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133.仕組まれた出会い

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 それは、リョウから受け取ったメッセージがきっかけだった。

『カフェで、ルイそっくりの女の子を見かけた』

 それを読んだ義昭はいてもたってもいられなくなり、リョウに連絡して居場所を突き止め、美羽の働くカフェに通うようになり、交際し、結婚に至った。

 あの時は類とそっくりな女性が存在することに浮かれてトランス状態になっていて、落ち着いて考えられなかったが、今になって思い返すと色々と疑問が湧いてくる。

 義昭は、留学中リョウと友達だったわけでもなければ、言葉すら交わしたことがなかった。

 帰国後、リョウからFaice bookに友達申請が来て驚いたが、彼のページにはトモをはじめ他の留学生仲間の名前が上がっていたので、そのうちのひとりなのだろうと、何も気に止めることなく許可した。

 義昭はFaice bookを自分の書き込みの為ではなく、友人の書き込みやメッセージを見る為だけに使っていたので、当然リョウからコメントや『いいね!』が届くことはなく、彼もまた書き込みをしていなかったので、全くやりとりがないまま時が過ぎていた。

 にも関わらず、2年経っていきなりリョウからあのメッセージが入ってきたのだ。今思えば、書き込みにすれば一気に留学仲間に伝えることが出来、反応がもらえるのに、親しくもない義昭に個人メッセージを送ってくるのはおかしな話だ。
 美羽と会ってから暫くたってFaice bookを見ると、リョウのアカウントはいつの間にか消えていたのも不可解だった。

 なんのために、あのメッセージを送ったんだ?

 そこで、直接リョウに会って真意を確かめたかったのだが、人脈が広い智之ですら連絡先を知らないということで、その道は絶たれてしまった。

 だが、新たに分かった事実もある。

 リョウからのメッセージを、トモは受け取っていない。

 あの時僕は、他のやつらにも同じメッセージを送ってるんだと思ってたが、考えてみればあのカフェで留学仲間に会ったことは一度もなかったし、美羽からそんな話を聞いたこともなかった。

 あれは、僕だけに送られたものだった、ってことなのか……?
 そのために、Faice bookで繋がっていたのか?
 
 先程の智之の言葉が、胸の中でこだまする。

『リョウもルイの信奉者だったんだよな』

 類と会話を交わしながら生き生きした表情を見せる、リョウを思い浮かべる。



 ーーもしあれが、ルイの指示だったとしたら?



 それなら、美羽の存在も、彼女がそこで働いているのを知っていたことも納得がいくような気がするが、腑に落ちない。 

 どうしてルイは、間接的に僕と美羽を出会わせるようなことをしたんだ。
 もし僕に姉を紹介したかったのなら、直接声を掛けてくれれば良かったのに。なぜあんな、遠回しな方法をとったんだ? 

 しかも、帰国して1年も経ってから。リョウとは、たかが夏季の短期留学で知り合ったぐらいの仲なんだから、時間が経っていれば無視される可能性だってあるかもしれなかったのに。

 まだ他にも疑問はある。

 なぜ、僕が選ばれたんだ?

 ルイの取り巻きたちは義昭よりもずっと容姿端麗で華やかで、口説き方にも慣れていた。もし美羽を落とそうとするなら、そういった連中に頼む方が確実だ。

 真面目で地味で目立たない、いかにも恋愛に疎そうな僕を選んだ根拠は、いったいなんなんだ。

 大学の時、ルイに最も近づけたのはあの夜だけだった。

 とは言っても、身体的に近づけたわけじゃない。義昭は、離れたところから類を眺めて崇拝することしか出来なかった。あの夜、一瞬だけ……心理的に類に近づけた気がしただけだ。

 あの時の光景は、今でも瞼の裏に焼き付いている。こっそり撮った写真とビデオはパスワードをかけて保存し、時折眺めては恍惚している。

 もう既にあの時点で、ルイは僕の想いに気づいていたのか?

 艶かしい類の視線が一瞬でも自分に向けられていたのかと思うと、ゾクリと義昭の背筋が震えた。
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