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116.友人の不倫

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 ランチ休憩が終わって表に戻り、ハァーッと盛大に溜息を吐いていると香織にクスッと笑われた。

「どうしたの? よっしーに何か言われた?」
「別、に……」
「どうせ、『子供はまだぁ?』なんて言われたんでしょ。自分が2人目出来たからって、みんな妊娠しなくちゃいけないわけじゃないのにね」
「う、ん……」

 何も言わなくても美羽の気持ちを汲み取ってくれる、香織の存在は貴重だった。

「おつかれさまぁ!」

 突然顔を出した芳子にふたりしてビクッとし、振り返ると笑みを浮かべた。

「よ、よっしー……帰ったはずじゃ」
「それがさぁ、車運転してる途中で携帯置いてきたことに気づいて慌てて帰ってきたのよ。妊娠すると物忘れが酷くなっちゃってダメねー、アハハ」

 芳子の様子からすると、ふたりの話は聞かれていなかったようだ。

「そうだったんだ」
「んじゃ、また明日ねー!」
「気をつけてね」

 芳子が裏口に向かい、姿が見えなくなるとお互い肩を竦めた。

「ビックリしたぁ」
「ほんと……」

 香織がもう一度振り返って芳子がいないのを確認すると、ハァッと大きく溜息を吐いた。
 
「私もさ、さっきヨッシーに『アラフォーになったら結婚できる確率がガクンと落ちるんだから、今のうちに結婚しなきゃダメよ!』なんて説教くらっちゃったわ。ほんっと、余計なお世話だよね……」

 香織の言葉に棘を感じて、美羽は黙り込んだ。

 香織は大学生の頃、当時専任講師だった藤岡と不倫関係になり、香織が大学を卒業し、彼が准教授となってからもその関係は続いている。

 藤岡は見た目真面目そうだし、人当たりも柔らかく、とても不倫するようなタイプには見えなかったので、初めて聞いた時には驚いたが、その間に妻が妊娠し、子供を二人も授かったことも更に驚きだった。

 長身でスラッとしたモデルのような体型で、切れ長の涼しい瞳にきりりとした口元のショートカットが似合う香織は、さばさばした頼れる姉御肌な性格で、男女問わず多くの人から慕われ、好かれていた。

 いつも自分の考えをはっきりと主張できる香織が、なぜ恋愛では藤岡の『2番目の女』に甘んじているのか、美羽には理解出来なかったし、大切な友達がこんな扱いをされていることが悔しくて腹立たしかった。

 だからと言って、後ろ暗い過去を持つ自分が香織に説教できる資格などないと、ずっと見守っているだけしか出来ない。そんな自分が歯痒かった。
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