【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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244.絶望に染められる未来

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「ちょっと! あなたからも何とか言ってやって。あなたの息子でしょ?」

 そう言われ、拓斗は 大仰おおぎょうにゴホンと咳をした。

「隼斗。これは、華江さんと相談して決めたことなんだ。変えるつもりはない」

 隼斗が父をグッと睨み付けると、拓斗は慌てて目を逸らした。そんな父に、隼斗は心の中で溜息を吐いた。

 昔……おふくろが病気になって亡くなるまでは、こんな親父じゃなかった。それが、あの女によって全て変わったんだ。

 その悔しさを拳に込めるように、隼斗はグッと握り潰した。

 美羽は、華江に縋り付くように見つめた。

「お願い、お母さん。
 せめて……せめて、大学卒業するまでは待って!」

 大学を卒業したら、類に会える。そして、私たちはようやく一緒になれるんだ。
 だから、お願い……その時までどうか、ここにいさせて。

 華江がフッと右の口角を釣り上げた。

「そうねぇ……あなたがどこかの男と結婚でもすれば、福岡に連れていくのはやめてあげる。
 ま、無理でしょうけどね」

 美羽の目の前が真っ暗になる。

 他の男の人と、結婚……だなんて。
 出来るわけない。

 私が愛してるのは類だけ。
 たとえ類と結婚できなくても、一緒にいたい。

 他の男の人と結婚だなんて、考えられるわけない。

 今までに何人もの男性に告白されてきたが、誰一人として美羽の心を揺り動かすことは出来なかった。

 美羽の心にはいつも類がいて、たとえ会えなくても、声が聞けなくても、ずっと離れていても、常に美羽を縛り続けている。

 華江はいいことを思いついたというように、ポンと手を叩いた。

「そうだわ! お見合いしたらいいじゃない。
 先生に紹介していただけないか、相談してみるわ」

 美羽の全身が冷水を浴びせられたかのように一気に冷たくなる。

 う、嘘……
 絶対に、そんなの嫌!!

 母の息のかかった人物と結婚するなど、母にずっと監視されているようなものだ。一生、美羽は母の檻から抜け出すことが出来なくなる。

「じ、ぶんの相手ぐらい、自分で見つけられます!」

 そう啖呵を切ったものの、そんな相手などいるはずもない。もちろん、父の約束通り類と一緒になることを許してもらえる可能性など、万に一つもない。

 華江は話を切り上げるように、パンと手を叩いた。

「とにかく、3ヶ月後には福岡に行きますから。
 本当はもっと早くに行きたかったんだけど、拓斗さんがどうしても仕事の都合がつかないなんて言うから……ったくもう。
 それまでに、準備しておいてね」

 華江と拓斗の立ち去る背中を見送りながら、美羽は小刻みに躰を震わせた。怒りと悲しみと悔しさと憤りで胃の中がグルグルかき混ぜられる。

 3、ヶ月だなんて……
 短すぎるよ。

 類、お願い。今すぐに私を迎えに来て……!!
 
 隼斗がテーブルに乗せた腕に体重をかけ、大きく溜息を吐いた。

「済まない……なんの役にも立てなくて」

 まるで自分の責任だというように申し訳なさそうな表情を浮かべた隼斗に、美羽は力なく笑みを見せた。 

「ううん。隼斗、兄さんが……庇ってくれて、嬉しかった」

 最近になって『隼斗兄さん』と呼ぶようになったが、まだ慣れていないので擽ったい気分になる。

「あの人はどうせ聞く耳持たないし、なんとか親父の方を説得する。
 あまり、期待は出来んが」

 美羽は隼斗に頷き、肩を竦めた。

「隼斗兄さんに迷惑かけちゃって、ごめんね」
「そんな風に言うな。迷惑だなんて思ってない。
 もっと、頼ってくれていい」

 ハッと顔を上げると、隼斗が美羽の目を真っ直ぐ見つめ、優しく微笑んでいた。

「お前はもう、俺にとって妹なんだ。
 兄貴に頼れ。甘えていいんだ」
「う、ん……ありが、とう」

 隼斗兄さん……私、お母さんの再婚は未だに受け入れられないけど、隼斗兄さんがお兄さんになって、本当に良かったと思ってるよ。

 美羽は溢れる涙を堪え、肩を震わせた。
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