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69.遺書の謎
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別れ際、玄関まで見送った類はブラウン弁護士と固い握手を交わした。
『いろいろありがとう』
『日本での生活を、楽しんでな……』
類は美羽との生活を思い浮かべ、微笑んだ。
『あぁ。これから、楽しくなりそうだよ』
玄関を出たブラウン弁護士は、まるで悪夢から醒めたような面持ちだった。後ろを振り返り、類の家を見上げる。
彼の胸に、宏典から遺言書を作成したいからと呼び寄せられ、初めてこの家を訪問した日のことが思い浮かんだ。
今でも分からない。
なぜヒロノリは遺産の全てをミウに渡すことにしたのか……あの時の彼の目は落ち窪み、虚ろだった。
遺言書は作成したものの、結局、類は遺産の半分を手にした。それは美羽の意思に基づき、自分の弁護士としての今までの知識と経験を元に助言し、皆が納得した上でそうなったはずだった。
にも関わらず、ブラウン弁護士はまるで犯罪の片棒を担がされたような気持ちを拭い切れずにいた。
もしかしてルイは、最初からそのつもりだったのか……?
類の画策によって、そうなった気がしてならない。自分は、魅惑的な悪魔にもう少しで取り憑かれてしまうところだったのかもしれないと思うと、背筋がゾクッと震えた。
彼の棲家に背を向け、片手を軽く挙げて立ち去った。
「Good-bye, sweet devil」
スマホを手に取ると着歴から電話をかけ、耳に当てる。
『もしもし……いや、君の声が急に聞きたくなったんだ。
今日のディナー、楽しみにしてるよ……早く、会いたい』
『いろいろありがとう』
『日本での生活を、楽しんでな……』
類は美羽との生活を思い浮かべ、微笑んだ。
『あぁ。これから、楽しくなりそうだよ』
玄関を出たブラウン弁護士は、まるで悪夢から醒めたような面持ちだった。後ろを振り返り、類の家を見上げる。
彼の胸に、宏典から遺言書を作成したいからと呼び寄せられ、初めてこの家を訪問した日のことが思い浮かんだ。
今でも分からない。
なぜヒロノリは遺産の全てをミウに渡すことにしたのか……あの時の彼の目は落ち窪み、虚ろだった。
遺言書は作成したものの、結局、類は遺産の半分を手にした。それは美羽の意思に基づき、自分の弁護士としての今までの知識と経験を元に助言し、皆が納得した上でそうなったはずだった。
にも関わらず、ブラウン弁護士はまるで犯罪の片棒を担がされたような気持ちを拭い切れずにいた。
もしかしてルイは、最初からそのつもりだったのか……?
類の画策によって、そうなった気がしてならない。自分は、魅惑的な悪魔にもう少しで取り憑かれてしまうところだったのかもしれないと思うと、背筋がゾクッと震えた。
彼の棲家に背を向け、片手を軽く挙げて立ち去った。
「Good-bye, sweet devil」
スマホを手に取ると着歴から電話をかけ、耳に当てる。
『もしもし……いや、君の声が急に聞きたくなったんだ。
今日のディナー、楽しみにしてるよ……早く、会いたい』
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