59 / 498
55.滾る欲情
しおりを挟む
それから4日間、義昭と美羽はLAのホテルに滞在した。
類とは遺産相続のことでブラウン弁護士と共に毎日のように顔を合わせたが、あれから類の自宅に呼ばれることは一度もなく、毎回弁護士事務所で会っていた。義昭が類を観光に誘っても、まだ遺産整理が終わっていないからということで断られ、打ち合わせの後で夕食を共にしても、遅くまで引き止められるようなことはなかった。
これからぐいぐい類に迫られるのでは……と心配していた美羽は、すっかり肩透かしをくらい、寂しい気分にすらなってしまった。
それなら、アメリカでひとりで暮らしていけるんじゃ……
そう感じたものの、会う度に日本に帰ったらこれを食べたいとか、ここに行きたいだとか嬉しそうに話す類は、すっかり日本に行く気になっていて、そんな彼に来て欲しくないなどとは言えなかった。
食事の席で幼い頃の昔話で盛り上がっていると、類は純粋に弟として姉との同居を楽しみにしているかのように錯覚してしまいそうになる。
何度類に会っても、未だに彼の真意や目的が読み取れない。
ーーそれよりも問題なのは、自分自身の気持ちだった。
たとえ類が、今は自分を姉として慕っているだけだとしても……美羽には、やはりどうしても割り切れない思いがあった。
一緒にいれば、どうしたって意識してしまう。あの、恋人として過ごした濃密な時間を思い出してしまうのだ。
甘い声が、伝わる吐息が、触れる指先が、向けられる視線が……肌をさざめかせ、細胞ひとつひとつがまるで眠りから醒めたかのように騒ぎ出す。
長年抑え込んでいた類への気持ちがとめどなく溢れ出てきそうで恐かった。
事実、レストランで食事をしている時も、隣に座っている義昭の存在などすっかり忘れ、気がつけば類ばかり見つめてしまっていた。懐かしい彼の声に、匂いに、自然と心が誘われる。その熱を辿りたくなる。
類の美しい黒曜石の瞳を見つめ、艶めかしい視線の先に自分がいることに気がつくと、それだけで躰が熱くなり、下半身が疼いた。
LAのホテルに滞在している間、義昭からはなんの誘いもなかった。ふたつ並んだベッドでそれぞれ思い思いに過ごし、眠くなったら自分のタイミングで眠りにつく。そのことを寂しく思う一方で、ホッとしている自分もいた。
いや、本当に寂しく思っていたわけではない。寂しく思わなければいけないと自分に言い聞かせていたのだ。
実際は、美羽の中で義昭とセックスすることに対しての嫌悪感、躰に触れて欲しくないという気持ちが、少しずつ高まっていた。
類に再会したことで、退屈なセックスに満足しようと欺いていた自分に嘘をつけなくなっている。あの快楽を、絶頂を再び味わいたいと、躰の深奥が訴えている。
ダメ……そんなこと考えちゃ。
もう、諦めたはずなのに……
美羽は枕に突っ伏し、滾る欲情を必死に抑えた。
こんな状態で義昭との夫婦関係を続けていけるのか、類が同居することになったらどうなってしまうのか、不安と恐怖で押し潰されそうだった。
類とは遺産相続のことでブラウン弁護士と共に毎日のように顔を合わせたが、あれから類の自宅に呼ばれることは一度もなく、毎回弁護士事務所で会っていた。義昭が類を観光に誘っても、まだ遺産整理が終わっていないからということで断られ、打ち合わせの後で夕食を共にしても、遅くまで引き止められるようなことはなかった。
これからぐいぐい類に迫られるのでは……と心配していた美羽は、すっかり肩透かしをくらい、寂しい気分にすらなってしまった。
それなら、アメリカでひとりで暮らしていけるんじゃ……
そう感じたものの、会う度に日本に帰ったらこれを食べたいとか、ここに行きたいだとか嬉しそうに話す類は、すっかり日本に行く気になっていて、そんな彼に来て欲しくないなどとは言えなかった。
食事の席で幼い頃の昔話で盛り上がっていると、類は純粋に弟として姉との同居を楽しみにしているかのように錯覚してしまいそうになる。
何度類に会っても、未だに彼の真意や目的が読み取れない。
ーーそれよりも問題なのは、自分自身の気持ちだった。
たとえ類が、今は自分を姉として慕っているだけだとしても……美羽には、やはりどうしても割り切れない思いがあった。
一緒にいれば、どうしたって意識してしまう。あの、恋人として過ごした濃密な時間を思い出してしまうのだ。
甘い声が、伝わる吐息が、触れる指先が、向けられる視線が……肌をさざめかせ、細胞ひとつひとつがまるで眠りから醒めたかのように騒ぎ出す。
長年抑え込んでいた類への気持ちがとめどなく溢れ出てきそうで恐かった。
事実、レストランで食事をしている時も、隣に座っている義昭の存在などすっかり忘れ、気がつけば類ばかり見つめてしまっていた。懐かしい彼の声に、匂いに、自然と心が誘われる。その熱を辿りたくなる。
類の美しい黒曜石の瞳を見つめ、艶めかしい視線の先に自分がいることに気がつくと、それだけで躰が熱くなり、下半身が疼いた。
LAのホテルに滞在している間、義昭からはなんの誘いもなかった。ふたつ並んだベッドでそれぞれ思い思いに過ごし、眠くなったら自分のタイミングで眠りにつく。そのことを寂しく思う一方で、ホッとしている自分もいた。
いや、本当に寂しく思っていたわけではない。寂しく思わなければいけないと自分に言い聞かせていたのだ。
実際は、美羽の中で義昭とセックスすることに対しての嫌悪感、躰に触れて欲しくないという気持ちが、少しずつ高まっていた。
類に再会したことで、退屈なセックスに満足しようと欺いていた自分に嘘をつけなくなっている。あの快楽を、絶頂を再び味わいたいと、躰の深奥が訴えている。
ダメ……そんなこと考えちゃ。
もう、諦めたはずなのに……
美羽は枕に突っ伏し、滾る欲情を必死に抑えた。
こんな状態で義昭との夫婦関係を続けていけるのか、類が同居することになったらどうなってしまうのか、不安と恐怖で押し潰されそうだった。
0
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる