【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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195.隼斗の気遣い

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「じゃ、ケーキを皿に載せていくから、美羽はその上に果物のっけてくれ」
「うん」

 厨房に入ってエプロンを締め終えた美羽に、隼斗がシロップ漬けにしたベリーの容器を渡す。

「うわっ、宝石みたいにツヤツヤしてて綺麗!」

 皿に載せたカスタードケーキのカラメル部分を隼斗がバーナーで少し焼き付け、美羽はその上に見栄えよく見えるようにブラックベリー、ラズベリー、ブルーベリーを飾りつけていく。

「こんな感じで大丈夫?」
「あぁ。冷凍庫に昨日作ったカスタードプリンのアイスがあるから、それ取ってくれるか」
「はい」

 業務用の大きな冷凍庫から容器を取り出し、水につけたアイスクリームスクープと共に渡す。隼斗が容器を開けると、中から乳白色にカラメルが混ざったアイスクリームがあらわれ、美羽のテンションが一気に上がる。

「美味しそう♪」
「だと、いいがな」

 フッと笑みを見せた隼斗に、美羽も目を細めた。

 アイスクリームをスクープで掬って皿に盛りつけながら、隼斗がボソッと呟いた。

「明日からの義昭くんの実家は仕方ないとしても、その後福岡に行く必要はないんだぞ。俺だけ、挨拶してくるし」

 恐らく隼斗は、それを言うためにわざわざ自分を厨房に手伝いとして呼んだのだと思うと、美羽の心臓がキュンと縮まった。

 隼斗が美羽に対して過保護だという浩平の意見は、あながち間違いではないのかもしれないと美羽はクスッと笑った。

「ううん……毎年のことだし、こうでもしないとお母さんに会えないから。
 大丈夫、だよ」

 不安がないと言えば、嘘になる。けれど、隼斗が一緒にいるのだと思えば心強かった。それに、たとえ嫌われているとはいえ、実の母親だ。正月にすら会いに行かないのは親不孝をしているという気持ちにさせられるし、そこで疑いを持たれて類のことを知られれば、それこそことだ。

 これは、母親と離れて暮らすことが出来た自分に与えられている義務なのだと、美羽は言い聞かせていた。

 ふわっと微笑んで答えた美羽に、隼斗はスクープを水につけた。

「そう、か」

 次にストロベリーソースを手に取ると、繊細に皿に斜めに流していく。その流麗な動きを一心に見つめながら湧いてきそうな不安を押しやろうとする美羽に、隼斗が力強く告げた。

「心配するな。何かあれば、義昭くんもいるし、俺もいる」
「うん、そうだね……」

 義昭さんも、そこに……

 安心させようとした隼斗の言葉は、美羽の心を一層重苦しくした。
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