
せめて、30代の頃のプロポーションを維持出来ていたら。
そんな叶わぬ望みが脳裏に浮かび上がる。
「先生。仰向けになって頂いても?」
「ぇ。えぇ……」
幻想から醒めた高槻は、少し恥じらいを見せながら重い躰を傾けた。
仰向けになった高槻の目の前に、覆いかぶさるようにリョウの顔がある。
うっすらと汗が滲み、呼吸が乱れた彼は、普段からは考えられない艶かしさを匂わせていた。どこまでも深く、飲み込まれそうな真っ黒な魅惑的な瞳に、うっとりと見つめる自分の顔が映し出される。
「リョウジ……」
高槻は勝負に出た。
リョウの後頭部に手を回し、グイと強く引き寄せる。すると、リョウの睫毛が震え、瞼を閉じ、唇が一瞬引いたものの、それから重なった。
受け、入れた。
高槻の脳髄がジンと痺れた。久しぶりに感じる、女性としての快感に全身が震える。
吐息を漏らし、リョウの唇の隙間から舌を入れ込む。
「ンッフッ……!!」
リョウが躰を震わせた。高槻が舌を激しく動かしてもリョウの反応は辿々しく、決して上手いとはいえなかった。だからこそ、更に高槻の情欲が煽られた。
フフッ、私が教えてあげるわ……
若い頃には多くの男性と躰を重ねてきた高槻だ。男を悦ばせる技術を、経験と共に磨いてきた。
リョウの舌を絡めとり、吸い付き、甘噛みする。躰が、覚えていた。
「ッン、せんせ……!! ッハァ」
動揺を見せるリョウが、可愛くて仕方ない。この男を自分の手で愛で、気持ちよくさせ、イかせたい。
今まで感じたことのない庇護欲が、高槻の心の奥底から湧き上がってきた。
緩く結んであった紐をするりと解き、腕からゆっくりとローブを外す。腕の贅肉はたぷたぷしており、まるで着物の袖のようだ。下着姿になった高槻の肌にはブラジャーが食い込んでいた。ところどころにシミが浮き出ていて、贅沢な脂肪のたっぷりついた肉付きのいい躰は美しさと対極にあった。
気持ちを押し殺し、リョウは幅のある彼女の躰を跨いだ。その瞬間、高槻の躰がふるりと震える。
息子ほど歳の差があるうら若い男に肉欲を感じるこの年増の女を、気持ち悪く感じる。
だが、そんな感情はおくびにも出さず、リョウは高槻の肌をするりと撫でた。
「ンクッ」
高槻の『女』の声に、ゾワッと鳥肌が立つ。
「先生の肌……柔らかくて、気持ちいいですね」
「ぁ。リョウの、手も……冷たくて、いいわ。ハァッ……」
冷たいリョウの手に触れられて、高槻の躰が芯から熱くなってくる。もう自分を崇拝の対象とする信者も、若々しく美しい華江のことも、頭になかった。
みんな、勝手にすればいいわ。
今、この瞬間、この男が手に入ること。
ーーそれだけが、高槻の望みだった。
「リラックス出来るように、灯りを少し落としますね」
「えぇ」
手元のライトの光度をギリギリまで落とし、なるべく高槻の躰が見えないようにした。
肩に、首に、リョウの体重が掛かるたびに、高槻は甘い声を上げた。
「ンフッ……リョウジ、上手いのねぇン」
決して信者の前では出さない、鼻にかかった猫なで声。
「……ありがとうございます」
高槻に触れながら、彼女の記憶がリョウの中に流れ込んでくる。
反吐が出る……
高槻に残る強い記憶は、どれも金と欲に塗れていた。
男たちと熱い肉欲を交え、信者たちから金を巻き上げ、拝められ、崇められている自分。
そこには、『信者のために生きる』、『信者は家族だ』、などという、高槻が普段から掲げている高尚な信念など、微塵もない。
手から、熱が生み出される。
『……リョウちゃん、だめよ』
懐かしい祖母の声が、頭の遠くに響いた。
一瞬、リョウの手から力が抜ける。祖母ならどうしていただろうかという思いが、過ぎる。
だが、再び気を集中した。
ばあちゃん……これは、必要なことなんだ。
高槻の霊力が、リョウの掌から吸い取られていく。高槻の、気づかぬままに。
耳鳴りがし、頭痛がする。吐き気を堪え、脂汗を掻きながら、リョウは高槻の肌に触れ続けた。
「ック……ハァッ、ハァッ……ッッ」
目眩がし、意識が遠退いていく。
これだけ直に長く触れていれば出来るかと思ったが……だめ、か。
やはり、完全に霊力を奪うには、掌からだけでは限界があった。
リョウの思惑など知る由もない高槻は、彼の指がもし自分の密かな部分に触れたら……と想像し、興奮を昂ぶらせていた。
閉経を迎えた高槻は、女性としての性が終わったことを突きつけられ、女としての悦びへの欲望は尽きたと思っていた。
だが、終わってなどいなかったのだ。
女性は幾つになったって、男にときめきを感じ、抱かれたい、愛されたいと願う生き物なのだ。
リョウの指が高槻の背中の肉に埋もれていく。贅沢な生活に溺れ、すっかり崩れてしまった躰のラインを急に恥ずかしく思った。
せめて、30代の頃のプロポーションを維持出来ていたら。
そんな叶わぬ望みが脳裏に浮かび上がる。
「先生。仰向けになって頂いても?」
「ぇ。えぇ……」
幻想から醒めた高槻は、少し恥じらいを見せながら重い躰を傾けた。
仰向けになった高槻の目の前に、覆いかぶさるようにリョウの顔がある。
うっすらと汗が滲み、呼吸が乱れた彼は、普段からは考えられない艶かしさを匂わせていた。どこまでも深く、飲み込まれそうな真っ黒な魅惑的な瞳に、うっとりと見つめる自分の顔が映し出される。
「リョウジ……」
高槻は勝負に出た。
リョウの後頭部に手を回し、グイと強く引き寄せる。すると、リョウの睫毛が震え、瞼を閉じ、唇が一瞬引いたものの、それから重なった。
受け、入れた。
高槻の脳髄がジンと痺れた。久しぶりに感じる、女性としての快感に全身が震える。
吐息を漏らし、リョウの唇の隙間から舌を入れ込む。
「ンッフッ……!!」
リョウが躰を震わせた。高槻が舌を激しく動かしてもリョウの反応は辿々しく、決して上手いとはいえなかった。だからこそ、更に高槻の情欲が煽られた。
フフッ、私が教えてあげるわ……
若い頃には多くの男性と躰を重ねてきた高槻だ。男を悦ばせる技術を、経験と共に磨いてきた。
リョウの舌を絡めとり、吸い付き、甘噛みする。躰が、覚えていた。
「ッン、せんせ……!! ッハァ」
動揺を見せるリョウが、可愛くて仕方ない。この男を自分の手で愛で、気持ちよくさせ、イかせたい。
今まで感じたことのない庇護欲が、高槻の心の奥底から湧き上がってきた。
0
お気に入りに追加
225
あなたにおすすめの小説
【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる