【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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224.義母の提案

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 重い足取りで、美羽は先ほどの部屋へと戻った。

 障子越しにも義昭と圭子が言い争っている声が聞こえ、入りたくないという葛藤を抱えつつも障子を開けた。

 振り返った皆の視線を一斉に受けてたじろぎそうになりながら、勇気を出して美羽が声をかける。

「あ、あの……実は……」

 そこに、美羽の後ろから大きなボストンバッグを2つ持った琴子が現れた。

「事前に荷物の整理はしてたつもりだったけど、いざ出て行こうと思うと色々気になっちゃうものねぇ。
 さ、行きましょうか!」

 支度を終えた琴子は、完全に今から家を出るつもりでいるようだ。

 まさか今すぐにとは思っていなかった圭子が、目を丸くした。

「ちょ、ちょっとお母さん! 私たちまだ引っ越ししてないわよ!?」
「分かってるわよ。だから、新しい家が見つかるまでは私の部屋がなくても我慢するつもりよ。私は、ほのちゃんの隣にお布団敷いて寝かせてもらえれば大丈夫だから心配しないで」

 しおらしく言っているが、そこに拒否権はなさそうだ。焦ったのは晃の方だった。

「あ、あのお義母さん……明日から俺は仕事ですけど、圭子とほのかは俺の実家に泊まりに行くことになってるんですよ」

 それを聞き、圭子がパチンと指を鳴らした。

「じゃ、うちのお母さんが泊まるからって理由で、行くのキャンセルすればいいじゃなぁい!」

 晃がプハッと口からビールを吹き出した。顔についた飛沫を腕で拭いながら、困惑した表情を浮かべる。

「バカ言うなよ。おふくろもおやじもほのかに会うの楽しみにしてんだぞ。『ほのかは圭子さんの実家ばっかり行って、うちにはちっとも顔出さないんだから』ってしょっちゅう愚痴られてるのに、取りやめれるわけないだろ!」
「えーっ、だってぇ、パパん家行くとリラックス出来なくて肩凝っちゃうんだもーん」
「たった二日だろ! 半年に1回のことなんだから、我慢してくれよ」
「あ、分かった! それって、お母さんも行けば問題解決じゃなぁい? 
 そしたら私も少しは気が楽だしぃ、お母さんもパパんとこの家族もほのかと一緒にいられて、みんなにとって最高じゃなぁい! やっだ、私あったまいい!!」

 圭子がしたり顔を浮かべた。

 晃の目が飛び出さんばかりにギョッとする。

「お義母さんが俺の実家に行けば、お義父さんとなんかあったんじゃないかって疑われるに決まってるだろ。まだ離婚も決まってないのに、そんなこと出来るわけないじゃないか。それに、うちの親だけじゃなく、他の親戚だっているんだぞ。
 仕事があるから俺は顔出すだけのつもりだけど、その時に何言われるか分かったもんじゃない」

 圭子はそれを聞き、肉付きのいい頬を更に膨らませてブスッとした表情を浮かべた。いくら図々しい圭子とはいえ、夫の実家となると、自分の実家のようには自由に出来ないらしい。

 この家を出ることは決めているものの、琴子もそれを聞き、考えた。

 孫のほのかと一緒にいたい気持ちはあるものの、晃の実家について行くほどの厚かましさはないし、離婚前に変な噂をたてられても困る。だからといって、晃の家で彼とふたりきりになるのも嫌だった。

 ほのかが生まれたことにより、晃のことを少しずつ認めてはいるものの、彼のことを好いているわけでもないし、心を許せないと思っているからだ。もし圭子が妊娠していなければ、絶対に晃との結婚は認めなかったし、義理とはいえ、この男が息子だと思うと嫌悪感すら覚える。

 今まで立ち尽くしていた美羽は琴子の様子を横目で窺いつつ、今を逃すと出られなくなると思い、早口で告げた。

「あ、あの……さっき兄から電話があって。出発が早まったということで、今夜、母のところへ行くことになったんです」
「えっ、そうなのか?」

 義昭が驚いて美羽を振り返る。そこには、拒絶の表情が浮かんでいた。

 義昭は表面上は華江に対して当たり障りなく接しているものの、苦手意識がある。福岡に行くことも年々面倒に思うようになっていたし、あの場にいることも苦痛で堪らなかった。

 美羽は嘘をついているという罪悪感に呑み込まれそうになりつつも、喉をゴクリと鳴らして頷いた。

「うん……お母さんが、早くに来て欲しいみたいで」

 こんな理由が通用するはずがない。緊急の用事でもなければ、義昭は納得しないはずだ。

 これ以上、具体的な理由を聞かれたらどう答えようかと美羽が考えあぐねていると、琴子がボストンバッグを畳の上にストンと置き、義昭の元へと歩み寄って膝がつきそうなぐらい近くで座ると、猫なで声を出した。

「ねぇ、義くん……」
「どうしたの、母さん?」

 義昭が、美羽から琴子へと視線を移す。



「圭子が晃さんの実家に行ってる間、義くんのところに泊めてもらえないかしら」


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