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260.義昭への罪悪感
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反論できないまま両親との顔合わせを終え、義昭を駅まで送っていく。華江と拓斗から離れられても、心に埋められた錘に躰を引き摺られているようだ。
美羽は眉を下げ、肩を竦めて、小声で義昭に話しかけた。
「義昭さん、母があんな失礼なことを言ってしまってごめんなさい……」
「あ。いや……驚きはしたけど、少し納得したというか」
「え?」
美羽が驚いて見上げると、義昭が頭を掻いた。
「美羽さん、僕と会っている時もお母さんからよく電話がかかってきていろいろ聞かれていたし、門限を凄く気にされていたから、厳しい人なんだろうなぁと感じていたので。
まさか、結婚の条件までつけられるとは思わなかったですが」
「ご、ごめんなさいっっ!!」
美羽が腰を深く折り曲げて謝ると、義昭はへらへらと笑い顔を浮かべながら両手を振った。
「いや、美羽さんが悪いわけではないですから。
でも……もし、僕がお母さんの提案を受け入れられなければ、美羽さんは福岡に連れて行かれるってこと、なんですよね?」
駅の改札口が目の前に迫り、美羽は足を止めた。電車が到着したタイミングだったらしく、階段からはたくさんの人が降りて来て改札へとなだれ込んできていた。
それを避けるように美羽は改札から少し離れた柱に立って俯くと、消え入りそうな声で答えた。
「そう、なんです……
そしたら義昭さんと結婚が破談になるだけでなく、二度と会えなくなると思います」
類と再会する希望が絶たれ、この先一生母の監視の元で暮らしていかなければならないという恐ろしさから、美羽の躰が小刻みに震えた。
小動物のようにブルブルしている美羽の肩に、義昭が軽く触れる。
「分かりました。心配しないでください、なんとかしますから」
「は、い……」
私が恐れているのは義昭さんと結婚できないことでも、離れてしまう寂しさからでもないのに……彼に、誤解させてしまっている。
そして、彼の優しさを利用しようとしている。
真実を知った時、義昭さんは私のことをどう思うのだろう。こんなことするべきじゃない、やめるべきだって、彼に会うたびに思わずにはいられない。
それなのに、私は未だ類への希望を捨てられずにいる……
義昭と付き合ったことで生まれた罪悪感の芽は、今や大きな大木へと成長し、美羽の心に深い影を落としている。けれど今の美羽には、義昭に縋るより他なかった。
美羽は眉を下げ、肩を竦めて、小声で義昭に話しかけた。
「義昭さん、母があんな失礼なことを言ってしまってごめんなさい……」
「あ。いや……驚きはしたけど、少し納得したというか」
「え?」
美羽が驚いて見上げると、義昭が頭を掻いた。
「美羽さん、僕と会っている時もお母さんからよく電話がかかってきていろいろ聞かれていたし、門限を凄く気にされていたから、厳しい人なんだろうなぁと感じていたので。
まさか、結婚の条件までつけられるとは思わなかったですが」
「ご、ごめんなさいっっ!!」
美羽が腰を深く折り曲げて謝ると、義昭はへらへらと笑い顔を浮かべながら両手を振った。
「いや、美羽さんが悪いわけではないですから。
でも……もし、僕がお母さんの提案を受け入れられなければ、美羽さんは福岡に連れて行かれるってこと、なんですよね?」
駅の改札口が目の前に迫り、美羽は足を止めた。電車が到着したタイミングだったらしく、階段からはたくさんの人が降りて来て改札へとなだれ込んできていた。
それを避けるように美羽は改札から少し離れた柱に立って俯くと、消え入りそうな声で答えた。
「そう、なんです……
そしたら義昭さんと結婚が破談になるだけでなく、二度と会えなくなると思います」
類と再会する希望が絶たれ、この先一生母の監視の元で暮らしていかなければならないという恐ろしさから、美羽の躰が小刻みに震えた。
小動物のようにブルブルしている美羽の肩に、義昭が軽く触れる。
「分かりました。心配しないでください、なんとかしますから」
「は、い……」
私が恐れているのは義昭さんと結婚できないことでも、離れてしまう寂しさからでもないのに……彼に、誤解させてしまっている。
そして、彼の優しさを利用しようとしている。
真実を知った時、義昭さんは私のことをどう思うのだろう。こんなことするべきじゃない、やめるべきだって、彼に会うたびに思わずにはいられない。
それなのに、私は未だ類への希望を捨てられずにいる……
義昭と付き合ったことで生まれた罪悪感の芽は、今や大きな大木へと成長し、美羽の心に深い影を落としている。けれど今の美羽には、義昭に縋るより他なかった。
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