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117.吐露したい思い
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店内のクリスマスツリーの電飾ライトがタイマーによって自動点灯され、周囲の光景をチカチカと照らした。それはロマンティックでありながら、どこか物悲しくも見えた。
香織はフッと自嘲的な笑みを浮かべた。
「毎年クリスマスが近づくと気分が重くなるんだよね。私、何やってんだろって思っちゃうの。クリスマスもお正月も一緒に過ごせない人を好きになったって、辛いだけなのにって……
私も美羽みたいに、大切にしてくれる旦那さん見つけられたらいいのに。
美羽、最近凄く綺麗になったよね。義昭さんに愛されてるの分かるよ。
ボーッとしたり、あくびしたりしてるのも、そうなんでしょ? 義昭さんって激しいイメージないけど、実は夜は凄かったりするの?」
シリアスからガラリと雰囲気を変えてニヤニヤとした笑みを浮かべながらいきなり下世話な質問をしてきた香織に、美羽は真っ赤になって抗議した。
「ちょっ、かおりん!!」
そんな、想像すらしたくないよ……
美羽が照れているのだと勘違いした香織は、フフッとどこか哀愁を帯びた笑みを見せた。
「結婚して愛し合えるって、羨ましいよ……」
香織の言葉に、美羽の胸がキリキリと痛む。
私が綺麗になっているとしたら……
それは、義昭さんではなく、類に愛されているから。
彼に愛されたいと願ってしまっているから。
そのために、肌やボディの手入れに時間をかけるようになったし、食生活にも気をつけるようになった。
義昭さんに大切にしてもらってないし、彼に嫌悪感すら抱いてしまっている。
結婚したことを、後悔すらしているというのに……
かつて恋人だった弟の類と一緒に暮らし始めてから、美羽の心はすっかり変化してしまった。
何をしていても、類のことを考えてしまう。
家にいるときは、つい類を視線で追ってしまう。
類と瞳を合わすだけで、胸が高鳴ってしまう。
白く細い指先を見るだけで、躰が熱くなる。
笑顔で話しかけられると、胸が苦しくなる。
いくら必死に否定しても、言い逃れなど出来ない。
美羽は、類に愛される夜が来るのを、待ち遠しく思うようになっていた。仕事中でも、彼に愛された記憶が蘇ってしまうほどに。
類に恋をしていることは、誤魔化しようのない事実だ。
美羽は俯き、唇を噛み締めた。
今はまだ、類からの愛撫に抵抗しているけれど、いつか陥落しそうで恐い。何よりも恐いのは、それを自分が心の奥底で望んでいると知っているから。
弟として甘えながらもさり気ない優しさを見せる昼間の類と、愛の言葉を囁きながら迫る妖艶な夜の類。
分かってる。私は、彼の掌で踊らされているのだと。
それでもいいと思ってしまいそうになる自分を、必死に食い止めている。
美羽は顔を上げると香織の横顔を見つめ、唇を僅かに開いた。
ひた隠しにして耐えているのが辛いの。もう、限界なの。
類に愛されたい。
深く愛し合いたい。
そう、本能が訴えている。
もう自分の中だけでは抑えきれない。
誰かに聞いて欲しい。
かおりんに、打ち明けたい……
美羽は意を決して、息を大きく吸い込んだ。
その途端、香織がパンッと手を叩いた。
「さっ、仕事、仕事!!
