【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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85.疑心暗鬼

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 すぐにお風呂に入る気持ちにもなれず、ベッドに腰掛けるとなんとなく違和感を覚えた。

 見回してみても、いつもと同じ光景。全てが収まるべきところに収まっている。

 ーーそれなのに、なぜか胸騒ぎがした。

 ベッドから立ち上がり、カーテンを見てハッとする。窓に掛かっているのは断熱カーテンのため、いつも美羽は上から下までぴっちりと重なるようにカーテンを閉めているのだが、そこに僅かに隙間があるのだ。カーテンを開け、窓を見るといつもより結露が少ない気がする。

 窓が開けられたって、こと?

 蒼白になり、慌ててクローゼットの一番上の引き出しを開ける。朝と同じ、綺麗にセットされた下着。ふと桜色のブラジャーを手に取ると、なぜかゾクリと震えた。視線を感じてそちらに顔を向けると、ドレッサーの鏡に映った自分の姿だった。まるで視姦されているような気持ちになる。

 書棚を上から順に確認し、その中でも一番お気に入りの本を取り出してパラパラとページを捲ると、本棚に戻した。

 再びベッドに戻ると、布団を捲る。朝起きた時とは、どこか違うことを本能的に感じる。布団から類の残り香が匂い立つような気持ちに襲われる。

 まさか、類……部屋に入ってないよね?
 鍵を掛けてから部屋を出たのは間違いないのだから、類がここに入る筈がない……

 そう思いつつも、疑いを完全に拭うことが出来ない。

 もし類が鍵をかけていた部屋に入れたのだとしたら……今日だけじゃない。今後も入ってくる可能性だってある。
 私がこの部屋にいる時にだって。

 そう考えた途端美羽はハッとし、急いで扉に向かうと鍵をかけた。それから、ベッドのサイドテーブルの引き出しに手を伸ばす。

 ジュエリーボックスの奥の小物入れを手に取り、中を確認するとそこには小型の電動マッサージ器が入っている。



 これを類に見つけられたら……お終いだ。



 類には絶対に知られたくない。義昭に対してよりも強くそう思った。

 それは、類と付き合ってた時、いくらお願いされても美羽はずっとその手の玩具を使うことを断固拒否していたことが理由のひとつにあった。

 そんな自分が今は自らそれを手にし、自慰に耽っているなんて知られたら、死にたいぐらい恥ずかしい。想像するだけで、全身が震えた。

 今後見つけられないようにするためには……捨てるしか、ない。

 美羽は小物入れからそれを取り出すとバッグのポケットに入れ、ジッパーを閉じた。 

 今まで、息がつまるような夫婦生活においての逃げ場がこの部屋だった。ここでは美羽は、ありのままの自分でいられたし、リラックスすることが出来た。



 でも、類が来た今は……自分の部屋でさえ、リラックス出来ない。
 全てを見られている気がする。



 美羽は急いで下着と夜着を手に取ると、逃げるように浴室へと向かった。
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