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77.鍵付きのファイル
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「たぶん帰りは9時ぐらいになると思うから、それまでゆっくりしてて! 冷蔵庫のものは勝手に食べたり飲んだりしていいし、TVも好きに見てていいから!!」
そう言い残して慌てて家を出て行こうとする美羽に、類が声を掛ける。
「ミュー、タオルは?」
「あ!」
まだ手に持ってた……
「フフッ、洗濯カゴに入れておけばいい?」
「うん、ありがとう。じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃーい」
美羽の背中に声を掛け、閉まった扉に類が投げキッスした。受け取ったタオルに顔を埋めてから首に掛け、ニヤッと笑みを浮かべる。
「さーて、楽しい家探ししよっかな♪」
類は先ほど見て回れなかった二階へと軽い足取りで向かった。
二階には浴室とトイレ、そして向かい合う形で部屋が2つ並んでいた。
たぶん、ミューの部屋はこっち。
取っ手に手を掛けたが、鍵がかかっている。
クスッ。そんなことしても、無駄なのにね……
類はもう一方の扉の取っ手に手を掛けた。そちらには鍵がかかっておらず、簡単に開いた。
「クソつまんねー部屋だな」
低い声で吐き捨てる。
義昭の部屋はモノトーンで統一されたダブルサイズのベッドとデスクとキャビネットと書棚、それにクローゼットだけの飾り気のないシンプルな部屋だった。
クローゼットを開けると、そこにもモノトーンの白いワイシャツと黒のスラックスがずらっと並び、片隅に申し訳程度にジャケットやニットが置かれていた。
「だっさ」
ベッドの下を覗いてみたが、奥の白い壁が見えるだけ。デスクの引き出しを開けてみたが、文房具しか入っていない。定規だけを抜き取ると、今度はデスクの上に置かれたパソコンのマウスに手を触れる。スリープ状態だったパソコンは、すぐに立ち上がった。
無防備だね。
メールを開くと既にログインの状態となっていて、簡単に覗くことができた。だが、そこには仕事上のやりとりや企業からのPRメール等しかない。
「チッ……ほんっと、つまんねー男」
あとは……
ドキュメントを開き、ファイルをざっと見渡す。どれも仕事関係のものばかりだ。その中で、ひとつだけ鍵がかかっているものがあった。ファイルをクリックするとパスワードの画面が開く。
さーて、何が出るかな♪
類は立ち上がり、デスク横のキャビネットを上から開いた。そこには、書類が几帳面に整理されている。健康保険証を探し出して手元に置くと、ポケットから取り出したUSBケーブルをパソコンに繋ぎ、その中に入っているプログラムを立ち上げる。
立ち上がったプログラムには名前や生年月日、電話番号等の欄がある。これを入力すると、プログラムが自動的に100万通り以上のパスワードを作成し、アクセスしてくれるのだ。
だが、エラー続きでなかなか開かない。類はプログラムをいったん止め、別の名前を入力してみた。
すると、システムが起動してからすぐ、パスワードが開いた。
「ビーンゴ♪」
類はフッと笑みを浮かべてファイルを開いた。
そこには何枚かの写真が入っていた。義昭が、アメリカ留学中に撮影したものだ。ざっと眺めていた類の視線が、そこに紛れていた動画に止まる。
こんなのも、持ってたのか。
全てコピーし終えると、類はパソコンを再びスリープに戻した。
そう言い残して慌てて家を出て行こうとする美羽に、類が声を掛ける。
「ミュー、タオルは?」
「あ!」
まだ手に持ってた……
「フフッ、洗濯カゴに入れておけばいい?」
「うん、ありがとう。じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃーい」
美羽の背中に声を掛け、閉まった扉に類が投げキッスした。受け取ったタオルに顔を埋めてから首に掛け、ニヤッと笑みを浮かべる。
「さーて、楽しい家探ししよっかな♪」
類は先ほど見て回れなかった二階へと軽い足取りで向かった。
二階には浴室とトイレ、そして向かい合う形で部屋が2つ並んでいた。
たぶん、ミューの部屋はこっち。
取っ手に手を掛けたが、鍵がかかっている。
クスッ。そんなことしても、無駄なのにね……
類はもう一方の扉の取っ手に手を掛けた。そちらには鍵がかかっておらず、簡単に開いた。
「クソつまんねー部屋だな」
低い声で吐き捨てる。
義昭の部屋はモノトーンで統一されたダブルサイズのベッドとデスクとキャビネットと書棚、それにクローゼットだけの飾り気のないシンプルな部屋だった。
クローゼットを開けると、そこにもモノトーンの白いワイシャツと黒のスラックスがずらっと並び、片隅に申し訳程度にジャケットやニットが置かれていた。
「だっさ」
ベッドの下を覗いてみたが、奥の白い壁が見えるだけ。デスクの引き出しを開けてみたが、文房具しか入っていない。定規だけを抜き取ると、今度はデスクの上に置かれたパソコンのマウスに手を触れる。スリープ状態だったパソコンは、すぐに立ち上がった。
無防備だね。
メールを開くと既にログインの状態となっていて、簡単に覗くことができた。だが、そこには仕事上のやりとりや企業からのPRメール等しかない。
「チッ……ほんっと、つまんねー男」
あとは……
ドキュメントを開き、ファイルをざっと見渡す。どれも仕事関係のものばかりだ。その中で、ひとつだけ鍵がかかっているものがあった。ファイルをクリックするとパスワードの画面が開く。
さーて、何が出るかな♪
類は立ち上がり、デスク横のキャビネットを上から開いた。そこには、書類が几帳面に整理されている。健康保険証を探し出して手元に置くと、ポケットから取り出したUSBケーブルをパソコンに繋ぎ、その中に入っているプログラムを立ち上げる。
立ち上がったプログラムには名前や生年月日、電話番号等の欄がある。これを入力すると、プログラムが自動的に100万通り以上のパスワードを作成し、アクセスしてくれるのだ。
だが、エラー続きでなかなか開かない。類はプログラムをいったん止め、別の名前を入力してみた。
すると、システムが起動してからすぐ、パスワードが開いた。
「ビーンゴ♪」
類はフッと笑みを浮かべてファイルを開いた。
そこには何枚かの写真が入っていた。義昭が、アメリカ留学中に撮影したものだ。ざっと眺めていた類の視線が、そこに紛れていた動画に止まる。
こんなのも、持ってたのか。
全てコピーし終えると、類はパソコンを再びスリープに戻した。
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