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110.覚醒の時
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再生ボタンを押し、
『お、おい大丈夫か?』
義昭の声が流れたのを確認して削除すると、ピーッと音が鳴った。
続いて、『そうか』という声も削除する。
今度は別のアプリを立ち上げ、穏やかな寝顔を見せている美羽を画面に映した。
「僕の眠り姫……」
画面に唇を寄せてチュッとリップ音を鳴らした。長い睫毛を上げ、アーモンド型の大きな瞳に妖しい光を映して不敵な笑みを浮かべる。
さぁ、覚醒の時は近づいてるよ……
僕がその硬い殻を破いてあげる。
その表情は、ゾクリとする程に美しく残酷だった。
ずっと深い深い闇の底に沈んでいた。
君と再び逢えるその時を待ち続け。
凍りついた漆黒の深部は、硬く閉ざされていた。
何も見えない。
何も聞こえない。
何も感じない。
全ての五感を閉ざし、心に鍵を掛けることで守ってきた。
君が僕を見つけてくれるまで。
さぁ、僕の名前を呼んで。
強く求めて。
僕をこの暗闇から救い出して。
覚醒させて。
僕に流れる忌まわしいこの血が、君と同じものならば
愛おしいと思えるから。
ずっと失くしていた欠片。
君だけが、僕に与えられるんだ。
凍った血を滾らせることが出来る。
空虚になった心を埋められる。
僕に生命を与えて。
温もりを。
愛を。
どうか、与えて?
その為なら、どんな犠牲も厭わない。
僕は、悪魔にだってなれるんだ。
「ック……」
美羽のことを考えて再び肉欲が滾りそうになり、必死に抑えた。
こんなに近くにいるのに触れられないもどかしさに、狂いそうになる。今すぐにでも美羽の部屋にいき、躰から心まで全て蹂躙し、自分のものにしたい。
けれど、事を急いては全てを失ってしまう。
それは、過去の経験が物語っている。
苦い思いが胸の中に広がり、類は美しい眉をグッと寄せ、唇を噛み締めた。
もうあの時の僕とは違う。
何の考えもなしに、ミューと駆け落ちしようとしていた僕とは。
10年もの間、辛酸を嘗めたのはなんのためだったか、思い出せ。
瞼をギュッと強く閉じ、それから睫毛を揺らして瞳を開き、眠る美羽を見つめた。
『お、おい大丈夫か?』
義昭の声が流れたのを確認して削除すると、ピーッと音が鳴った。
続いて、『そうか』という声も削除する。
今度は別のアプリを立ち上げ、穏やかな寝顔を見せている美羽を画面に映した。
「僕の眠り姫……」
画面に唇を寄せてチュッとリップ音を鳴らした。長い睫毛を上げ、アーモンド型の大きな瞳に妖しい光を映して不敵な笑みを浮かべる。
さぁ、覚醒の時は近づいてるよ……
僕がその硬い殻を破いてあげる。
その表情は、ゾクリとする程に美しく残酷だった。
ずっと深い深い闇の底に沈んでいた。
君と再び逢えるその時を待ち続け。
凍りついた漆黒の深部は、硬く閉ざされていた。
何も見えない。
何も聞こえない。
何も感じない。
全ての五感を閉ざし、心に鍵を掛けることで守ってきた。
君が僕を見つけてくれるまで。
さぁ、僕の名前を呼んで。
強く求めて。
僕をこの暗闇から救い出して。
覚醒させて。
僕に流れる忌まわしいこの血が、君と同じものならば
愛おしいと思えるから。
ずっと失くしていた欠片。
君だけが、僕に与えられるんだ。
凍った血を滾らせることが出来る。
空虚になった心を埋められる。
僕に生命を与えて。
温もりを。
愛を。
どうか、与えて?
その為なら、どんな犠牲も厭わない。
僕は、悪魔にだってなれるんだ。
「ック……」
美羽のことを考えて再び肉欲が滾りそうになり、必死に抑えた。
こんなに近くにいるのに触れられないもどかしさに、狂いそうになる。今すぐにでも美羽の部屋にいき、躰から心まで全て蹂躙し、自分のものにしたい。
けれど、事を急いては全てを失ってしまう。
それは、過去の経験が物語っている。
苦い思いが胸の中に広がり、類は美しい眉をグッと寄せ、唇を噛み締めた。
もうあの時の僕とは違う。
何の考えもなしに、ミューと駆け落ちしようとしていた僕とは。
10年もの間、辛酸を嘗めたのはなんのためだったか、思い出せ。
瞼をギュッと強く閉じ、それから睫毛を揺らして瞳を開き、眠る美羽を見つめた。
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