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238.周りの反応
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『美羽?
私、香織だよ!!』
香織の呼びかけに応えて隼斗が携帯を渡し、美羽はハッとして受け取った。
「香織?」
『良かったー、美羽と連絡取れて! 何度もLINEしてたのに、既読ついても返事くれないし、それからずっと未読だったし、新年の挨拶すら返してくれないから、何かあったんじゃないかって心配してたんだよ、っもう!』
「ごめ、んね……」
香織、そんなことを考えてたんだ。
類から連絡が来ない寂しさと、みんなで楽しんでいることを知りたくないという自分勝手な思いから、大切な親友であるはずの香織のLINEをずっと無視していたという事実に今更ながら気づき、美羽は申し訳なくなった。
そんな美羽に対し、香織が電話の向こうで『フフッ』と笑った。
『それにしても、類くんってば相当なシスコンだよねー!』
美羽の心臓がドクンと跳ねる。
類がシスコンだということは、昔からよく言われていたので慣れているはずなのに、香織の言葉に『仲の良い姉弟』以上の意味が含まれているのではないかと考えて、背筋がヒヤリと冷たくなる。
「そ、そうなの!! なんかそれで余計な心配してるみたいで。みんなにも、ごめんねって言っておいてくれるかな?」
美羽が必死に伝えると、香織が明るく答えた。
『うん、分かった。だーいじょうぶ、美羽が隼斗さんとどうにかなるなんて、誰も思ってないから! たとえ裸で抱き合ったって、隼斗さんなら美羽に手ぇ出さなさそうだもんね』
「ちょっ、かおりん! 変なこと言い出さないでよ!!」
美羽は焦って声を上げた。そんなこと、想像すらしたくなかった。もし類に聞かれたら、正気でいられないはずだ。
耳を澄ませると既に類は完全に連れ出されたらしく、電話の向こうからは何も聞こえてこず、ホッと肩を撫で下ろした。
隼斗兄さんは、聞いてたかな……
キョロキョロと視線を泳がせたが、浴室に行ったのか姿が見えず、美羽はハァと息を吐き出した。
『逆に、類くんと美羽ならありえるかもだけど』
香織の言葉に一気に美羽の全身がカーッと熱くなり、心臓がフルフルと震える。
「そんなわけないでしょ! やめてよ!!」
感情のままに美羽が叫ぶと、香織が一瞬息を呑んだ。それから、宥めるような声音で謝った。
『ご、ごめん。冗談だってば……ただ、ビジュアル的に綺麗だろうなぁって思っただけだから。弟と、しかも双子の弟とそんな想像したくないよね、ごめん。しかも結婚して旦那さんだっているのに……冗談が過ぎた』
冗談に、ならないから……困るんだよ。
たとえ冗談だとしても、香織の中にそんな考えがあったことを知り、美羽は自分の心を見透かされているかのように感じて恐ろしくなった。
気まづい空気を払拭しようとしてか、香織が話題を変えた。
『みんなと騒いでてもさ、やっぱ美羽がいないと寂しいよー。今度は美羽とふたりで旅行したいなぁ。温泉とか行きたくない?