これからクリスマスに向けて忙しくなるんだから、気合入れないとね!!」
「う、ん……」
言え、なかった……
弱々しく頷いている間に客が入ってきて、香織は颯爽と歩き去った。その後ろ姿を見つめながら、胸にチクリと針がささる。
カオリンはこうして私に他の人には言えない悩みを打ち明けてくれているのに、私は類とのことだけじゃなく、義昭さんのことすら、打ち明けられていない。
本当は、話を聞いてもらいたくて仕方ないのに。
すぐに打ち明けられなかったのは、迷いがあったからだ。
カオリンとは付き合いが長いし、大好きなのに……ううん、大好きな友達だからこそ打ち明けられない。
類との過去を打ち明けて、もし引かれたら、嫌われたらどうしようって思ってしまう。
大切な友達を、失いたくない。
切なく睫毛を揺らし、拳を握った。
香織はフッと自嘲的な笑みを浮かべた。
「毎年クリスマスが近づくと気分が重くなるんだよね。私、何やってんだろって思っちゃうの。クリスマスもお正月も一緒に過ごせない人を好きになったって、辛いだけなのにって……
私も美羽みたいに、大切にしてくれる旦那さん見つけられたらいいのに。
美羽、最近凄く綺麗になったよね。義昭さんに愛されてるの分かるよ。
ボーッとしたり、あくびしたりしてるのも、そうなんでしょ? 義昭さんって激しいイメージないけど、実は夜は凄かったりするの?」
シリアスからガラリと雰囲気を変えてニヤニヤとした笑みを浮かべながらいきなり下世話な質問をしてきた香織に、美羽は真っ赤になって抗議した。
「ちょっ、かおりん!!」
そんな、想像すらしたくないよ……
美羽が照れているのだと勘違いした香織は、フフッとどこか哀愁を帯びた笑みを見せた。
「結婚して愛し合えるって、羨ましいよ……」
香織の言葉に、美羽の胸がキリキリと痛む。
私が綺麗になっているとしたら……
それは、義昭さんではなく、類に愛されているから。
彼に愛されたいと願ってしまっているから。
そのために、肌やボディの手入れに時間をかけるようになったし、食生活にも気をつけるようになった。
義昭さんに大切にしてもらってないし、彼に嫌悪感すら抱いてしまっている。
結婚したことを、後悔すらしているというのに……
かつて恋人だった弟の類と一緒に暮らし始めてから、美羽の心はすっかり変化してしまった。
何をしていても、類のことを考えてしまう。
家にいるときは、つい類を視線で追ってしまう。
類と瞳を合わすだけで、胸が高鳴ってしまう。
白く細い指先を見るだけで、躰が熱くなる。
笑顔で話しかけられると、胸が苦しくなる。
いくら必死に否定しても、言い逃れなど出来ない。
美羽は、類に愛される夜が来るのを、待ち遠しく思うようになっていた。仕事中でも、彼に愛された記憶が蘇ってしまうほどに。
類に恋をしていることは、誤魔化しようのない事実だ。
美羽は俯き、唇を噛み締めた。
今はまだ、類からの愛撫に抵抗しているけれど、いつか陥落しそうで恐い。何よりも恐いのは、それを自分が心の奥底で望んでいると知っているから。
弟として甘えながらもさり気ない優しさを見せる昼間の類と、愛の言葉を囁きながら迫る妖艶な夜の類。
分かってる。私は、彼の掌で踊らされているのだと。
それでもいいと思ってしまいそうになる自分を、必死に食い止めている。
美羽は顔を上げると香織の横顔を見つめ、唇を僅かに開いた。
ひた隠しにして耐えているのが辛いの。もう、限界なの。
類に愛されたい。
深く愛し合いたい。
そう、本能が訴えている。
もう自分の中だけでは抑えきれない。
誰かに聞いて欲しい。
かおりんに、打ち明けたい……
美羽は意を決して、息を大きく吸い込んだ。
その途端、香織がパンッと手を叩いた。
「さっ、仕事、仕事!!
これからクリスマスに向けて忙しくなるんだから、気合入れないとね!!」
「う、ん……」
言え、なかった……
弱々しく頷いている間に客が入ってきて、香織は颯爽と歩き去った。その後ろ姿を見つめながら、胸にチクリと針がささる。
カオリンはこうして私に他の人には言えない悩みを打ち明けてくれているのに、私は類とのことだけじゃなく、義昭さんのことすら、打ち明けられていない。
本当は、話を聞いてもらいたくて仕方ないのに。
すぐに打ち明けられなかったのは、迷いがあったからだ。
カオリンとは付き合いが長いし、大好きなのに……ううん、大好きな友達だからこそ打ち明けられない。
類との過去を打ち明けて、もし引かれたら、嫌われたらどうしようって思ってしまう。
大切な友達を、失いたくない。
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