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106.疑い
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洗面所へと向かう類に、義昭が遠慮がちに声を掛けた。
「あっ、ルイ!」
「なぁに、ヨシ?」
だが義昭は顔を赤くして口をモゴモゴさせるだけで、言葉にならない。類は苛立ちを露わにして声を荒げた。
「あのさぁ、お腹空いてるんだけど!」
「あ、悪い……いや、いいんだ……」
唇をギュッと閉じた義昭に類は一瞬鋭い視線を流すと、何も言わずにそのまま通り過ぎた。
洗面所で蛇口を捻り、手を洗いながら類が歯噛みした。
言いたいことがあるなら、サッサと言えよ!
あー、ムカツク!!
義昭は類の背中を見送り、洗面所から流れる水の音を聞きながら、溜息を吐いた。それから、筑前煮をよそう美羽の背中を見つめる。
なぁルイ……
お前と美羽って……10年も離れていた姉弟にしては、親しすぎないか?
さっき、遠目でよく分からなかったけど、ルイが美羽のほっぺにキスしたような。
姉弟でキスなんて日本ではありえないが、ルイはアメリカ育ちだから家族同士でほっぺにキスするぐらい普通なの、か……?
アメリカ留学中に1週間だけ滞在したホームステイ先で母親が成人した息子の頬にキスをしているのを見かけたことがあったことを思い出した。
あの時、類に直接聞けば笑って答えてくれたのだろうが、義昭は踏み込むことを躊躇ってしまった。
ふたりが抱き合う姿は葬儀で再会した時と父親から虐待を受けたことを類が告白した時に見ていたが、あれは異常な状況下でのことだったので、すんなりと受け入れられた。だが今は、なんでもない日常下ということもあってか、なんとなく違和感を覚えた。
消化できない思いが心のなかでわだかまっていくのを感じながら、義昭はゆっくり階段を上がっていった。
「あっ、ルイ!」
「なぁに、ヨシ?」
だが義昭は顔を赤くして口をモゴモゴさせるだけで、言葉にならない。類は苛立ちを露わにして声を荒げた。
「あのさぁ、お腹空いてるんだけど!」
「あ、悪い……いや、いいんだ……」
唇をギュッと閉じた義昭に類は一瞬鋭い視線を流すと、何も言わずにそのまま通り過ぎた。
洗面所で蛇口を捻り、手を洗いながら類が歯噛みした。
言いたいことがあるなら、サッサと言えよ!
あー、ムカツク!!
義昭は類の背中を見送り、洗面所から流れる水の音を聞きながら、溜息を吐いた。それから、筑前煮をよそう美羽の背中を見つめる。
なぁルイ……
お前と美羽って……10年も離れていた姉弟にしては、親しすぎないか?
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