【R１８】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

５７.推察

　飛行機の窓に映る、小さくなっていくLAの景色を見つめながら、行きとは異なる気持ちでどんよりと心が重くなる。

　ここに来なければ、類と再会することもなかったのに……

　胸に疼いているのは後悔。けれど、そこには興奮とときめきも間違いなく混ざっていた。

　ずっと感じることのなかった、胸の高鳴り。
　そう、恐いのは類ではなく、自分自身なのだ。

　それほど接触のなかったLA滞在中でさえも、美羽の心は大きく揺さぶられた。

　一緒に暮らすとなれば、もっと深く関わってしまうことになる。冷静でなんて、いられない……

　飛行機が安定体勢に入り、シートベルトサインが消えると、飲み物のサービスが始まった。座席ギリギリの幅のワゴンが少しずつ近づいてくる。

「What can I get for you?」

　４０代前半と思われる化粧の濃いキャビンアテンダントが、愛想のない表情で早口で声を掛けてきた。こんな時、日本のサービスは世界に誇るべきレベルの高さだと認識する。

　彼女が何を言ったのか聞き取れなかったものの、状況からして飲み物の種類を聞いているのだろうと予測し、美羽は少し引き攣った笑顔で「Coffee, please」 とお願いし、カップを受け取った。普段コーヒーを飲むことはないが、眠れそうにないし、刺激のあるものを欲していた。義昭は珍しくワインを頼んでいた。

　コーヒーを口にすると、喉に熱いものが通っていく感覚がリアルに感じられ、飲み慣れていないその刺激に胃が反応してキューッと縮まった分、頭が冴えていく気がする。

　アメリカにいた時は激流の真っ只中にいて何も見えなかったが、離れたことにより、ようやく美羽は今回の一連の出来事を冷静に考える心の余裕が出来つつあった。

　一体、どうしてこんなことになってしまったんだろう。