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61.リアルな夢

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 ピピピ……という電子音で美羽はハッと目を覚ました。全身に汗をかいている。ここが自分の部屋であることを確認すると、肺から大きく息を吸い、吐きながら躰を弛緩させた。

 ゆ、め……

 とてもリアルな夢を見た。

 赤いライトが照らされた妖しい部屋の鏡の中に閉じ込められ、向かい合わせになった類に愛撫されていた。鏡越しで感触などないはずなのに、類の指や舌の感触だけでなく、息遣いや熱、せ返るような薔薇の匂いまで伝わってきてゾクゾクした。

 それよりも美羽を驚愕させたのは、類がまるで美羽そのもののような格好をしていたことだった。長い髪の毛、メイクアップ、胸まで膨らみがあり……服も、類と空港で別れた際に着ていたドレスを身に纏っていた。まるで、自分に愛撫されているような、そんな錯覚に陥った。

 けれど、ワンピースを着たまま鏡の中のミューを抱き締め、押し付けてきたそれは間違いなく類の感触で……

『あぁ、ミュー!! 僕を……ハァッ、ハァッ……僕を、受け入れて……』

 切なく甘い声が、まだ耳に残っている。

 熱い猛りから発射された液体が、太腿にべったりとついているような気になって、そっと指を沿わせてみたら、そこはしっとりと濡れていて……

「ヒッッ!!」

 ビクンと恐怖に震えて愕然としたが、冷静になってみるとそれは美羽の蜜口から溢れ出した自身の愛液だった。夢の最後に告げられた、類の言葉が蘇ってくる。

『フフッ、今度こそ……逃がさないよ。確実に、僕のものにしてあげる』
 
 その声は、まるで美羽の耳に直接囁かれたかのようにこびりついて離れない。

 美羽と類は離れていても、一方が怪我をしたり、病気になった時には同じようなことが他方に起こったり、どちらかが激しい感情を持った時にそれがもう一方にも流れ込んできたりといったことが時々あった。

 時々、というのは語弊ごへいがあるかもしれない。なぜなら、大抵ふたりは一緒にいて、その感情を同じ時に共有することが殆どだったからだ。

 美羽が類と決別し、気持ちを抑えるようになってからはなくなっていたが、再会して類への感情にコネクトしたことによって再びシンクロニシティが始まっているのかもしれない。

 もしかして、LA滞在中にあれだけの躰の疼きを覚えていたのは、類への欲情だけではなく、類の私への欲情までも流れ込んできたから、なの?

 そう推察すると、この夢もまた、単なる夢ではないように思えてきてゾクリと震えた。



 類……貴方は今、何を考えているの?



 淫靡な熱に犯されそうで、美羽は気怠い躰を起こすと、シャワーを浴びに浴室へ向かった。
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