大学の時もうちに泊まることはあっても、一緒に旅行ってしたことないじゃん! ゼミの旅行も卒旅も美羽は参加しなかったし。義昭さん、許してくれないかなぁ』
類が皆の前でとんでもないことを口走っていたらどうしよう……と、気が気でない美羽は、香織の話を聞きながらも上の空だった。
「うん、そうだね。
あの……類は? 今、何してる?」
『浩平たちヤローどもが、外に連れ出したみたい。クスクス……めっちゃ類くん抵抗してたけどね』
「そう、なんだ……
みんなに、迷惑かけてごめんねって謝っておいて」
もっと類の声、聞きたかったな……
これ以上追求されずにすむという安堵よりも、類の声を聞けないという寂しさの方が勝ってしまう。それを押し隠し、美羽は力なく微笑んだ。
私、香織だよ!!』
香織の呼びかけに応えて隼斗が携帯を渡し、美羽はハッとして受け取った。
「香織?」
『良かったー、美羽と連絡取れて! 何度もLINEしてたのに、既読ついても返事くれないし、それからずっと未読だったし、新年の挨拶すら返してくれないから、何かあったんじゃないかって心配してたんだよ、っもう!』
「ごめ、んね……」
香織、そんなことを考えてたんだ。
類から連絡が来ない寂しさと、みんなで楽しんでいることを知りたくないという自分勝手な思いから、大切な親友であるはずの香織のLINEをずっと無視していたという事実に今更ながら気づき、美羽は申し訳なくなった。
そんな美羽に対し、香織が電話の向こうで『フフッ』と笑った。
『それにしても、類くんってば相当なシスコンだよねー!』
美羽の心臓がドクンと跳ねる。
類がシスコンだということは、昔からよく言われていたので慣れているはずなのに、香織の言葉に『仲の良い姉弟』以上の意味が含まれているのではないかと考えて、背筋がヒヤリと冷たくなる。
「そ、そうなの!! なんかそれで余計な心配してるみたいで。みんなにも、ごめんねって言っておいてくれるかな?」
美羽が必死に伝えると、香織が明るく答えた。
『うん、分かった。だーいじょうぶ、美羽が隼斗さんとどうにかなるなんて、誰も思ってないから! たとえ裸で抱き合ったって、隼斗さんなら美羽に手ぇ出さなさそうだもんね』
「ちょっ、かおりん! 変なこと言い出さないでよ!!」
美羽は焦って声を上げた。そんなこと、想像すらしたくなかった。もし類に聞かれたら、正気でいられないはずだ。
耳を澄ませると既に類は完全に連れ出されたらしく、電話の向こうからは何も聞こえてこず、ホッと肩を撫で下ろした。
隼斗兄さんは、聞いてたかな……
キョロキョロと視線を泳がせたが、浴室に行ったのか姿が見えず、美羽はハァと息を吐き出した。
『逆に、類くんと美羽ならありえるかもだけど』
香織の言葉に一気に美羽の全身がカーッと熱くなり、心臓がフルフルと震える。
「そんなわけないでしょ! やめてよ!!」
感情のままに美羽が叫ぶと、香織が一瞬息を呑んだ。それから、宥めるような声音で謝った。
『ご、ごめん。冗談だってば……ただ、ビジュアル的に綺麗だろうなぁって思っただけだから。弟と、しかも双子の弟とそんな想像したくないよね、ごめん。しかも結婚して旦那さんだっているのに……冗談が過ぎた』
冗談に、ならないから……困るんだよ。
たとえ冗談だとしても、香織の中にそんな考えがあったことを知り、美羽は自分の心を見透かされているかのように感じて恐ろしくなった。
気まづい空気を払拭しようとしてか、香織が話題を変えた。
『みんなと騒いでてもさ、やっぱ美羽がいないと寂しいよー。今度は美羽とふたりで旅行したいなぁ。温泉とか行きたくない?
大学の時もうちに泊まることはあっても、一緒に旅行ってしたことないじゃん! ゼミの旅行も卒旅も美羽は参加しなかったし。義昭さん、許してくれないかなぁ』
類が皆の前でとんでもないことを口走っていたらどうしよう……と、気が気でない美羽は、香織の話を聞きながらも上の空だった。
「うん、そうだね。
あの……類は? 今、何してる?」
『浩平たちヤローどもが、外に連れ出したみたい。クスクス……めっちゃ類くん抵抗してたけどね』
「そう、なんだ……
みんなに、迷惑かけてごめんねって謝っておいて」
もっと類の声、聞きたかったな……
これ以上追求されずにすむという安堵よりも、類の声を聞けないという寂しさの方が勝ってしまう。それを押し隠し、美羽は力なく微笑んだ。
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