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51.睨み合い
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やはりここは美羽を陥落させるしかない。宏典は懇願するように、俯いたままの美羽に声を掛けた。
「なぁ美羽……お前は分かっているだろう? いくら類が好きだと言っても、弟との恋愛なんて叶わない。先が見えないんだ。将来結婚することも、子供を持つことだってできないんだぞ? 世間から後ろ指さされながら一生を送るようなそんな人生を、お前に送ってほしくない。お前達の関係を知って、すごくショックだし、辛いんだ……
父さんの言うことが、理解出来るだろう?」
宏典は愛らしかった美羽の幼い姿が脳裏に過ぎり、瞳の奥が熱くなって鼻根をギュッと指で摘み、肩を大きく震わせて嗚咽を漏らした。
美羽を心から愛し、思ってくれていることがジンジンと伝わり、心臓が雑巾を絞るかのようにギュウッときつく締め付けられた。
縮こまった喉が熱く焼け付くのを感じながら美羽もまた嗚咽を漏らし、小さくコクリと頷いた。
理解できるかと尋ねられれば、理解は出来る。ずっと、ふたりの関係について罪悪感も抱いていたし、悩んでもいたのだから。
お父さん、お母さん……本当に、ごめんなさい……
両親に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだし、この先彼らとどう接していけばいいのかも分からないぐらいに不安で恐ろしい。重い十字架を背負わされたような気持ちになっていた。
愛しているのは類だけ。
でも、お父さんだってお母さんだって大事で、悲しませたくない。
宏典はようやく突破口を見つけ、大きく息を吐き出した。
「おまえたちはまだ若い。10代の頃にダイヤモンドだと信じていたものが、20代、30代になって、あれはただの石ころだったと気づくなんてよくあることだ。今はまだ、お前たちは本当の愛を知らないだけだ。この先、必ずそれぞれの運命の相手に出会う時が来る」
バンッと勢い良くテーブルが叩かれた。類の顔が真っ赤になり、声を荒げる。
「僕たちの思いを勝手に判断しないでよ! こんなに愛おしくて、大切な存在、他にいない。たとえこの先、何百人、何千人、何万人の女に出会ったって僕の気持ちは変わらない!
今までも、今も、これからも……僕が好きなのはミューだけだ」
「類……」
美羽は胸を熱くした。その言葉を恋人として嬉しく思いながらも、一方ではそれを聞いている両親に対しての罪悪感をどうしても拭いきれない。
宏典と類の睨み合いが続く。ピリピリと緊張した空気がこの場に張り詰めていく。華江からのプレッシャーを痛いほど感じ、宏典の額から汗がじわりと滲んだ。
否定しても、情に訴えても、類にはまったく届かない。
どうしたら、ふたりを引き離すことが出来る……
宏典は必死で頭を働かせた。ここで無理やり引き離したら、ふたりは家を出て駆け落ちしかねない。そうならないよう、穏便に別れさせなければならない。
皆の緊張が限界に達した頃、宏典は両手を組んで肘をテーブルにつき、類を真っ直ぐに見つめた。
「だったら、それを証明してみなさい」
「なぁ美羽……お前は分かっているだろう? いくら類が好きだと言っても、弟との恋愛なんて叶わない。先が見えないんだ。将来結婚することも、子供を持つことだってできないんだぞ? 世間から後ろ指さされながら一生を送るようなそんな人生を、お前に送ってほしくない。お前達の関係を知って、すごくショックだし、辛いんだ……
父さんの言うことが、理解出来るだろう?」
宏典は愛らしかった美羽の幼い姿が脳裏に過ぎり、瞳の奥が熱くなって鼻根をギュッと指で摘み、肩を大きく震わせて嗚咽を漏らした。
美羽を心から愛し、思ってくれていることがジンジンと伝わり、心臓が雑巾を絞るかのようにギュウッときつく締め付けられた。
縮こまった喉が熱く焼け付くのを感じながら美羽もまた嗚咽を漏らし、小さくコクリと頷いた。
理解できるかと尋ねられれば、理解は出来る。ずっと、ふたりの関係について罪悪感も抱いていたし、悩んでもいたのだから。
お父さん、お母さん……本当に、ごめんなさい……
両親に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだし、この先彼らとどう接していけばいいのかも分からないぐらいに不安で恐ろしい。重い十字架を背負わされたような気持ちになっていた。
愛しているのは類だけ。
でも、お父さんだってお母さんだって大事で、悲しませたくない。
宏典はようやく突破口を見つけ、大きく息を吐き出した。
「おまえたちはまだ若い。10代の頃にダイヤモンドだと信じていたものが、20代、30代になって、あれはただの石ころだったと気づくなんてよくあることだ。今はまだ、お前たちは本当の愛を知らないだけだ。この先、必ずそれぞれの運命の相手に出会う時が来る」
バンッと勢い良くテーブルが叩かれた。類の顔が真っ赤になり、声を荒げる。
「僕たちの思いを勝手に判断しないでよ! こんなに愛おしくて、大切な存在、他にいない。たとえこの先、何百人、何千人、何万人の女に出会ったって僕の気持ちは変わらない!
今までも、今も、これからも……僕が好きなのはミューだけだ」
「類……」
美羽は胸を熱くした。その言葉を恋人として嬉しく思いながらも、一方ではそれを聞いている両親に対しての罪悪感をどうしても拭いきれない。
宏典と類の睨み合いが続く。ピリピリと緊張した空気がこの場に張り詰めていく。華江からのプレッシャーを痛いほど感じ、宏典の額から汗がじわりと滲んだ。
否定しても、情に訴えても、類にはまったく届かない。
どうしたら、ふたりを引き離すことが出来る……
宏典は必死で頭を働かせた。ここで無理やり引き離したら、ふたりは家を出て駆け落ちしかねない。そうならないよう、穏便に別れさせなければならない。
皆の緊張が限界に達した頃、宏典は両手を組んで肘をテーブルにつき、類を真っ直ぐに見つめた。
「だったら、それを証明してみなさい」
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